第七十三話 お尻が辛くて寝れない。お尻の粘膜かなんかがヒリヒリしてムズムズして寝れない。
おそらく、イブちゃんとガルーラくん、アダカスとメサちゃん、ユナちゃん達にも色々あるのだろう。
しかし、あっという間に夕方の一八時であった。
それぞれの出来事は、それぞれ分けて書くことにする。
そして、エトセーラとギランミのお泊まり会は一体いつ書かれるのだろうか………。
――シャクティ家夕方。
シャキリくんは今日はあれ以来外に出ることはなかった。
世は暗黒の時代であるからだ。
お昼ご飯はファル君ママの用意してくれたパックのカレーを食べさせたシャキリくん。
ファル君も大変満足そうにして、夕方十七時からのテレビにくいついてた。お兄さんとお姉さんと、ママさんと一緒をシャキリと共に視聴し、現在ビッコワールドをお目目をキラキラさせて見つめていた。
「にいちゃん、これデータしたい!データ!」
ファル君は鼻息をフンフンしながら、小さなクリームパンのような手でリモコンを両手で握り、ソファに寝そべるシャキリの頬に押し付けていた。
シャキリくんは、自分の部屋でゲーム三昧の予定をぶっ潰され、スマホで行えるソシャゲで自分の欲求に対してお茶を濁していた。
「データ?データボタンを押すんだよ。」
「………?」
シャキリは大人げなくファル君をあしらおうとしたが、ファル君がリモコンを頬に押し付ける力を強くしたので、仕方なくデータボタンを押した。
それに合わせて、テレビにミニゲームの画面が表示され、ファル君は大喜びした。
「一緒にやろ!!」
「やらないよ。アイドルバスターをやるから。」
「女の子ばっかりじゃーーん!!」
シャキリの横持ちスマホを横から眺めて叫ぶファル君。
世間が夕飯を作るお母さん、このファル君のようにデータミニゲームで遊ぶおチビで別れる頃。
中学生は塾への準備をして、高校生は部活から帰ったり、近くのショッピングモールで遊んでいる頃。
ヤ○○○大学生が女の子をナンパして、ラブ○○○で、○○○をする頃。
シャクティ家の台所は洗い物が溜まり、料理を始める人間もいない。
全てシャキリのやるこではなく、もうじき帰ってくるギランミの仕事であるからだ。
シャキリはくずである。
「お、女の子ばっかりでわるいか!なにがわるいか!女の子がいるから、僕たちが生まれてるんだぞ!!」
シャキリくんはソファから体を起こし、リモコンを持ってテレビに釘付けのファル君の背中に叫んだ。
「………?なにそれ。」
五歳時に適当に扱われ、データ放送のミニゲームに敗北する二十二歳。
――十分後。
「お腹へったよー!にいちゃん!!」
ファル君はもうデータ放送に飽きていた。
ソシャゲが普及し、旧世紀に爆発的に流行して流行りが廃り。一周して再び流行り出した今日この頃。
五歳児の目でさえ肥えていた。
データ放送のゲームは所詮、ドット絵の横スクロール低品質ゲームと見抜かれてしまっていた。
「僕に言われたってなぁ。」
カスは困ったようにして、時計を眺めた。
十八時二十一分。ギランミはそろそろ帰ってくるだろう。
シャキリくんは、アイドルバスターで育成をしているため、ご飯のレンチンすら許されない……億劫であった。
ファル君はソファに寝そべるシャキリの上へ、トト○に乗っかるメ○の要領で乗り掛かった。
「ぐっ………!」
シャキリはお腹にグッと圧力がかかるが、両手で持つスマホ越しのファル君のモチモチ顔を見て、可愛いのでなんとか踏ん張った。
「にいちゃん!女の子ゲームやめて遊んで!遊んで!おにごっこしよ!公園いこ!」
ファルくんはお腹の上で駄々をこね始め、シャキリは胃を押し潰されて流石に苦しくなった。
釣り上げられた魚のように、苦しさからビチビチと跳ねるシャキリ。
「ファルくん、今外出たら、真っ暗だから鬼でるよ!」
「スン………」
その時、リビングの向こうの廊下。その廊下を伝って玄関が開く音がした。
「ただいま―――!」
ギランミが帰ってきたのである。
「ねえちゃん、けーってきたかー!」
シャキリくんは、ソファから上体を起こして、ファル君の両脇を両腕で抱え込む。自分の胸へファル君のモチモチほっぺを押し付けて、朝から直していない寝癖ボーボーの目やにやら鼻毛やらもまたボーボーにして、リビングの扉が開くのを待った。
「にいちゃん、なんか情けない。」
ファルくんはなんだかんだシャキリに懐いていた。
「シャキリただいまー!おっ!ファル君いるな!」
ギランミは快活に笑い、リビングの扉を蹴破る勢いで部屋に侵入した。彼女の声量と同様に呼吸と笑い声も巨大であった。この変に巨大なテンションは、全て慣れない家でお泊まりをするファルくんを不安にさせないためのものであった。
暫くして、ギランミに続くか細い呼吸と上質な声があった。
シャキリはお化けが出たと勘違いをして、肝と鼻毛を冷やした。ファル君は抱っこされてウトウトである。
「お邪魔します―。」
ギランミに誘われてエトセーラがお泊まりに来ていたのだ。リビングの若干黄ばんだ照明の中で、月を一本一本丁寧に割いたような、一際目立つ純白の髪色が揺れて、それに似合う控えめな声と端正な顔が、ソファに寝そべるきったないニートを捉えた。
「あっ!はっ!お、おきゃくさん!?ぬおっ!ふ、ファル君僕からどいてくれ!鼻毛を切らなければ!ふぬっ!ほっぺがもちもちだ!このままじゃ、ぼくの痴態が外の人間に見られてしまうよ!トリプルシンボルだ!ライフで受ける!!」
シャキリ君は、突然の来客を受けてファル君を抱き抱えたままモジモジし始めた。ファル君は相変わらずウトウトしていて、彼の体にがっちりとしがみついていた。
なんだかんだ、シャキリのうっすい貧弱を体現した肉体がお気に入りとなったらしい。
「弟さん、初めまして。エトセーラ・セトセーラです。
お姉さんの妻です。」
「つ、てゅまっ!」
シャキリくんは突然告白により、濁声オタク滑舌で驚いた。
「シャキリでふ!姉ちゃんとは結婚します!近親相姦でもかまいやしねぇよ!!」
かまえよ。シャキリは突然自己紹介でブチギレ始め、エトセーラはこの人頭おかしいんだと肩を揺らし、震えながらギランミの背中に隠れた。
しかし、シャキリの胸に抱きついて寝るファルくんの姿を見て、癒されたのか、エトセーラは張り詰めた表情を崩して、フニャフニャニヤニヤしながら、そのチビを眺めていた。
「こども……こどもかわいい。」
エトセーラはファルくんのほっぺを両手でモチモチして、自身のほっぺに擦り合わせて、丹念に味わい尽くしたかったが、ギランミの怖い弟が障壁として立ちはだかるので、それは不可能と判断した。
ギランミは二人を交互に見て、シャキリの側へ寄り、ファルくんの頭を軽く一撫でしてから、スーツのまま手洗いと皿洗いを始めた。
エトセーラは洗面台へ向かい、手洗いうがいを二十分行っていた。彼女ルーティンであるらしく、ギランミも特段それに言及することはなかった。
シャキリは、家計のことなどお構いなしであったのに、こういう時は自宅警備隊のプライドが燃えるのか、水道代やらなにやらを想像し始め、胸に抱きつくファルくんを包み込むように抱き、頭をクンクンして気持ちを落ち着けた。
ギランミは台所で夕飯の準備を始め、洗面台から戻ったエトセーラはもう一度シャキリを見つめ、なんとか知り合い程度には仲を深めておきたいので、ニヘッと微笑みかけた。シャキリも返事のにちゃ微笑を返し、ファルくんを挟んで気持ち悪い空間が作り上げられている。
エトセーラはニヘッ笑いのまま、シャキリの寝そべるソファの元へ歩み寄った。肩掛けのスマートな鞄を、カウボーイのように振り回し、天井に何回かぶつけて、ギランミに怒鳴られ、しかし気にせず、試しに彼の縄張りへ投げ入れる。
シャキリの側の床に、突如黒い高級鞄が投げ捨てられ、スマートフォンやら化粧品やらが色々露出した。
「あ、あ!あんまり見ないで!!」
エトちゃん大焦り。
なら投げるなよ。
「ニチャッ!大丈夫にちゃ!化粧品の使用感とか、どれだけ使われてるとか、ブランドとか、値段を調べて、あぁこれは普段使いで勝負のものではないんだなとか、わかっても口には出さないニチャ!」
はなげはファル君を抱きながら、サムズアップした。
ニチャ笑いに合わせて、彼の鼻の穴は僅かに動き、さらに鼻毛がたくさん露出した。
そう、エトセーラの鞄から溢れるスマホ達のように。
「ニヘッ!全然わかってるじゃん!しかも全部言ってるじゃん!ふざけんなニヘッ!そこを見んなって言ってんだよニヘッ!潰すぞニヘッ!」
語尾がクソのゆるキャラみたいなものなら、何を言ってもいいわけではない。
二人の仲は、犬猿であった。犬犬でもいいし、犬猫でもいいし、仲悪い言葉ならとにかくなんでもよかった。
「友達になりませんかニヘッ!」
なれるか。
エトセーラが切り出したことである。
彼女はエルガー学園の学生時代、生徒会長であったが、彼女のプライドが全てを邪魔して友人はいなかった。
だから、人との距離感がわからないのである。
ただ、ヤンキーで授業サボりまくりのヴィーナちゃんとは、注意を時折していて、仲良く話すようになった。
この辺は後々番外編を出す。
あの、ギランミとエトセーラのお泊まり会って………
黙れよ!!!!!!今、けつがいてぇんだ!!七味を入れすぎてな!!便座で校門広げて、この話書いてんだ!キチゲ発散したいから!!!!
『便座で3分以上座っていると、体に悪いらしいのでみなさんやめましょうニヘッ!』
エトセーラである。
けつのゆるキャラを狙っているのだろうか。こいつは。
勝手になれ。
『いやいや、僕なんて50分毎日座っんだから平気ニチャ!人間は潔癖すぎるニチャ!原始時代なんて、槍がけつに食い込んでんだからさ!』
シャキリである。
けつのゆるキャラ総選挙を勝手に開催するな。
ステレオ原始時代もやめろ。
あと、けつゆるキャラなんて、いくらいてもどうでも良いから、二人でなれば良い。
「ワオ!ジャポニーズサムライ!シュリケン!!ニンポウw!!!」
英国人ルーツのクソカス鼻毛による、ステレオいじりが始まった。
「くっふwwwwwwwワオ!バットウ!ワターシ、ジャポンスキ!!オニギーリスキ!ジャポンジン、マイニチスシタベル!!ベイ○レードカイシメマース!!」
エトセーラである。
人型オーディオが、ジャポニーズステレオ合唱をしていた。
もう友達で良いだろ。
「うわーーーん!うるさーーーーい!!」
ファル君が目を覚まし、ガニ股で騒ぐエトセーラお姉さんと、鼻毛そのままにソファでファル君を抱いて暴れるカスを見て、大絶叫した。
ファル君は、夕方には必ず遅めのお昼寝をして、目が覚めると悲しくなって爆泣きする、チビ特有のアレがあるのだ。それとエトセーラ達のおふざけが重なり、ファル君の泣き声はギランミ含めた三人をギョッとさせた。
「おとなしく座ってろ!お前らは!!」
ギランミがめちゃくちゃ怒鳴って、ファル君さらに号泣。
「僕は元から座ってます〜!おほほほほ!学生ニートだから、一週間外出てねぇ!!最高だねぇ?ファル君!」
シャキリはギランミにげんこつされた。
後で、外に散歩に行けと付け足されて。
エトセーラも大人しく鞄を手に取り、床に座り、散漫したスマホやらをしまって、ソファに腰を預けた。
エトセーラは、チラチラとシャキリの胸に顔を押し付けて、彼のシャツをシワシワにするファル君の背中をチラチラと見つめていた。
「ほっぺツンツンしたら、泣いちゃうかな……」
エトセーラはシャキリ君に聞いた。
現在進行形で泣いている。
「あー。エトセーラさん綺麗だから大丈夫じゃないですか?」
シャキリがインスタグラムに無理矢理子供を映えさせて写真を撮る親の感覚で呟く。
エトセーラが、シャキリの肩越しに小さくヨチヨチ呟きながら、ファルに近づくと、ファルはさらに爆泣きをして、キッチンのギランミには睨まれた。
「ズーーーーーン。」
エトセーラは仕方なくテレビをつけ、ニュースエブリタイムブリブリタイムの食堂特集を無心で見てめた。
おい!?ちょっと待て!この、ニュースエブリタイムブリブリタイムというのは、1時間経ってもまだ腹が痛くて、寝れずにトイレに駆け込む、この地の文を揶揄してるのか!?そういうことか!?
「食堂特集と言ったでしょッ!品性のない話はしないでッ!」
品性の欠片も見せたことのない、エトセーラに叱られた。
ーー『お次はお天気です。ホラジロー。』ーー
ーー『はーーい!明日の天気は、局所的に晴れ。なんと晴れなんですね。お気をつけください。全国的には竜巻です!気温は地球は温暖化が加速に加速を重ね、800度!学園都市やその他の階層都市の皆様は、調整次第で12度から25度の予想です。』ーー
ホラジローがホラを吹き、エトセーラはそれを無心で見つめていた。シャキリは未だ泣き叫ぶファル君を抱っこして、ホラジローいるよー!など、テレビを見せていた。
ファル君は顔を真っ赤にして、爆泣き継続中である。
シャキリは、そんな中でもジッとエトセーラを見つめていた。彼女の絵画のように整った横顔が、ジッとテレビを見つめている。どこか物悲しげで、現代風に言うのなら亡国顔である。
『亡国のアキ○は、話自体はそこまでなんだけど、妙にキャラに愛着が湧くんだよな!みんな死なないでくれー!となるけど、いざ誰も死なないとなると微妙。』
シャキリである。
亡国という言葉に反応したらしい。オタクが。
時刻はそのままどんどんと過ぎて、十九時。
再びファル君はスヤスヤと眠っていた。
「はいご飯!」
料理を終えたギランミが叫び、エトセーラがお皿やらを出すのを手伝い、シャキリはファル君を下ろそうにも、ガッチリホールドされて不可能なので、そのままソファから降りて、ローテーブルへ向き合った。
「エビチリとスパサラ!」
ジャン○の実家飯のメニューであった。
ご飯の匂いに釣られ、ファル君も目を覚ます。
「わーーー!おなかへったよー!」
ファル君は寝起き三秒でご飯を前にして、目をキラキラ光らせた。
「ファル君はママさんが用意したこっちね。」
ギランミがパックに分けられたファルのためのご飯をレンチンし始める。
「やっ!絶対やっ!」
ファル君は目の前のホカホカご飯を食べると決めたので、駄々を捏ね始めた。
エトセーラはお茶を出し、人数分のコップを用意し、箸を用意している。
ギランミはレンチンの間、シャキリの前に座り、スーツから着替えた、あのぴちぴちニットみたいな冬服で、ニコニコとファルを見つめていた。
ファル君は怯え、シャキリの貧相な枝に縋りついた。
かくいうシャキリは、アリ予備ゼミの大食い対決に夢中である。
「ファル君、抱っこしてあげよっか。」
ギランミである。
ギランミの胸のギランミは大変大きかった。
ファル君はそれが嫌であった。
気を遣うからである。
「いや、僕はにいちゃんのこの、貧相なあばら屋で結構です。」
ファル君は流暢に喋り出した。
もう気を遣っていた。
「遠慮しなくていいから!」
ギランミはシャキリからファル君を引き剥がし、シャキリはファル君の指が肋に食い込んで痛がっていた。
ギランミはそんなこと気にせず、ファル君を膝に乗せる。
ファル君は観念した。しかし、胸と胸。そしてファル君の顔。
どこを見ても、山。山あり谷あり、そしてまた山あり。
「う、うーーん。うーん?うーーん………」
手の置き所も、頭の置き所も全て迷うファル君。
シャキリであるなら、平面に全て叩きつけて不便さを夜行バスマニアのように嗜むのみであるのに。
ギランミはフカフカ高級個室寝台列車であった。
どけ!ファル君!わからないのなら、手本を見せてやる!!地の文はトイレの中から大声を上げた。
深夜の2時30分。
お尻は未だに、めちゃくちゃヒリヒリしていた。
―――続く。




