第六十八話 やられ千葉ァ!
プライト→ブライト
ぶをぷにして、誤字を装って著作権侵害を押すんだよ!
む、無茶言わないで!!
『なんでこんな馬鹿を、ちょっと好きになってんだ!』
ユナちゃんは、体育座りしながら悶々としていた。
肩パッドの崩壊したアダムは、その肩の凸凹を摩りながら、遠い目をして青空を眺めていた。
河原のくせに、一番下に川がないので、青空が川の代わりであった。
ユナちゃんは第六話から始まった、シャキリ一筋の歴史が、第二十一話による、アダムへの徹底拒絶による、先輩キャラとしてのポジションの確立など、様々なメタ的要素を考慮して、咀嚼していた。
『こいつを好きになってしまっては、私のアイデンティティが失われる!!そもそも、こんなカス男のばかは、もう一回その泥で汚れたきったない顔見れば、蛙化するでしょ!!』
自分の隣で体育座りをして、重ねた腕に口を埋めて、ぼんやりと空を眺めるアダムを見た。
初期設定では、一部赤みがかったとされていた茶髪。
もう赤くはない。ただの茶髪が風に靡いていた。
一度は丸刈りにされ、番外編でロシア文学みたいなヘラり方をしたアダムであるが、秋ごろのことだったので、すっかり再生していた。
以外とすっきりしてる鼻筋。鼻毛は出てるのだが、丁度袖に顔を埋めていたので隠れていた。
くっきりした眉毛、剃ったことないので、ゲジ眉一歩手前の濃いやつ。
卑屈さを満々に醸し出す目つき。
設定忘れたので赤い瞳。
泥に塗れた頬。耳掃除をしてないので垢だらけの耳穴。
青空を背景に、その横顔が三日月のようにくっきり浮かんでいた。
ユナちゃんは草むらに倒れ込んだ。
アダムくんへ背を向けて倒れ込んだのだ。
『だ……だめだ。胸がキュンキュンしちゃう。16年に及ぶ、シャキリ一筋の歴史が………』
ユナちゃんは顔が真っ赤になり、胸のバクバクを抑えるために両手を胸の中央に当てた。
このギャグ作品を書き始めて、こんなキャラになるとは思っていなかった。
「ユナさん………」
「は………はい////////」
アダムくんはユナちゃんの背中を見つめていた。
メサちゃんがいるから、仮にさっきのがそういうことであっても、なんとか断らなければならなかった。
「さっきのは、さぬきのはこくふぁくということでよろふぃーか?」
アダムであった。
日本語喋れ。
「あ、あはは!!あのね!全然なんのことかわかんない!!」
ユナちゃんの顔真っ赤パラメータは限界に達していた。
どいつもこいつも告白ですか?と聞けば適当に誤魔化して退却するので、進展なしである。
若さはそんなに待ってくはくれないのである。
「あ、わかんないか!ははは!!」
「あのね!ハンカウイッチつくってきたの!ごはんたべてないでしょ!あだむくん!はいたべて!!」
顔真っ赤のユナちゃんは突然起き上がり、さっきの鼻噛んだハンカチをあろうことか、食用としてアダムに差し出し始めた。
「あ、鼻水ってチーズみたいなかんじ!?チーズもクセあるし、ブルーチーズなんて、ほぼマレニ○の腐敗みたいだし!?くさった部分を楽しむようなものだしな!鼻水もいけっか!」
「うんうんうん!いけるいける!」
アダムくんも大混乱していた。
ユナちゃんは顔を真っ赤にしたまま、ブンブンと頷いていた。
「じゃあいただきまーーす!」
アダムはハンカチではなく、なぜかユナちゃんのスーツの裾を食べ始めた。
「どうおいしい!!!?」
「なんか、トイレットペーパーみてぇだな!」
ボグゥッ!!!!!!
再び横たわったアダムくんを見て、ユナちゃんは湿った裾を見つめた。
アダムの唾液がついているのである。
もうこの服は廃棄されるだろう。
『ハンカウイッチで拭えば、実質鼻水と唾液で間接キスか………………』
そんなわけないだろ。
ユナちゃんの暴論で、唾液は鼻水つきハンカウイッチで拭われた。
再び起き上がったアダム。
その顔をじっと見つめるのはユナちゃん。
胸の高鳴りに合わせて、右腕の指先がゾクゾクと疼く感覚があった。
暴力欲故なのか、恋故なのか。
アダムがこちらを向いた時に、両手で頬をギュッと挟み込み、自分に正対させた。
瞳を連続シャッターのようにパチパチさせるアダム。
顔がトマトのユナ。
正面から見つめ合う二人。
ユナちゃんは顔は再び沸騰した。
この程度のカス後輩だった男を、まさか好きだと思う自分の脆弱性を、点検したい思いがあったのだ。
そして点検の末、仮にである。
仮に彼への好意と恋心が異常なしの純度であるのなら、その恋心をわざとぶっ壊して、異常アリにでっち上げなければならなかった。
やってることがビックモー○ーなのだ。
『一分間顔を赤くしなければ勝ち!一分間……いや30秒顔を赤くしなければ勝ち!!』
じゃあ開幕から赤いので負けである。
胸の鼓動はさらに早まり、セメント工事で使われるバイブレーションマシーンのように、鼓動に逐一杭が打たれた。
前方のアダムの頬はユナの手によって中心に寄せられ、タコみたいになっていた。無論鼻毛は出ていた。
ただユナちゃんは気にしないらしい。
目やにもついていた。不可抗力として片付けるらしい。
じゃあもう結婚しなさい。
『私にはもっと、もっと顔も良さげでお金持ちで、清潔感があって、ちょっと陰キャっぽい人を好きになるはず!――こんなやつは眼中にないのよ!そうよ!私はアイドルよ!』
アダムの顔はどんどんと圧縮されていった。
このままでは死ぬだろう。
『陰キャが当てはまっている!!』
ユナちゃんはさらに顔が赤くなった。
陰キャ以外は当てはまっていない。
顔の暑さは臨界であり、学園都市温暖化に貢献した。
ユナちゃんは、あろうことかアダム君の両頬に当てていた手を、首の後ろに回した。
キスかハグをする人間の体勢。
ヘッドロックであった。
彼女はそのまま、アダムくんのおでこに、自分のおでこを前髪ごと重ねて押し付けたのであった。
21/22シーズンか、20/21シーズンのどちらかで行われたミラノダービーで、我らがズラ○ンとルカ○がおでこによる鍔迫り合いで喧嘩をした時の体勢ように。
ルカ○は、なぜか顎同士を重ねようとして、一瞬ズラタ○のおでこにキスして、すぐにおでこを重ねていたように。
我らがズラタ○の自伝では、あの場面でルカ○はマンU時代は俺にびびってた癖に、イタリアに行ってから図に乗ってるから、わからせる必要があったと記述していた。
発言がサッカー選手でなく、ギャングである。
でっち上げ河原で密着する二人。
アダムの反応はどんなものなのだろうか。
「はぁ……わぁっ!ち、ちかい!」
a○のひ弱男優かよ。
「ユナさん……す、すきなんですか…………ぼくのこと!」
アダムくんの心臓もドキドキバクバクボックボックであった。
「今にわかる。」
ユナちゃんであった。殺し合いでも始めるつもりなのだろうか。mmaの試合前インタビューで、相手の煽りをクールに交わす選手のようであった。
ユナちゃんの瞳は震えていなかった。
ただ、猛禽類のような閃光の瞳でアダムを見据えていた。
二人の唇は近づく。冬の朝九時二十分。
二人の赤く、その部分だけピンポイントで冷えてる鼻頭が重なり合った。
息が混じり合うのではなく、もちろん息も混じり合い始めてたのだが、肝心なことは、鼻息が混ざることでアダムの飛び出た鼻毛が揺れていたことであろう。
極寒の冬に降ろされ忘れた鯉のぼりのように、北風とユナちゃんのアイドルの吐息で揺らされていた。
ファンがこの様を見たならスキャンダルで、文○が見たのなら翌日ハイメガキャノンで、事務所に電話殺到だが、この無駄に作り込まれた河原は、幸い私有地である。
『あとは奴の唇を貪るだけだ!』
ユナちゃんの瞳は血走り始めていた。
そう、千葉Siri初めていた。
千葉Siriはじめていたって、スマホでこの話今書いてて変換に出てきたのだが、変換ポンコツすぎないたろうか。
『かっこいい女の子がドジやるから、可愛い……ホニャララ』
これは、ルール○のセリフである。
『おい!みんな!俺はまだ外に居るんだぜ?置いてきぼりにするつもりじゃないだろうな?ん?なんだ今のは?攻撃を受けたのか?...ちょっと待て!何か赤い光が...!うわぁぁぁぁ!ホワイトベー○!カ○!ガンダ○!
やられ千葉ァ!!!』
これは、別世界線のリュウ。
あの場面で面白いのは、やられ千葉ぁ!ももちろん、その前の被弾のSEが、近所のボランティアの空き缶潰しのような音なことももちろんなのだが。
なぜかリュウ死亡時に号泣していたブライ○が、あのゲームだとめちゃくちゃ他人事のようにやられ千葉を眺めていることである。
アダムくんは、ユナちゃんの唇が近づいてくる最中、突如メサちゃんとのデートの記憶や、さらに遡って、中学生時代一緒に登校したことなど、色々思い出してしまった。
そして、これらを思い返すと、やはりユナちゃんの唇を受け止めたいが、それはできないのだった。
「ミス・ユナちゃん。ぼくたち……………」
「ゲホン!ゴホン!ゴホッ!ゴッ!ゴホッ!ごヘェっ!
…………ヒー、ヒー。こ、こんなところでサボってる人達は、流石にいないよなー?しかも、元とはいえ、嫁を差し置いて他の女の子とイチャイチャする、不届きものはいないよな―――!」
河原の坂のてっぺんで、わざとらしく周囲をキョロキョロ見回すエトセーラの姿があった。
「休みの最後の日、ソワソワするんです!明日会社に行けるぞっ!!!………て。」
嘘つけ。
わざとらしくそう叫ぶのは、アダムであった。目の前のユナを半ば弾くようにして立ち上がり、坂を登ってエトセーラの傍を駆け抜けていった。
ユナちゃんは一人取り残され、ハンカチをしまい、自分のスーツに纏わりつく草を払っていた。
アダムといる時には、こんな草は気にも留めなかった。
「ばか………………」
ユナちゃんは一人呟き、再び体育座りをした。
後ろでエトセーラは、アダムが行ってしまったので、ユナちゃんに仕事を教えねばと思い、彼女が立ち上がるのを待った。
いつまで待っても、ユナちゃんは黄昏れていて、立ち上がらないので、くしゃみをぶちかまし、体を摩りながらエトセーラは眼下の乙女を見つめていた。




