第五十二話 しりません。
「……………。」
「………………。」
「//////////////////」
「///////////////////」
テレテレしちゃって!である。
スクリーンから退出した、アダムとメサイアは、二人とも顔を真っ赤にしながら、その改札みたいな、チケットを切られるところを出た。
再びポップコーンの匂いが二人を包むが、アダムは、メサちゃんの、おそらく唇を感じた頬を、何度も撫でていた。
「恥ずかしいから……あんま撫でないで。」
メサイアは、汗をピヨッピヨッさせながら、顔を赤くして呟いた。
あ、そういう感じなんだねと、地の文は書きながら思ったものだ。
『これは、もう付き合っているのでしょうか。』
アダムの内心であった。
認めたくはなかった。うちの可愛いメサイアちゃんを、この男に差し出すことは。しかし、アダムくんもアダムくんで、地の文の可愛い子供であったので、アダムくんも差し出したくなかった。
「さっきのは、チューでしょうか。」
アダムであった。普段は鈍感な癖に、こういう場面では直球でいくのが、主人公の座に手をかけながら、ファイト一発してる所以だろう。
「…………………ちがいます。」
メサイアの返事はちがいますであった。
メサイアが違うというので、違うのだろう。
「!?!???!!?!??!じ、じゃあなんですか。」
アダムくんは、心臓がバスバスであった。
殴られる、サンドバッグのようなオノマトペである。
この、焦ったい感じ、アダムくんは先の映画を思い出して、ドキドキしてくるのだ。
いや、ハマってるじゃん。
「……わかりません。」
メサちゃんの声は、とても震えていて、恥ずかしさが臨界しているのが、アダムにも分かった。
ここが、押す場面だと、アダムは思う。
先程まで、ユナに欲情していた男であるが、据え膳精神であるらしい。うちで、全愛情を注いで育てたメサイアを、据え膳扱いであるのだから、こいつはかすである。
「メサちゃんは、僕が好きなんでしょうか。」
時刻は15時12分。大勢の人がアダムとメサイアに向かって行ったり、逆に背中から追い越すようにして、映画館を出入りして行く。
アダムとメサイアは、映画館の自動ドアの先で、外のひんやりとした空気で肺を洗浄しながら、ポツリと立っていた。アダムくんの心臓は、破裂寸前であり、メサちゃんも顔を茹でタコにして、心臓の音が、外音の全てを塗り潰していた。
「………知りません。」
メサちゃんが言った。
「これは、お突きあい……あ、間違えた。お付き合いしているのでしょうか……。」
グイグイ行くのは良いことだが、アダムくんは、最低な言い間違いをして、瞬間で修正する。下心を充満させる男というのは、往々にして、頭に思ってることを、無意識に口に出してしまうのだ。
しかも「あ、間違えた」と言わなければ、バレない場面であった。
「…………。は………あ、間違えた。知りません。」
なぜ、間違えの修正をいちいち口に出すのだろうか、このポンコツ共は。
メサちゃんの返答は、さながら精度がカスのア○ネーターであった。
「知れる方法は、一体どうやったら知れるのでしょうか」
カスの英語翻訳のような文体であるが、中々良いクロスを入れるアダムくんである。
あとは、ヘディングで決めるだけである。メサちゃん。
「…………男の人が、言うことがありますから、知りません。」
メサちゃんのお返事であった。まさかの、クロスから入ったボールを競り合いながら、メサちゃんがヘディングで流し込むのかと思えば、突如、背後から抜け出してきたトップ下の選手に向けて、ボールを落とすメサイアであった。
何を言ってるんだろうか、本当に。
サッカーの話は、f○26の出来が最悪であったので、喋るのはやめて欲しかった。来年はおそらく買わない。
あとは、ゴール前でワンバウンドしたこのボールを、慎重に、小さなモーションで、ダイレクトで叩き込めば良いだけである。アダムくん。
「…………す、す、す…………」
ピロン!!突如、アダムのスマートフォンに、バナナトークの通知が鳴り響いた。
「やべ、門限か!?」
まだ、昼の3時であるのだが。
画面を開くと、ユナちゃんからの初メッセージであった。
『私に、色々任せてよ!!』
ユナちゃんからのメッセージは、これだけで、自身のデフォルメスタンプで、サムズアップスタンプも、共に送信されていた。
「え!え!?え!?う、浮気!?浮気、これ!これ、うわき!?」
突如、メサイアは狂ったように叫びは始める。
まさかの、ゼクシィ編達を飛び越え、7年後に予定されていた、山に男3人連れて浮気放題フェスティバル編開始のゴングであった。
「ちょっと、待って!呼吸して!浮気って、まだ僕達付き合ってないんだよね!!」
二人は、またイチャイチャし始める。そして、アダムくんは何を思ったのか、ユナちゃんも両捕りできるとでも、思ったのだろうか。カス発言をし始める。
「ほっぺにちゅーしたんだぞ!!!!!!!!!!!!」
メサちゃんのクソデカ声であった。税金で旅行に行ったのがバレて、問い詰められた議員のような問答しかしていなかったメサイアは、突如覚醒を始める。
「これが、若さか。いいな。」
「あぁ、いいな。」
突如、地の文の言いたいことを代行する、新訳っぽい
サングラスノースリーブと、聖人艦長が現れた。
帰ってください、著作権が心配なのだ。
「さっきのは、チューなんですね!!」
「はい!!!!!!!」
「じゃあ、僕達付き合ってるんですね!!」
「しりません。」
メサちゃんは、引かなかった。なんとしても、アダムの口から言わせなければ、満足出来ないらしい。
なぜなら、アダムはこの通り、若干浮気癖が見え隠れしている。血判など、血を紙に置いたもの、なんの証明になりましょう、なのだ。だから、アダムの方から、○○させて、言質を取り、メサちゃん幸せルート開拓なのだ。
「じゃあ、じゃあ!ユナちゃんと連絡する!現役アイドルと、連絡する!」
言い方きも。
「あっ!あっ!あっ!あっ!」
メサちゃんは、叫びながらアダムの両腕を揺らす。
なんなのだろうか、これは。
「揺らすのやめて!」
アダムは叫びながら、キーボードをタップする。
メサちゃんも全力で、アダムに抱きつき、文字入力の邪魔をした。指がスライドし、キーボードのさを上にスライドして、『す』が出た時、予測変換に『スケベしようや』という、カスの文章が入力される。
なぜ、このようなパ○活おじさんでも使わない言葉が、変換に出るのか。メサちゃんは、動きを止めて、めちゃくちゃジト目でそれを見つめた。
アダムくんの抵抗も、同時に止まった。
突如、尋問が始まる
「あ、あの。これは人に送ったものではありません。」
「じゃあ、なんなの。これ。」
お下劣セクハラカス精度のア○ネーター堕ちしたのは、アダムであった。メサイアの形成逆転である。
「何に送ったの、スケベしようやなんて。」
「…………………ブツブツブツブツ」
「ブツブツ言ってても、何もわからないから。はっきり喋ってよ。」
アダムは、自分の腕にほっぺを押し付けて、問い詰め続けるメサイアを見下ろして、滝のような汗を流し、服に取り付いていたノミが、その汗で滝修行を始めた頃。
「美少女アニメチャットゲームで送りました。」
「はい、浮気ポイント2。」
浮気ポイント2ということは、ギロチンである。
「試しに送ってみてよ。ほら、スケベしようやって、ユナさんに。送りたかったんでしょ?だから、予測変化に、こんなの出るんだよね。」
「いえ、メサちゃんに送りたいです。」
「今更、そんなの無理だから。誤魔化さなくて良いから、送りなって。スケベしようやって、現役アイドルに。」
メサちゃんの問い詰め方は、とても怖い。鬼嫁である。
「メサちゃん、好きです。付き合ってください。」
アダムくん、最後の賭けに出て、いとも容易く、そして気安く告白を行った。ショットガンのような、下○のような告白であった。例えが汚いし、多重比喩で最早何を比喩したいのかも、わからなかった。
メサちゃんは、それを受けて、一瞬頬をポッと赤くした。アダムくんは、いけるかと思ったが、メサちゃんは再び瞳からハイライトを消し、スンとする。
そして、再び頬がぽっと赤くなり、アダムは再びきたか!と叫んだ。しかし、2秒後には再びスンである。
「はいはい、大丈夫だから、こっちおいで。」
アダムくんは、ねこかわんこを宥めるように、メサイアを自分の体に抱き寄せた。
さっきから、アホみたいなことを入り口でしているせいで、注目を浴びるし、自動ドアが何度も開閉していた。
メサちゃんは、アダムくんの制服のタイに自分のほっぺがぎゅっされる。アダムは、メサちゃんの前髪から後ろの、髪の毛といい匂いを感じられて、二人とも満たされた。
しかし、メサちゃんは諦めない。
瞬間でアダムのスマホをスライドし、スケベしようやをユナに送りつけた。
「あちょ!あちょ!!」
アダムは叫びながら、送信取り消しを押し込む。
しかし、すでに既読がつけられていた。
――次の瞬間、ユナのトーク画面はエラーが起き、バナナトークを再起動すると、ユナが送ったメッセージとスタンプが残されて、「ユーザーが存在しません」と言う表記と、アイコンが初期アイコンになっていた。
3秒の出来事であったが、アダムはブロックされた。
「ブロックはえ。ブロックはえぇわ。ブロックはえ。」
アダムくんは、ショックで壊れたマシーンのように反芻する。
メサちゃんは、ムフーと、白い息を吐きながらアダムの腰に抱きついていた。
アダムくんは、大事なものを失った喪失感と、体に抱きつく爆美女の匂いに包まれて、なんかどうでも良くなってくる。
爆美女って言い方、きも。
「僕達、付き合ったってことでよろしいのでしょうか。」
アダムは、最早無敵の人であった。
「しりません。」
メサちゃんは、会見で追い詰められた議員であった。
――続く




