第五十話 ほくほくエトセーラとギランミ
誤字:「こんにちは!」
ガキロイヤリティ:「誤字が喋ってる!!帰れ!」
エトセーラとギランミを最前としたスクリーンは、照明が輝き、ギランミの重たい瞼を開く光量であった。
鼻提灯がパチンと割れて、目が3となっているギランミ。
「あ……なに。終わり?」
「グスンッ!ズビッ!!」
ギランミの横のエトセーラは、相変わらず爆泣きであった。
「エトセーラ?なんか嫌なことあったの……?」
ギランミは、3の瞳を横に座るエトセーラへ向ける。
「な、なんか……グスン。汗が止まらないなー。」
中学生が教師に叱られた時に、涙目を隠す手段であった。
「目が、目が乾きますねー。映画館って、うぅ……!!」
エトセーラは、再び嗚咽の波がやってきて、めちゃくちゃハンカチで目元を拭っている。
「いや、めちゃくちゃ感動してるでしょ、それ。」
ギランミは、ボヤける3の目から、ようやく通常の目と視力に戻り、エトセーラを見つめる。なんだか、右腕に汗がベッタリついて、強く握られた後がついていた。
「なんか、手痒いな。」
ギランミは言いながら、右腕をポリポリと掻く。
「いやー、安っぽい作品でしたね!全く……う、涙止まってよ!グスン!!!」
エトセーラのハンカチは、おしぼり並みに濡れていた。
「何が三角関係だよ!潔くどっちかが下りるか、殴り合いで奪えってんだよ!!」
そう言ったのは、階段を降りる高校生男子であった。
「そのモジモジするのが、良いんでしょう!!なんて、品性にかける人間なのか……!」
エトセーラは、その男子校生の背中に向かって小声で呟く。
「いや、ハマってるじゃん。」
ギランミであった。
「いやー。駄作も良いとこだな。はぁ、立てない……」
エトセーラは、ハンカチで顔全体を覆い、しゃっくりをしながら、椅子にもたれる。ギランミも、エトセーラの泣きじゃくりが治るまで、一緒に座っていた。
***
その後、二人はポップコーンと飲み物のゴミを、入り口で回収する店員の人達に預け、スクリーンの列を出る。再び、ポップコーンと広告の巨大な音が二人を包んだ。
時刻は14時48分。
メサイア達の作品も佳境であろう。
ギランミは伸びをして、エトセーラは横でソワソワモジモジとしていた。
「はぁ、ちょっと座って待つか、二人を。」
ギランミが言うと、エトセーラは、ギランミの袖を引っ張りモジモジとしていた。
「な、なにしてんの。伸びちゃうだろ。」
ギランミは、自身の腕を引っ張って振り払い、エトセーラを見つめる。
二人の身長は、ややエトセーラが小さく、自然と上目遣いになるから、ギランミには妹的な印象を与えた。
銀にも白にも思える髪色で、それをサラリと流し、前髪はシースルー気味である。シースルーバングというのが、良さそうである。耳は、髪をかけて出している方が良いので、出しているとする。
エトセーラは、その髪をギランミの黒いジャンパーに擦りながら、チラチラと売店を見ていた。
「売店みるかー。」
ギランミはそれを察知して、エトセーラを引き連れて歩く。やはり、お姉ちゃん。どこぞのカスノンデリ主人公とは違い、人の気持ちを感じ取れる何かがある。
売店の商品は様々で、クリアファイルからTシャツ、キーホルダーからペンケースに至るまで、とにかく沢山である。
「何か欲しいものあったの?」
ギランミは、無言でそれらの棚と、並べられた商品を手に取るエトセーラを見つめる。
エトセーラは、最初こそ人気の映画達の商品を手に取っていたが、3秒で興味無さげに置いていく。そして、体は狙っていたかのように、段々と、先程見た三角関係映画の商品コーナーへと向かっていた。
「あれ、パンフレット無いのかな(小声)」
エトセーラは、ギランミにも聞こえない声量で、ぶつぶつと何かを呟いている。
エトセーラの声音は、透き通るもので、それが小さく発されるから、より綺麗な印象を受けるギランミであった。
「何か探してるの。あと、ハマってない?」
「ハマってない。あれ……ここに無いのかな。(小声)」
エトセーラは、キーホルダーや絵柄プリントボールペンを見ながら、ぶつぶつと未だに呟く。
「パンフレットなら、カウンターで言って買うんだぞ。」
ギランミが、エトセーラのそんな背中に声をかけた。
エトセーラの全身と耳はピーんと逆立ち、ワンコのような嬉しそうな表情で、ギランミに振り返る。
「キーホルダーは買わなくて良いの……?」
お姉ちゃんギランミは、気を遣えるので催促も出来る。アダムであれば、勝手に自分の好きな作品の元へ行っているところだろう。
キーホルダーは、思い出のリコーダーという名前のギミック付きのものや、名台詞キーホルダーなどがあった。あと、学校のエンブレムの形のランダムキーホルダー。
一個、600ジンバブエドル。リコーダーキーホルダーは、ギミック付きなので980ジンバブエ。名台詞キーホルダーもまたランダムであり、600ジンバブエであった。まぁ、妥当だろう。
「なんか、たっかいなー。」
ギランミは、それらを手に取って、こんなにちっちゃいのにと呟いていた。買い物についてきた、両親のようである。
「あ、この台詞のキーホルダーも欲しい。クリアファイルも良いな。ペンケースも、仕事に使えるし。うーん、節約したかったのに(小声)」
エトセーラであった。
「ハマってるじゃん。」
「ハマってない。」
姉妹かカップルである。カップルでお願いしたい。
いいぞ、もっとやれ。
結局、ギランミが持ってきたカゴに、こんもりと作品のグッズが詰められていた。そして、エトセーラはこの作品が、漫画の実写化であると知ると、その原作漫画も本屋で買いたいと言い出す。
ハマってるじゃん。
売店のレジへ行き、ギランミはその間にシャキリへのお土産で、ぷりぷりゲゾック君なる、ちびぬいぐるみを買った。彼にバナナトークで要望を聞いたところ、プリティープリの物を要求されたが、それは無視した。
「あと、パンフレットもお願いします。」
店員に向き合うエトセーラが言った。
「こちら、特装版と通常版がございますが……。」
店員が、下のロッカーを開きながら呟く。
「特装版でお願いしまふ。あと、このショーケースのサウンドトラックって、まだありますか。」
エトセーラは、下の劇場サントラcdを指差していた。
「全部あります!ありがとうございます!!」
エトセーラの顔は、明けの明星を突き破る、お日様であった。
「ホクホク。ホクホク。」
一万五千ジンバブエドルのお買い上げであった。
その映画専用の、花びらが白い背景に舞うビニール袋に入れてもらい、それを両手で抱えてホクホク座るエトセーラ。
「よかったねぇ。」
横でニコニコしながら、自販機のジュースを飲むのはギランミであった。二人は、映画館を出て、外の備え付けのベンチに座っていた。
突如、エトセーラは何か思い出したように、袋を弄る。取り出したのは、ギミック・リコーダー・キーホルダーであった。
「はい、これ。」
エトセーラは、それをギランミに差し出す。
「でも、これお前が欲しかったやつでしょ……?あと、なんでそんないきなり優しいの。今日、お前の家泊まるから……?」
ギランミは、ベンチで横に座るエトセーラを、怪訝そうに見つめる。
エトセーラの頬はポッと赤くなり、視線をギランミから離した。
「お揃いにしたいから」
エトセーラであった。
ーー本作は、これにて完結でも良いのではないだろうか。ドラ○ンボールで言うところの、サイヤ人編完といったところか。
まだまだ全然続くようである。その例えだと。
なぜか、楽しくどんどん書いてたら20万文字いってました。このまま、本編の文字数を超えると、顰蹙を買うのではないかと、ビクビクしてます。頑張ります。




