第四十五話 本屋を巡ったらご飯
イブちゃん、最近出番がなくてごめんさいね。
「もちっ!」
今日は、華金(日付変更済み)なので、皆さんにお疲れ様を言いましょうね!
「もちっ!」
せーの!
「もちっ!」
…………。
―――――――
「フッwwww本屋、本屋に参るでござるかwwww
拙者こw今月はピンチが故www買わないけどいくwwwwww買わないけどいくwwwwwww」
ガルーラは、カフェの列の人々にめちゃくちゃ引かれながらも、心ここに在らずで丸眼鏡を押し上げて叫ぶ。
「おwおwガルーラ氏wwwww邪魔すんなwwwwwガルーラ氏邪魔すんなwwwwwwwwwメサイアちゃんとの貴重な時間を邪魔すんなwwwwwwwwwwwww」
アダムも、村の掃除を放棄したようなどう○の要領で、草を生やしまくる。
あと、アダムくんはメサちゃんとの時間をそれほど貴重に思っていなそうに感じられた。
「そもそも、アダム氏wwwwwなぜにwwwwwwなぜにメサイアちゃんと出掛けてるwwwwwwwwwwwふwふざけんなwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「主人公ゆえwwwwwwwww主人公ゆえwwwwwwwwwwスマソwwwwwwwwwすまんではなく、スマソwwwwwwwwwwwwwwww」
両者共に死ねwwwwwwwwww両者、とw共に死ねwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
これをweb小説として投稿しているのだから、恐怖である。
二人は、本屋特有の扉を開き、相変わらず騒ぎ続ける。隣は、カフェが隣接しているから、ガラス張りの客にも引かれる二人であった。
レジ打ちをする店員に睨まれ、雑誌をへし折れるぐらい立ち読みするオヤジに舌打ちをされる。
「アダムくん、なんの本見るの?」
草に除草剤が撒かれたが、それはそれで物悲しいことである。
「ちょっと待て!これ、ユナちゃん水着写真集!?」
アダムは、ガルーラの胸……おっぱ○を触り、制止する。
二人の眼下には、アイドルグループの写真集が並んでいて、私服ジェナちゃんシチュエーション写真集と、
ユナちゃんシチュエーション写真集と、ユナちゃん水着写真集と、ユナちゃん直筆サイン色紙があった。
「うわー!やっぱ本人のあの性格抜きで、写真見ると可愛いーーー!!」
アダムは叫び、その写真集を店内の照明を当てるように掲げた。
「うっひょ!でけぇ!!」
ガルーラであった。あくまで本のことだろう。
「ねぇ、二人共叫ぶのやめてよ。」
迷惑そうなジト目で、アダムとガルーラを見つめるのはメサイアちゃんであった。小さな両腕には沢山の文庫本らしきもの。
「あっすいませ。」
「あぅすいませ。」
二人はシオシオとして、ビニールに包まれた写真集をコソコソと隠し始める。
「それ、なんの本だったの?」
メサイアちゃんが興味津々で二人の元へ寄る。
ガルーラは、メサちゃんの良い匂いを感じ取りながら、それに萎縮してアダムの背中に隠れた。
「ガルーラ君、なにしてんの!(小声)」
「うるさい!メサちゃん可愛いから、君が喋れよ!
君と出掛けてたんだろ!(小声)」
陰キャの二人は、コソコソと会話して、メサちゃんは首を傾げていた。
「あっすいませ。」
小声でそう言って茶を濁すのは、アダムであった。
「いや、すいませんとか良いからさ。その本なに?」
メサちゃんは、アダム達の目の前で展開されたお色気オンパレードを見て、薄々と察し始めていた。
「あっっすいませ。」
「それやめて?早く見せて。その、お股に挟もうとしている本を。」
メサイアちゃんは、再び怒りかけの顔をして、アダム達の側に近寄る。
『メサイアちゃん、服えっ○!?!?』
ガルーラであった。インターネットの最下層のノリで
喋るのはやめてほしい。
「メサイアちゃんは、何持ってるのじゃあ!!」
アダムくん、突如形勢逆転の叫びメサイアちゃんの胸元へ顔を近づけ、体のラインがはっきり見える服に、沢山積まれた本を覗き込んだ。
あと、控えめなお胸も。
「いや、私のは良いでしょ!それ、なに!!」
「これは、ち○ち○です。」
売り物の本を股に挟んだことにより、メサイアちゃんの指差す先が、アダムのち○ち○と本に被るから、誤魔化しが効く。そして、シラを切りに切ることが可能となった。
メサイアちゃんの本をよく見ると、文庫本であっても、なんか絵柄が派手だったり文字のフォントや色が派手であった。
「最近の純文学は、ライトな仕様なんだね。」
アダムは、鼻の下を伸ばしながら呟く。
「いや、これは違くてぇ////////」
メサちゃんは照れまくり、さらに目を凝らすと―――
「スーパーのバイトの僕を、社員のおっさんが襲う23巻」
「残業後に誰もいなくなったオフィスで、係長覚醒116巻」
「軍隊の少尉のぼくを、中将の唇が襲う4巻」
「男の人って、男の人に対しても、いつもそうですよね!」
「妻は悪い人ではない、ギャンブルもお酒もタバコもしない。浮気もない。結婚後すぐに、ギャンブルの借金を返済してくれたし、専業主夫も了解してくれた。家事育児も出来るし、家族15人全員仲良く暮らせる。それなのに、ぼくが感じているこのモヤモヤは、一体なんなんだろう(!?!!?!?!?!?!?!?!?!!?!?)」
という文庫本が積まれていた。全てが、B○本である。
メサイアちゃんは、それをじっと見るアダム君と、ガルーラ君の視線を受けて、顔を真っ赤にして、目をギュッと瞑りながら俯いていた。
「これほぼ、べらぼうスケベ同人誌じゃない?」
開口一番アダムであった。お前さ。
「メサイアちゃん、それをレジに持って行くのは中々の精神力だね。僕は、それ系はいつもサバゾンで買ってしまっているよ。」
突如、丸眼鏡オタクガルーラは、アダムの後ろから這い出て、早口で喋り始める。
「……!?!?でも、サバゾンって梱包されてないじゃない?だから、本屋さんで買った方が特典もついて、ビニールに付くからお得だし、本屋特有の出会いがあるから……」
メサちゃんも、ガルーラの一言で顔をぱっと明るくして、お花のオーラを放ちながら、ガルーラと喋り始める。
その真ん中のアダムは、もう空気扱いであり、地の文もそうしたかったが、このアダムの情けなさと逆張りさと、どうしよもない陰キャ力を、地の文は愛しているのだ。
アダムくんは、この隙に二人の相挟みから抜け出し、お股でホカホカになったユナちゃん写真集を脇に抱えた。
「よし、ホビー○ャパンも買おっと。」
アダムくんは、今月号を手に取るが、エアブラシ特集であった。
「ブラシかーー。ブラシ使わないんだよなー。お気に入りのライターの筆塗り特集あるかだけ、見ちゃおーー。」
アダムは、雑誌をペラペラとめくり、特集を流し読みする。
「○○○ックス、○トール!?!ほ、ほちぃ。この、モリモリマッシブ感がたまらん。」
アダムくん、ニヘニヘ笑うから、涎が垂れて、雑誌にそれがかかった。
「あちょ、やべ。マッシブといえば、リ○・コンティ○も良いよなぁ。うへへ………」
再びヨダレが落ちて、雑誌の1ページはダメになった。
「あちょ、やべ。やっべーーー。」
やっべーーーじゃないが。
あろうことか、アダムくんは、それを折り畳み、棚の奥へとしまっていく。出版社と本屋の敵、全てにおいて敵、存在自体が煙。
『この、ドスケベ写真集だけ買って、お家でお楽しみよ。
そろそろ、足痛いから帰りたいな。』
この、カスが。
レジに並ぶと、ガルーラとカップルみたいに喋りながら並ぶメサちゃんが前にいた。
『けっ、これだからカップルはさ。』
アダムはその後ろに並んで、内心で毒吐く。
前方のそれを、メサイアちゃんとガルーラくんと気付いていない。シルエットで男女の並びがあれば、問答無用で攻撃を仕掛けるカスであった。
メサイアちゃんとガルーラくんは、後ろに並ぶアダム君を見つけて、手を小さく振っていた。
アダムは、手元の写真集を見て鼻をひくつかせていたので、気付いていない。
しかし、裏表紙のユナちゃんの水着写真がモロ、メサイアちゃんの瞳に留まった時、メサイアちゃんの手を振る動きは止まり、再び暗黒のオーラが漂い始めた。
「ガルーラくん、あれさ。ユナちゃん水着写真集じゃない?」
メサイアの声は、先の自分の趣味と共鳴するそれではないことに、ガルーラは気がつく。
「うん、そうだね。じゃあ、また学校でね。」
ガルーラはそう呟き、客列を揃えるポールみたいなアレを飛び越えて、足早に去っていった。
『……?ガルーラくん帰っちゃうのか。』
後方のアダムは、前の列の人集りにいたガルーラがメサイアに何か告げて帰って行くのを見て、少しがっかりとした。
そして、取り残されたメサちゃんは、大量に抱え込むB○文庫本を胸に抱えながら、なんと列を外れて、アダムの元にやってくるではないか。
メサイアちゃんは、髪色より濃いブロンドの眉を歪め、口をへの字にして、口の下に不愉快そうなシワをちょびっと作り、ツカツカとアダムの元へ向かう。
その美人さと、ハイライトの消えた瞳の怖さで、
列の人々はそれを三度見ぐらいした。
「メサイアちゃん、きちんと列並ばないとダメよ。」
アダムは、写真集を隠すことを忘れて、正面のメサイアを見つめた。
「…………………。」
メサイアは、相変わらず苦悶の表情であった。
ピーマンを初めて食べさせられて、吐き出そうにも、口のそばにティッシュを用意してくれないから、吐き出せないおチビの顔にも見えた。
メサイアの白い指と、綺麗な爪が伸び、アダムの手に持つ写真集を無言で指差す。
「…………?」
「……………。」
……………………。
ドキドキ。
――突如、メサイアは、その人差し指を向けた左腕でアダムの写真集の上部をとてつもない力で握り始めた。
写真集のビニールがミチミチと音を立てて、アダムくんは写真集が傷付けられたくないので、すごい表情をする。
「ちょ、待てよ!ちょ、待てよ!これ、売りもんだよ!!」
メサイアは、アダムの叫びを無視して、ピーマン我慢おチビの表情で、写真集をつまみ締める。
「くっぬぅ!ぬうっぽ!ぬうっぽ!メサイアちゃん、ほっぺツンツン!ほっぺツンツン!」
アダムは、両腕で写真集を手に握り、抵抗する。
そして、なんの気狂いなのかわからないが、片手間で
メサイアの右ほっぺをツンツンし始めた。
それなのに、メサイアはそれを完全無視して、視線を写真集のみに向け、人差し指と親指、中指の三つで写真集上部を摘み続ける。
「メサちゃん、ほっぺツンツン!!メサちゃんほっぺツンツン!!メサちゃんほっぺツンツン!!メサちゃんほっぺツンツン!!メサちゃんほっぺツンツン!!メサちゃんほっぺツンツン!!」
おでんツンツン男ばりのツンツンである。
メサイアは、それを受けて無言でほっぺをツンツンされ続けるのに苛立ったのか、口を開けてアダムの人差し指をカプリと食べた。
「……………。」
「ジュルジュル。」
アダムくんは、自分の指がジュルジュルと食べられる様を傍観するだけである。
「お次のお客様ー!空いてるレジにどうぞー!」
店員の人が、アダムと指ジュルジュルメサイアの背中へ声をかけた。
メサイアは、アダムの指からちゅっ!と口を離し、
アダムの指にはメサイアの唾液がめちゃくちゃついていた。
『なんか、ラッキーなのかもしれないけど、めちゃくちゃ嫌なんですけど。』
アダムは、思いながら、左人差し指を見つめる。
「すいません。この人の写真集はキャンセルで。」
「かしこまりー。」
「あ、ちょ。」
メサイアが店員の人にそう告げて、お会計を済ませる。
アダムは、その店員の人に5人がかりで包囲されて、
無事写真集を回収された。
そして、やっぱり買いますとは陰キャなので言えないのであった。
あと、手洗ってない指ではないだろうか。考えるのはやめた。
♪♪♪
アダムとメサイアは、本屋を出てようやっとカフェの列へと並ぶ。時間は12時45分。カフェの列は先よりは縮んでいて、10分も待たずに入れそうであった。
「うわ、あの写真集転売されてるレア物だ。」
アダムは呟く。先の写真集をサバゾンで購入しようとしたところ、なんとマケプレの購入のみになっており、中古品でも二万五千円であった。二万五千円なので、ジンバブエドルではない。
メサイアは、本屋の袋を抱えてホクホクもちもちほっぺを、アダムのスマホを持つ右腕に押し付けて、スマホを覗き込んだ。先の指ジュルジュルから、なぜかお肌の触れ合いが多い。お肌の触れ合いがあっても、お肌の触れ合い回線は開かない。
「…………。ねぇ、もうこれ見るのやめて。」
メサイアは呟き、上目遣いであった。
「はい。(解散したら、買いに帰ろ。)」
ようやっと、カフェの店内に通される。木で作られたテーブルが並び、アルミのような輪っかに囲われているものであった。
メサイアは、このような場所に慣れていないアダム君を先導して、一つの丸テーブルを囲んだ小さな座席を選んだ。アダムだけ空気椅子にしても良かったが、一応地の文にとって、可愛いオリキャラなので、やめた。
「やっと座れたーー。」
メサイアは呟き、自分の小さめのカバンを膝に置く。
アダム、空席はないが、荷物をこっちで預かると言うんだ。荷物専用のバスケットがあるから、それを用意して言うのだと、地の文は念じた。
「あー、写真集欲しかった。」
ギロチン執行は、猶予を持たず今からだろう。
「それやめて。メニュー見にいこっか!」
メサイアは呟き、パッと明るい顔をしてアダムを催促する。
「あー、オレンジジュースとカレーで。」
アダムは、座席にもたれたままメサイアにそう告げた。
座席を立つこともせず、二人でメニューを見て、こんなケーキあるんだとか、こんな飲み物あるんだとか、このマグカップ可愛いとか、そういう趣を一切排除して、この男は座席に座りながら、かったるそうにそう言ったのだ。
「メニュー、一緒に見たいよ。」
立ち上がったメサイアであった。コートを脱ぎ、ちょびっとスケ○な格好をしている。両手の指をツンツンさせ、座り込むアダムをチラチラと見た。
「んー。まぁ、オレンジジュースとカレーかな。やっぱ。あー、お金か。そっかそっか。」
アダムは遠方の店員が待つカウンターと、その上のメニュー版を見て、呟く。
ポケットを弄り、財布を取り出すアダム。
こんなキャラクターにしてしまって、本当に好感度は地の底なんじゃないだろうか。地の文は、まだ我が子を見るような目で見れるが、第三者から見たらヘドロも良いとこだろう。
「……………………。殴っちゃダメかな。」
修正とはこういう人間のためにあるとわかる。
暴力最高!!暴力といえば……
「ガツガツ!モシャモシャ!!ズズズ!!…………?」
横で、カフェに来たとは思えない量のご飯にがっつく人間がいた。私服ではあるが、見慣れた格好で頭にはカチューシャ。
「……………げっ!アダムくんとアルメイアさん!?」
サンドイッチを二つ折りにし、その二つ折りにしたサンドイッチを3つ一気に頬張ろうとする、スケベ写真集の主、ユナ・エイジールその人であった。
「うわっ!ユナさん!?」
アダムはめちゃくちゃ嫌そうな声を上げ、横のメサちゃんは律儀に挨拶をする。ユナは、アダムを無視してメサイアに挨拶をして、手を拭って握手までした。
「外でユナって名前出すな!アイドルなんだから。」
ユナは呟き、ドラゴ○ボールの天下一武道会のような量の食事に向き直る。
「…………………。」
「……………………。」
ボグゥッ!!!
突如、頬をぶん殴られるアダム。壁に叩きつけられ、
メサイアはちょっとスッキリした顔をしていた。
「女の子の食べてるとこなんか、見るな!!」
理不尽その人である。




