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第二話




暫く歩いて、ジーネンは他の部屋と全く変わり映えしないリビングを、迷いなく開く。


イブはそれを横目に、ジーネンに続いて部屋へ入った。


茶髪と、一部が赤みがかっている短髪の青年がソファに体を預けて、ぼーっと見つめるテレビにたまたま、先程のユナちゃんの映像が映り込み、アダムはリモコンを握り込み、爆速でテレビを消した。


「くそっ、ニュースめ!こんな時にアイドル特集なんか……!!」




「アダム……。今日は卵が新鮮だから、卵かけご飯も出来るけど。」


ジーネンはそれを見て見ぬふりをして、冷蔵庫を開く。

アダムはそれを感受して、さらに表情が暗いものとなった。



「おにいちゃ……アダム。私も、ユナちゃんは顔がお人形みたいで、その……好きよ。」



イブが渋々と言ったように口を開いた。

なんだ、その母親が流行のアイドルを褒めるような言葉選びは。




「それで、僕のアイドルグッズはどこにいったのですか。」



俯いたアダムが言う。


「なにを!…」


地面に振動が走り、廊下をけたたましい轟音が包み込んだ気がした。

それほど、ジーネンから圧が出ていた。



「全て貴方の部屋に置いたわ。でもね、これは親御さんにもちょっと……」



「くそっ!チクろうというのか!!」



アダムはソファから起き上がり、抗議するように机を叩いた。



「あのマウスパッドは不味いでしょ。」



イブが淡々と告げた。


イブはアダムのアイドル好きを半分勘づいていた。

しかし、グラビア売りをしていないジェナが好きなのかと。まさか、ユナまでも好きだとは知らなかったのだ。



「イブは黙っててくれ!あのマウスパッドは、何回も落ちるサイトを掻い潜ってようやく買った!!botとかいう、クソのようなシステムを掻い潜って争奪戦に勝ったんだよ!」



ジーネンが無言でソファの側のロー・テーブルに寄り、ペラリと何かを広げる。


水着姿でベッドに寝そべり、頬を赤らめる姿を俯瞰して撮影された、ユナ・エイジールちゃんのマウスパッドであった。



アダムは絶句し、イブはジッとそれを見つめ、自分の体とそれを見比べた。



「壁に飾るの?これ。」


ジーネンが告げた。



「悪いことは言わないから、馬鹿な真似はやめなさい!こんなもの飾って、イブを部屋に呼べるの!?

メサイアちゃんだって、貴方を看病する時にこんなものがあったら、どう思うのか!」



「くそッ!コンプレックスは包み隠さずコンプレックスであるべきなんだッ!!」



朝の七時三十二分。

再び建物全体をジーネンの怒声が揺らした。



ジーネンはスマートフォンを取り出し、そのマウスパッドをシャッター音に合わせて写真として納めた。



たんこぶを頭に作ったアダムは、ソファに項垂れ、

自分の前の机で湯気を立てる卵かけご飯を見つめていた。


そう言えば今日は、インペネスのくじが始まる日であったが、景品はまたマウスパッドであったから、アダムは諦めた。





***




超超上場企業「タイタニス」



そこの幹部、サラスは自室で朝のニュース。


「閉じろzipper」を見つめていた。


マグカップから湯気を立てるそれを啜り、外の景色を眺める。街を見下ろすタワマン。

太陽がサラスを照らし、巨大なスクリーンに映る

インペネスのユナちゃんまでも照らした。



「やはり、可愛い。なぁ?バジーリオ君。」



サラスの視線の先、ブロンドの髪を持つ端正な顔立ちの青年、アダム・バジーリオ君がいた。



「はっ、しかし、このようなものばかり見るのはやめましょうよ。サラスおじさんもいい歳でしょう。」



バジーリオ君は黒い制服を着込み、そのスクリーンをうんざりとした表情で見つめる。


バジーリオ君の両親は海外に赴任しているから、親戚のサラスさんと同居している。



「君の学校での人気の理由はそれだが、

少年止まりの原因でもある。

君も、アイドルをすこりなさい。しょうさ……バジーリオ君。自転車のセルビウスのパンクは直しておいたから、ヘルメットを被るんだぞ、バジーリオ君!!」



言葉を待たずに、バジーリオ君はサラスのいるリビングから出ていっていた。



アイドルから活力得る人間の考えがこれか。

踊る女の子は消費され

そうでないおじさんはこうやって力を蓄えるのだ。



バジーリオはよくわからんことを考えながら、おトイレの扉を開いた。

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