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海に、月が昇る ~シェリーの追憶~  作者: 時澤菫
太陽王子と月光令嬢
20/22

19 イザベラとスチュアート侯爵

更新期間が空いてしまって、本当に申し訳ございませんでした。

二章完結まであと数話になります。




 荘厳なスチュアート邸の門をくぐると、亡霊のようにゆらゆらと灯る灯りが玄関ホールから、応接間まで続く。


「ただいま帰りました。」


 イザベラは、娘を心配しすぎて頭がおかしくなったかのように歩き回っている、彼女の父親の姿を発見し、考えていた。


(お父様は私がまだ病弱な娘だと思っているのよね…。)


「イザベラ!先程陛下から見つかったとの連絡があったが、攫われていたのだな⁉父さんが護衛をちゃんと付けなかったから、怖い思いをさせてしまって、本当に…。」


 しょんぼりとするスチュアート侯爵をみて、周りの護衛もしんみりとした雰囲気になる。


(ここは空気を読まなきゃ…。)


「いいえ、お父様のせいではありませんわ。…私が日頃あまり外に出ないから、自分の身を守れなかったのよ、コホコホッ。自分のせいで迷惑をかけて申し訳ないわ。ゴホッ。」


「なんと!お前のせいではないのに!今後は陛下が退治して下さった下級貴族にそれ相当の罪を問うつもりだから、安心してくれ!お前が望むなら、あのコマス令嬢も断って…。」


「大丈夫だわ!…ではなくて、大丈夫ですよ、お父様。彼女のために動いたのは自分の意志ですから。ゴホッ。今日は疲れたので、明日また話します。おやすみなさい。」


 イザベラの後ろ姿を見た侯爵たちは、一層か弱くて心優しい女性に胸を打たれていた。


 幸い、彼女の数歩後ろに控えていたドーラが、咳をするたび笑っていたのは気づいていない様子である…。









 「ああ、そうしてくれ。今すぐにな。」


 ランヴァルドは赤い蠟を垂らし、封をした封筒をアルミロに手渡す。


 「かしこまりました。では、仰せの通りにすぐに届けさせます。」



 アルミロが出ていった執務室で、ランヴァルドは一人ため息をつき、今日の出来事を振り返って微笑んだ。


「病弱な少女かと思っていたが、意外に強いところもあるようだ。」



彼が出した文書を見て、彼女はどう思うだろうか、と窓の外を眺めながらふと考えた。


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