18 新たな友達
「こいつはここの海に住んでる人魚だぞ。」
説明に対しフレデリーカは焦って訂正した。
「海の中でも岩場の、もっと良い環境に住んでるわよ!仲間もたくさんいるのだし、そんなに驚かないで。…そうよね、知らない人間のほうが多いのよね。あんたが私たちの存在を知っているほうがおかしいのよ!」
フレデリーカは甲高い声でぶつぶつ喋ったが、イザベラのほうを向くとにこりと笑って、「あなたはなんていうの?」と聞いた。
「あ!自己紹介が遅くなって申し訳ないです…。私はイザベラ・シュチュアートと申します。」
フレデリーカの妖艶な笑みに見とれて答えたら、思わず噛んでしまい、イザベラは顔を赤くした。フッと、鼻で笑って彼女を見た後、ランヴァルドはフレデリーカに向かって歩く。
「イザベラが驚くのも無理はないが、普段隠れている筈なのにどうして助けたんだ?お前たちは人間が嫌いだと聞いたことがあるのだが。」
「まあ、失礼ね。嫌いで隠れてるわけじゃないわよ。大昔、人魚の涙を伝説化した人間がいて、捕獲しようとそれを信じた人間たちが海に来たのよ。それから人魚はこうして陰からあのくだらない祭りをみんなで見るようになったんじゃないかしら。」
「くだらないとは、見ている割にひどい言い草じゃないか。…しかし、その、…今回は助かった。王として礼を言う。」
「あ、ありがとうございました。」
イザベラも一緒になってお辞儀をすると、フレデリーカは喜んだ様子を見せた。
「ええ。助かってよかったわ。この人もあと少しで息が持たないくらい頑張って泳いでたけど、私のほうが早かったわ。」
「?」
「それは言う必要ないだろ。」
ランヴァルドの不機嫌そうな顔に満足した様子でフレデリーカはゆっくり沖へ引き返していく。
「わたし、仲間と少し気まずくなっていたの。でも、これからはイザベラがいるから心配ないわね!」
手を振って消えたフレデリーカに対し、イザベラは振っていた手を下ろしながら首を傾げた。
「今のはどういう意味かしら?」
「お前と友達にでもなったと思ってるんじゃないか?またここに来てやれ。…何してるんだ?ほら、さっさと行くぞ。」
あっという間の出来事に放心状態だったイザベラへ、ランヴァルドは手を差し出す。
「ありがとうございます。」
そう言ってにっこり微笑むと、ランヴァルドはそっぽを向いた。
「…。これからはこんな無謀なことするな。…お前の父親がうるさくなるからな。」
「そうですね…。気を付けます。それと、殿下も友人のために無謀なことされてましたけど、お気を付けくださいね。」
「!どの口が言ってるんだかわからんな。」
夕日が眩しくて目を細めると、前にいたランヴァルドが笑っていることに気が付いた。夕日のせいか、ほんのり頬が赤い。
「今日は大変な一日でしたけど、殿下が実はいい人だというのがわかりましたし、なんだか満足してます!」
そう言い満面の笑みでランヴァルドのほうを向いたイザベラも、高揚して頬がピンク色になっていた。
「懲りない奴だな。だが、いつものように弱弱しくされるより、これからもそうやって親しく話してくれると助かる。社交界の女はつまらん女ばかりだからな。」
「わかりました。」
「それと、あんまり他の奴にその笑顔を向けないようにしろ。…お前に邪な奴が近づいてきそうだ。」
「?わかりました。気を付けます。」
イザベラの答えにまたしても鼻で笑って、ランヴァルドは手を取り、家来に遣わせた馬車のほうへ向かった。




