11 活気溢れる首都
陽炎祭がどんなものかわからず来たイザベラだったが、予想以上の賑わいに驚いて思わず声を上げた。
「すごい人だかりだわ。こんなに賑わうのね。」
舞踏やパレード中は貴族席にて観覧できるのだが、ルシアはずんずんと前に座り、後ろからついてきたイザベラに笑顔で振り返る。
「あそこにいるのがカルヴァ―ト大公爵様だわ。前王の弟君にあたるのだけど、顔はイマイチ。」
「へ、へえ。」
「それで、あそこにいるのはフォルキット公爵夫妻。お歳を召されているから移動が大変そうね。」
「ええ。そうね。あの、ルシア、私たちはここにいていいのかしら?」
「勿論よ。あのお年寄りの公爵様方の次にスチュアート侯爵家は名門なのよ!」
「そうかしら。あら、あれは何かしら。」
「きっとパレードのために道を整えているのよ。」
ルシアが言った通り、王族側近の騎士たちがスペースの確保のために一生懸命人々をどかしていた。
「パレードはいつなの?もうすぐかしら。」
「違うわよ。あれは最後よ。夕方近いの。その前にここで踊りを見物して、屋台の食べ物を買うの。それで色水をかけあう様子を見物して、パレードってとこかしら。」
「屋台で食べ物を買うの?」
「…ほかの貴族方は買わないだろうけど、うちは…、コマス家はもともと貴族だったわけじゃないし、農園を持ってることもあって、よく街に売り出されてるのを買うのよ。」
ルシアは恥ずかしそうに下を向いた。
「そうだったのね。私も食べてみようかしら。」
イザベラの言葉が意外だったのか、ルシアは目を丸くしたが、しばらくしてから一緒に行こう、と呟いた。
ブリストル王国一栄えている首都ベルファスでは、淡い色の木造建築が建ち並び、脇にはいつも民衆によって植えられた色とりどりの花が咲いていた。
古来より、春になると風が吹いたその一週間後あたりに、陽炎祭と呼ばれる祭りが開かれ、咲き誇った花々を各々王へ届けるという文化が存在した。それがいつの間にやら花で馬車を飾ったり、咲き終わった花で色水を作り掛け合ったりと、年々派手な催しへと変化したようだ。
町には屋台が並び、民族衣装を着た娘たちが踊って華やかな陽気に包まれ、陽炎のように熱気が町全体を覆う。
17歳にしてイザベラは生まれて初めて、この祭りに参加した。
屋台の食べ物も思いがけずおいしい上に、広場での踊りは見ているだけでも楽しいものだった。
このときはまだ、何が起こるかも知らず。




