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(7)急募・魔術師(若干一名)

 隣領の領主との交渉で、『眠り竜の山』と呼ばれる大きく険しい休火山から、岩石を調節池に使うために分けてくれ、とアルバート王子は願い出た。


 岩石の代金に手持ちの大振りのダイヤモンド一粒と、山から切り出してアルバート王子の領まで運ぶ人足にかかる費用として小さなルビーの嵌め込まれた指輪を一つ、差し出した。

当然、どちらも王都の最高級店で作られた鑑定書付きである。


 領主は元々行われていた絹産業を発展させて領を豊かにしたと評判の侯爵だった。

商売上手で油断ならないという声もあった。

その侯爵に、アルバート王子は面と向かって言ったのだ。


「うちの領地を、見捨てられたド田舎領地のままにしたくないんです!」


 『しくじって王都を追われた馬鹿王子』で有名なアルバート第二王子だが、真剣に頭を下げる姿に、嘘はないだろうと隣領主は思った。

ダイヤモンドとルビーだなどと破格のお代を差し出したのも、その真剣さを証したいのだろうと判断する。

それにアルバート王子がまだ王族であることには変わりない。


(ここで恩を売ってやっても損はなさそうだな)


 隣領主は愛嬌たっぷりに顔を綻ばせた。


「顔をお上げください、殿下のご要望にお応えいたしましょうぞ」


「ありがとうございます!」


 隣領主に再び深々頭を下げたアルバート王子は、そのまま床に伏して額を押しあてた。

いわゆる土下座スタイルだ。


「えっ……」


 狼狽えたのは隣領主の方だった。


(こ、ここまでするのか! 王子なのに?)


 するのである。馬鹿王子は馬鹿だが領地思いなので。


*


 自領に戻ったアルバート王子は鼻高々だった。

災害対策本部に使っている部屋に置かれた長椅子の上で胡坐をかき、隣領でのあれこれを報告する。


「俺は交渉事でも有能だったみたいでさ。

いやー、自分でも知らなかったわー、意外だわー」


「……それはよろしゅうございましたな」


 誰もが反応に困っていたので、仕方なくジェームズが口を開いたが、祖父(現役の宮廷侍従長)のテンプレ台詞になってしまう。


「早速、石の切り出し作業に入ってくれるって。

隣領の『眠り竜の山』から街道を使って運ぶから時間かかっちゃうけど、石橋の材料もあそこから買ったんだし、みんな慣れてるだろうから、焦らず待とう。

到着したらすぐ作業に入れるように、ある程度水が引いたら掘削とかしといてな」


 アルバート王子はニッと笑って話を続けた。


「領主が晩餐会開いてくれたんで、うちのエールの小樽も提供したんだよ。

そしたら領主とお抱え商人が、美味さにびっくりしちゃったようでさ。

本格的に取引きしたいから、商人が近い内に買い付けに来るってさ」


 アルバート王子は代官たちを見まわした。


「伝言鳩で伯爵代官には話したけど、サンヒルとブルックの代官たちも聞いてるだろ?

エールの増産、よろしくね!」


「その件につきましては、船町東西の子爵代官からお話が」


 ジェームズに促され、子爵代官が進み出た。


 アルバート王子は呑気に声をかける。


「おー、船町の復旧は進んでるかい?」


「ええ、おかげ様で」


 一礼して子爵代官が説明する。


「その復旧作業の中での出来事から発想を得たのですが、エールの一部を、濾過した水で大麦の洗浄から仕込みまで全て行って作り始めております。

現在はリバ―村内で作らせておりますが、作付け面積の広いサンヒルとブルック両村にも技術譲渡つまり濾過器を設置して、同様の手順で作っていただきます」


 両村の代官たちが頷いたのを見て、子爵代官は続けた。


「これが成功したら『天使のエール』として売り出すことを提案いたします。

そして――」


「そして?」


「通常通りに作ったエールの中でも出来の良いものを、『親分のエール』として流通させましょう」


 子爵代官は出来上がったばかりの焼き印を二つ取り出した。


「二種類の焼き印を、『天使』『親分』それぞれの樽に押して区別します」


 元締めの孫娘が描いた絵を映しとった焼き印だった。


「へえ~!! やるじゃん!!」


 アルバートなりの賞賛であるのは、一同も理解していた。


*


 だが、上手いことばかり行かないのが世の常だ。

この異世界中世ナーロッパ風世界にあっても。



 船町西の救護所として使われている大きめの教会が、今日も葬送の鐘を鳴らした。


 溢れ出た川の水に漬かって作業していた人足や領民の内には、ちょっとした傷薬では間に合わなかった怪我人や、小さな傷から菌が入り込んで発熱した者が何人もいた。


 彼らの殆どは寝付いたまま助からなかった。



 その日、救護所の視察として、アルバート王子は船町教会に来ていた。


 使われなくなった古い会堂に、藁を積んで作った寝台をいくつも並べていた。

中は薄暗く、血膿のような臭いが満ちていた。


 目の前で、子供の遺体を抱きしめて名前を呼びかける親の姿があり、親の遺体に縋って泣く子供がいる。


 寄り添う者が一人としておらず、ぽつんと安置されているだけの遺体もあった。


 司祭が時折祈祷文を交えながら説明してくれた。

川運送で生活をしている者は、領内の村から来た者だけではない。

余所者も多く、身元のわからない者は「行旅死亡人」として、船町の教会が記録することになっていた。

心当たりのある遺族が訪ねて来たら、教会でその記録を見せる。

そして遺体は領内の共同墓地に埋葬した。


 救護所を見まわしながら、アルバート王子は泣き出した。


「可哀そうに! 可哀そうになあ!」


 彼を責める声はなかった。

領主に対する遠慮があったのはもちろんだが、領主館から派遣された者たちが頻繁に視て回り、傷薬や穂綿を調達してはすぐに配布していたのを見ていたことも大きかった。


領主館の者たちは、しぶちんの元締めからエールを供出させて、救援活動をしている者だけでなく避難所で働く者や付き添い人へも持って来たし、食べ物も配っていた。

全て領主の許可の下である。



「医者や薬師の数が足りないよなあ。

治癒魔法の使える魔術師も殆どいないし、他の領から連れて来るにも時間がかかり過ぎる」


「そもそも、こんな辺鄙なところに来るのを嫌がる者も多いですしね」


「王都の役人どもは救援要請に応じてくれないし、いくらここが、『王都から見放されたド田舎』だからって、あんまりじゃないか」


「殿下、そこまでです」


 ジェームズは遮った。

王都に対して無暗に憤りを発散することで、アルバート王子に「叛心あり」と人々から誤解されるのを避けたかった。

ただでさえ、都落ちさせられた身の上だから、余計に言葉に気を付けなければならないのだ。


 ジェームズは静かにアルバート王子の背を撫でた。

王子も大人しく従った。


 アルバート王子は救護所の片隅にあるベンチに腰を下ろした。

こういう時、ジェームズは侍従の職務上、絶対に隣に座ろうとしない。

王子はそれが少し寂しいが、もう諦めている。


 遠い目で、アルバート王子は述懐した。


「学園にいた頃はさ、フレデリックが薬学に詳しかったし、ジャックの水魔法には治癒術も含まれてたから、俺は保健室に行くこともあんまりなかったんだ」


「フレデリック様は、惜しい事になりましたね」


「うん。

でもフレデリックが、まさかセリーナとデキてて、病気になるなんて、なあ?

品行方正ぶってたくせにさ」


「ジャック様は御父上が団長をしている魔術師団に入られたとか」


「あいつはセリーナとそんなに仲良くしてなかったから病気伝染されなかったみたいだけど、でも俺の取り巻きだったわけだし、今頃あまりいい待遇は受けていなさそうだよな」


「……」


 アルバート王子は一言「うん」と口にして立ち上がった。


「そうだ、ジャックを呼ぼう!」


*


 教会(救護所)の視察を追えて領主館へ戻る前に、ジェームズは最近は自分の秘書代わりに使っている従僕を呼び、伯爵代官のところに先触れを出した。


 アルバート王子と共に領主館まで戻り、王子を降ろすと、自分は再び馬車に引き返して、市街地にあるレンガ造りの庁舎へと走らせた。


 建物内には伯爵代官専用の詰所があり、伝言鳩という魔術を使った連絡を行う部署がある。

伯爵直属の魔術師が二名、交代で常に待機していた。


 正直な話、ジェームズは羨ましくてならない。

伝言鳩なら時間や天候に関係なく先触れが出せるし、口伝えと違って使う者の意思を一言一句違えず相手方に伝えられるからだ。


「ああ、ジェームズさん、良いところに」


 伯爵代官が迎えたが、表情は優れなかった。



「残念な話がある」


「……」


(ああ、やはり)とジェームズは思い、伯爵代官の言葉を待った。


「いくつかの伝手を辿って問い合わせていた、他領にいる薬師や『治癒魔法の使える者』のことだが、

……来訪は全員から断られた」


「……」


 顔を見合わせて溜め息をつく。


「やはりここまで来るのは大変すぎますか」


「それは大きな理由ではあるのだが、それだけでもないようだ。

王都では『例の病気』が大分広まってしまっているようで、教会も女神神殿も対応に大わらわだそうだ。

この地の女神神殿にめっきり人の出入りがないのもそのせいらしいし、魔術師も各地から呼びつけられている」


「つまり、この領に派遣できるような人員の余裕がないと」


「左様」


「そうですか……」


 ジェームズはゴクリと唾を飲み込んだ。

これからすることは、アルバート王子の思い付きを実行するだけではなく、『賭け』に変わった、と思う。


「ですから、そちらの先触れにあったような『魔術師団からの招聘』は、難しいのではあるまいか?」


 伯爵代官は悲観的だった。


 けれど、ジェームズはゆっくりと微笑した。


「招きたいのはアルバート王子殿下の取り巻きだった魔術師です」


 顔をあげた伯爵代官に、ジェームズは頷いた。


「殿下やオリヴァーよりはマシな境遇だろうとは思いますが、おそらく立場は『冷飯食い』であるかと」


「して、能力の程は?」


「王立学園の魔術師クラスでは首席以外取ったことがない者です」


「そ、そんな優秀な魔術師が?」


「殿下と親しかっただけで、婚約破棄事件には大して関わっていなかったそうなのに、連座で処分されたそうです」


「そんな雑な扱いとは、気の毒なものだ」


「全くです」


「……年棒は期待させられぬが、ここの領民は人が良い者が多い」


「ええ、王都から見捨てられた私どもを温かく受け入れてくださるくらいに」


「見捨てられている魔術師も、ここを気に入ってくれるものかね?」


「きっと」


 伯爵代官は「くくっ」と喉を鳴らした。


「くっくっくっくっく」


「ふふふふふ」


(何も悪いことしてないのに、悪代官と悪侍従みたいに笑わないでくださいよっ!)


 控えていた伯爵代官付きの魔術師が内心で叫んでいた。


「よし、王都の魔術師団まで伝言鳩を飛ばす!」


「名前はジャック・モルガン。

彼個人にのみ読めるよう、小さな結界魔法を仕込むと良いでしょう」


「そのようにしろ!」


「ははーっ!かしこまりてございます!」


 つい古めかしい言葉遣いをしてしまった魔術師だった。


*


 翌朝、本当にジャックが転移して来た。


 丁度、災害対策本部で各代官らとの打ち合わせを終えて、散会する時だった。


 アルバート王子が再会の喜びのあまりジャックに飛びつこうとしたところを他の従僕たちに確保させて、ジェームズはジャックを代官たちに引き合わせた。


「ども、殿下の学友だったジャック・モルガンっす」


 ジェームズはペンと羊皮紙を手にしてジャックに尋ねた。


「確認しておきたいのですが、ジャックはどのような『治癒術』ができますか?」


「あー、俺は、火・風・水・土の、四大元素由来の魔術なら、一応何でもやります。

水魔術がわりと得意なんで、できる治癒術の種類は多い、かも。

でも光魔術はできないから、失った手足を生やすとかはできない……です」


「ふむふむ」


 ジェームズはジャックの言葉を書きまとめた。


 子爵代官が感極まった声でジャックに言った。


「ありがたい! よく来てくれた!」


「ど、どもです……」


「ではこれから、ジャックはアルバート殿下と私と一緒に、船町西の救護所に伺います」


「頼むぞ!」


「治癒の出来る魔術師が来てくれてありがたいよ」


「我々もほっとしました」


「これからよろしくな」



 口々にそんなことを言う代官たちから、伯爵代官が一歩踏み出てジェームズに言った。


「先にうちからも治癒の魔術師一名を派遣してあるから、色々指導してやってくれ」


「魔術師団の秀才と現場の先鋭魔術師が一緒に働くのですから、上手くやってくれるといいですね」


 ジェームズも立ち上がった。


「この領は気の良い方々が多いですし、大丈夫だと思いますけどね」


*


 救護所へ向かう馬車の中で、ジェームズはジャックに尋ねた。


「傷薬や熱冷ましでは追いつかない人達を診てもらうわけですが、経験はどれくらい?」


「魔術師団ではたまに、魔獣退治部隊の治癒班に入れられた。

応急手当だから骨折した奴には添木で固定して血止めと痛み止めの術をかけたくらいで、後は自分ちの治癒師に治すよう言った。

骨の再生術なんかは光魔法使える奴にお任せ」


「だからあんまり期待しない方がいい」と続けたジャックに、アルバートが唇を尖らせた。


「何言ってんだよ。

魔術師団では『簡単な事しかさせてもらえなかった』んだろ?

お前は天才なのに」


「褒め過ぎ。ここじゃまだ何もしてないし」


 ジャックは自分で否定した。


 彼は自分にできることを淡々と説明する。


「そんで、病気の場合は、体の水分を操作して悪い物を外に出すような治癒術なんだけど……

こういうので平気?」


「色々と凄いと思います」


「そっか」


「よろしくお願いします」


 なんちゃって中世世界なので、医学は発展途上だし魔術も万能ではない。


 だが『治癒のできる魔術師が来てくれた』ということこそが、領民や代官たちにとって励みになるのだ。


(こきつかっちゃうかも。ごめんね)


 ジェームズは心の中でジャックに謝罪した。


*


 救護所に着くと、ジェームズはアルバート王子をまず最初に、続いてジャックを降ろした。

最後に自分も降りて、出迎えた司祭に一礼し、一緒に中へ入った。


「う……」


 中へ入った途端、ジャックは足を止めた。

藁を積んだ寝台に寝かされて呻き声を上げる怪我人や病人を前にして、呆然としている。


 ジェームズも初めて訪れた時には吐き気が込み上げていた。

あの時は、患者たちが「可哀そうだ!」とわんわん泣きだしたアルバート王子を宥めるために正気に戻ったと言っても過言ではない。


 ジャックもアルバート王子と同い年、学園を卒業したばかりの若者だ。


「多い……」


 ジャックが呟いた。


「はい。

でも、これでかなりの数が減ったのです。

当日増水した川で溺れた者や、怪我の度合いの酷い者の多くが、助かりませんでした」


 今この救援所にいる患者は、水に漬かりながら作業をしていた者たちや、溜まった土砂を掻き出していた者と、その家族が多い。


「俺、魔術師団ではこんなの見たことない……」


「ここにいるのは、魔獣退治部隊と違って騎士爵も持っていない平民たちです」


「うう……」


「無理ですか?」


「無理じゃない!」


 ジャックは呻くのを辞めて顔を上げた。


「では、他の薬師や治癒師に挨拶しましょうか」


 被災者を目にして『無理じゃない』と言うジャックに、この領地に来たばかりの頃に『逃げない』と言ったアルバート王子の姿が重なる。


 ジェームズは救護所にいた薬師や治癒魔術師たちにジャックを紹介した。


「こちらが魔術師のジャック・モルガン様です。

水魔術応用の治癒を行われる方です。

皆さまがこれまで使われていた治療法について、まず情報を共有していただけますか」


「承知しました」


「ジャック様、こちらは薬師と、伯爵代官から派遣された魔術師です」


 これからはこういった救援活動以外でも、ジャックと顔を合わせる機会があるだろう者たちだ。


「よろしくお願いします」


 思いの他礼儀正しくジャックは挨拶した。

それからすぐに、治癒師らから説明を聞きながら、ジャックは最初の患者の傍へ向かった。


「……」


 ジェームズは黙り込んでいるアルバート王子に顔を向けた。


「今日は大人しいですね?」


「……そりゃ、ジャックの足引っ張ったら悪いからな」


 殊勝な言葉に、ジェームズは驚いた。


 だが今日は暇なわけではない。


「水の濾過器、出入口近くの隅に置きますね」


 救護所にオリヴァーが荷車を引いて来た。

大きな樽で作った濾過器を、教会の助祭に手伝ってもらいながら降ろす。


「こいつを水瓶の代わりに使ってください。

……あ、ジャックだ。来たんだね!」


「んんっ? あ? え? 君、オリヴァーか!?」


 朝の打ち合わせにオリヴァーの姿はなかった。

彼は昨日から泊まり込みで、エール作り用濾過器の製造や設置の指導にあたっていた。

できた濾過器の一つを一つを救護所にも置こうと提案し、司祭の許可を取って自分で運び込んだのだった。


「僕、ここに来てから背丈が伸びたから、すぐにわからなかったでしょ?」


「うん……」


 ジャックの記憶にあるオリヴァーは、いつも高級レースをふんだんにあしらった服を着た美少年だった。

それが小役人のようないでたちで、荷車を引いて来た。

だから、本当にわからなかったのだ。

相変わらず美少年は美少年であるのだが。



 気を取り直して、ジャックは患者一人一人を診て周り、すぐに手当が必要な者たちに治癒魔術をかけ始めた。


 ジェームズは当番の助祭から救護所への追加資材や増員の希望を聞き取っていたが、時折患者たちの横たわる寝台の方から魔法光が輝くのが見えていた。

薬師たちの感嘆する声も聞こえる。


(こんなに凄い魔術師を簡単に手放すなんて、魔術師団も何をやってるんだか)


 ジェームズは内心で苦笑した。


 司祭たちとの話し合いを終えて救護所を出ると、アルバート王子の声が聞こえていた。


「あそこにいる。尻尾が見えた」


 王子が肩車をした子供が、木の上にいる子猫へと腕を伸ばす。


「ニャー」


「捕まえた!」


「よぉーし、よくやった!」


 子供を褒めると。アルバート王子はしゃがんで子供を地面に降ろし、その腕の中にいる子猫に説教する。


「自分で降りられないとこに登るなっての!」


「……」


 暇に任せて子猫救助をしていたのか、とジェームズは密やかに笑った。


*


 夕方。

ジェームズとアルバート王子は、救護所から修繕中の船着き場へ移動し、そこで合流したオリヴァーを馬車に乗せて、再び救護所へジャックを迎えに行った。


 帰りの馬車の中で、ジャックは少し難しい顔をして誰ともなしに尋ねた。


「俺、泊まり込んで治癒術かけ続けてた方がいいっすかね?」


 さすがのジェームズも少し驚いてしまう。


「来たばかりでいきなりですか?」


 そしてアルバート王子が続けて言った。


「魔力を使い過ぎてお前が倒れたらヤダよ」


「まあ、ジャックの気持ちはわかるよ。

僕ももう一晩くらい泊まり仕事しても良かったかなって」


 仕事中毒なことを言うオリヴァーに、アルバート王子は目を向けた。


「どっちも駄目だ。今日はジャックの歓迎会するんだから!」


「「あ、そっか」」


 オリヴァーとジャックが唱和した。


*


 こうして、ジャックも正式に救援活動に加わり、領内の治療体制は少しずつ整っていった。


(続く)

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