第二話
人混みを抜け出して、私たちは神社の裏手にある小さな高台へと向かった。
ここは子供の頃、よく二人で秘密基地にしていた場所。今では誰も来ない、私たちだけの特等席だ。
心地いい夜風が吹いて、浴衣の裾を揺らす。
「ふぅ……涼しい。やっぱりここは穴場だね」
「そうだね」
ぽつりと返事をして、私は隣に座る葵を盗み見た。
横顔を見つめていると、不意に葵がこちらを振り向く。目が合って、心臓が跳ねた。
「……何? さっきから変だよ、凛。私の顔に何か付いてる?」
「付いてない、けど……」
もう、誤魔化しきれない。
ドクドクと高鳴る鼓動を抑えつけながら、私は胸に溜まっていた言葉を、夜風にのせるように吐き出した。
「あのね、葵。今日の浴衣、すごく……綺麗。いつもと違って、その、ドキドキする」
言っちゃった。
恥ずかしさで爆発しそうになり、私は両手で顔を覆った。穴があったら入りたい。幼馴染に何を告白しているんだ、私は。
静寂が二人を包む。嫌われたかな、と不安が押し寄せたその時。
「……ずるい」
蚊の鳴くような声が聞こえて、私は恐る恐る隙間から葵を見た。
そこには、今までに見たこともないくらい真っ赤になって、浴衣の袖で口元を隠す葵の姿があった。
「な、何が……?」
「凛だけずるいって言ったの。私だって……今日の凛の浴衣、可愛いと思ってたし。浴衣のせいじゃなくて、その、凛だからドキドキしてるのに……」
「え――」
葵の言葉の意味を脳が理解した瞬間、ドォン、と大きな音が響いた。




