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第7話 どこだって一緒でしょ

第7話 どこだって一緒でしょ




転校の話


リョウコは、チョウタが前いたケイ中学校に転校する。





チョウタ、まわしを貸し出すよ。


校則、いいよ。


大丈夫、坊主もしないでいいよ。


転校するんだから





こんなこと言われていた。





リョウコ、トモミは正座のまま、ゆるり。




「楽にしてって」僕


「いいよ」


「いや、崩してよ」僕


「いいの」




思い出した。ケイ中は、たしか三回。




あれ、三回言っても崩さない。




「私は座るとき正座が好きなの」二人とも言う。




「美容にいいから正座する。」背筋が伸びている。




僕がケイ中にいたころのルールをここで言おうと思ったけどやめた。


好きならいいか。




「なんで相撲見るとき、女子は裸足?」僕は勢いで聞いた。


「なんとなく」トモミ


「そりゃー、男子がんばってるし」リョウコ


「相撲のときは私たちも裸足ね」リョウコはまっすぐいう。




「ケイ中もそうだよ。裸足」


経験者のふりして言うけど、女子のことだ。


でも、ここエス中とは、圧が違う。ケイ中を思い出す。




仕込まれるとは言わなかった。


ここでは、、、場違い。





少し間。




「昼さ、話しかけにくかった?大会んとき」チョウタは急ぎ足で聞く。


相撲大会の昼ごはん時、まわし一丁。




「そりゃね、あんな裸が近くに来たら一歩引くよ」


トモミが笑う。


「そりゃ、目の前で見たらね」。




「あんた、かまわず話してたくせに」リョウコがトモミに言った。




「よそ見渡したら、女子でも男子に交じってた子いるじゃん。囲まれて。」


「好きなんじゃない、そういう子もいる」


「私は、服着てないとダメ。せめてバスタオル」リョウコが言う。






「女子みんな、正座? 礼は?」


「おじさんばかり土俵の近くで見てた。なんで?」


次々疑問をぶつける。




「そんなもんでしょ」


「普通でしょ」 リョウコ、トモミは気にも留めない。





ちがう、何か違ってる。





---------------------


ケイ中に足を踏み入れるリョウコ。


制服はエス中のまま。


カバンも同じ。


隣町だから。




あ、土俵。相撲。




迫力が違う。


一糸乱れぬ四股踏み。




あんなに遠いのに。熱気が。




「リョウコさん、校則を説明しますね」


なんだ、全然ゆるいじゃん。


着る必要、ほんとにない。


短く切った髪。髪先を触る。





仕込みを知らない。




仕込まれる。




教室。


絵にかいたような自己紹介。




なんか、ピシッとしてるな。ここ。


リョウコまで背筋が伸びる。


椅子の背もたれなんかいらない。




「ねえ、チョウタを知ってる?」ユミ


「知ってるよ」


普通の子、見つけた。




チョウタのおかげで、話ができた。


話す。


ここも相撲が盛ん。大会は校内、町内、いろいろ。




「女子は何すんの?」ユミに聞いた。


「仕込みされるよ」さらり、ユミ。


「何?、シコミ」


「しつけみたいなもんよ」




いいもんよ。


きっとね、きっと役に立つ。仕込み。






まだ一年の秋。仕込みもまだまだ。





----------------


相変わらずの、女子。


座る、立つ、礼、




きらいじゃない、こんなの。


リョウコ




「へー。ふつう、ぶっ壊れちゃうよ。この学校来たら」トシがしたり顔で言う。演技みたい。


「どゆこと」リョウコ


「礼して、はだしで、ビシバシだろ?」


「別に、なにも」リョウコ。ニコッ。笑顔がわざとらしい。




あくびして背伸びするリョウコ。


ユミは微笑む。


「リョウコは大丈夫そう。よかった」


なんだか、合格をもらった気分。


「二年女子、私らと全然違うよぉ。ビシッーーてしてるから」ユミ




「それより、ここの男子、すげーよ」リョウコ


「ん」


「チョウタここにいたのかぁ」リョウコ


四股踏みの音がする。毎日毎日。ずっと。





「男子、坊主よね」こっそり


「うん、ここのきまり。どう?」


「最高」ニッ


「でしょー、ぜえったい坊主よね」




当然、当然、・・・。ユミ





----------


「仕込みかあ」ユミ


「しつけどころじゃないね。めっちゃ怖い」リョウコが白目に。


「一年どうしの時は気を抜かないとね」


「持たないね」




キノウ



シコミ



キツすぎて




ああああーっ、昨日の二年生め!


ぐうううう 




唇をかむ 二人。 




朝から晩まで四股踏んでたほうがマジだぅゎー


と言えるわけない。




昨日のことは忘れよう。




------------


トシとデン。




「でかいっていいよな。一年で最強」デンはいつも言われる。




「ごふっ」デン




グラウンド。みんなまわし。




二時間稽古。




長い。休憩。Tシャツをかぶって、バスタオルを腰に巻く。




あちこち日陰で、各々過ごす。




女子と話す。バスタオル大事。




「転校生?」トシがユミに聞く。


「そうよ」リョウコはユミの影に。




Tシャツバスタオル。大丈夫。




「リョウコさん、、、です。」ユミ


「リョウコです。」




トシが親しげに話しかける。大きなデン。


デン、うろうろ。退屈。Tシャツに手をかけ脱ぐ。


その拍子にバスタオルがはらり。


まわしはしっかり締めてる。


「わーわっとと」


トシが、デンを物陰に連れていく。




「ごぉふ」




時間。稽古開始。ユミは二人にお辞儀。おくれてリョウコも。





「練習のこと稽古って言うのね」リョウコ


「そうよ。古いでしょ」


「けいこ、いいね」




スタスタ


しずしず




「バスタオルみんな地味ね」ユミ


「派手なの持ってこようか」


「なにに使うの?まさか」


 ・・・


「保育実習よ、何考えたん?」




---------




二年のキッコ、トウコ 


授業中、


やらかす、叱られ。




立って話を聞く。


棒みたいに。




-----------


教室にはデンの机、いす。何も入っていない机。


くしゃくしゃのティッシュひとつ。


落書きはない。さらの机。




大柄な男子。もちろん丸刈り。




食事のとき来るデン。


食べる。たまにトシがしゃべりかける。


おかずの小さな破片が落ちる。トシがしゃがむ。




廊下は誰もいない。一斉にみんな食べている。




「あいつ、いいじゃん」リョウコ


「トシのこと?」ユミ




「トシも仕込まれてんの?」リョウコ。わざと言う。


「ちがうよー、もう」




満足そうに笑い、食べ終わるデン。




デンが廊下に。2階に行く。


教室が広くなった。





いい天気。洗濯もの畳みたい。




-------------------




今日は、ちょっと離れたい。


デンに張り付きもきついな。トシは時々思う。


デンのことはほっとけないけど、たまには。


ユミもやさしいし、今日はユミがデンを。




四股を踏みながらトシはデンを見る。四股踏んでないデン。


歩き出すデン。誰かが止める。




一年は四股踏みが多い。




ホイホイ任せたよーみんなって感じのトシ。四股踏みを続ける。




トシの時間




---------------------




窓から手を振る女子。


「あ、ビバリさんだ」ユミ


「だれ?」リョウコ


「二年の、めーっちゃ賢い人。100点ばかり」


「へー」


「三階」


「あの窓もっと開ければいいのに」


「あそこ、ちょっとしかあかないんだよね」




手を振ってるビバリ。三階、明るい教室。


ビバリは、二年アコの教室にもいく。


三階。


教室に机が六席。


ちょっと天板が広い机。




ビバリは教科書と洋書。




廊下では泣き出す声。壁をドンドン。




「そういえば、ビバリさんって」リョウコ、一年生


「知ってるの」


「セーター編むのうまいんだってね」


「そうよ。プロ並み」


「で、あそこ二年何組っていうの?」


リョウコの問いにユミ


「うーん。1から9じゃないんだよね。10以上」苦しいユミ。にこっ。




「三階ね」リョウコは深追いしない。




ビバリが下りてくる。先輩って顔をしない。


ユミに話しかけ、リョウコのもとに。


名前はもちろん、リョウコのこと、エス中のこと。何でも知ってた。




「すごいですね。何でも知ってますね。エス中のことも」リョウコ




三階かぁ。




うろこ雲。


----------------------------




「キッコ、手際いいじゃん」トウコ二年


 


食べたいなぁって顔してる。




おでこを丸っと出したビバリ二年。前髪なし。




二年生、エプロン三枚。ふわ。




芋、サツマイモ




キッコが笑う、トウコも。


「ビバリ、もう綺麗よ、台拭きやめよ、ね」トウコの声




学年とっぱらいの活動。いい。


「リョウコちゃん、こっち」トウコが誘う。




「今日は仕込みじゃないぞぉ」キッコ




ユミとリョウコはびりっとする。


一年生、二人のエプロンの揺れが止まる。


棒みたいになる。




「キッコ、この前はやりすぎ」トウコがキッコを詰める。




「リラックス×3」


「三回言ったよ」




トウコの声で楽になる。




「ホックホク 食べよ、ね」トウコ




うわー、わー、やー




五枚のエプロンが揺れる。




甘いにおい。




「ビバリ、台ふきはもういいよ、ほい」




-----


チョウタ


相撲、丸刈り強制のケイ中からエス中に


一年生の一学期に転校した。





「チョウタ、坊主」


「なんか伸びてきてんな」




うるさい。


僕は、坊主、アッ、もうどうでもいい。




また相撲、子ども相撲、どっかでやってないかな。




僕、まわし持ってる。コーチでもしようか、小学生の。


……いや、指導者? あるわけない。あるかも。いや、まて、大人がすることだ。




おっ、小屋。中はどんな


何もない。箱ばかり。着替えてないか?




ああ、ここにも神社。


屋根付きの土俵――ではない。ただの屋根だ。




もう、チョウタはそんな風にしか世界が見えない。


多く、多く、動く


そんな人、チョウタ。




中一の最初、ケイ中学校で受けた刺激が、膜のように全身を覆っている。


いつまでも、はがれない。




「昨日、チョウタ、学校に来てたってよ」


「見たよ。髪、伸びてたね。坊主でいいのに」


「坊主っぽかったけどな」


「エス中は髪伸ばせるからヤダァ」




「何しに来てたの、あいつ」


「稽古してるのを、じーっと見てたって」


「……何それ。ストーカー?」


「違うよ、プッ」




さざなみのような、小さな話題。




テレビの前のチョウタ。


ニュースに映る、神社の子ども奉納相撲。


――録画しておけばよかった。




特集、中学生全校相撲大会。


――これ、もうプロじゃん。こっちは興味ない。


リモコン、OFF。




基準を整理する。


大相撲、NG。


大学相撲部、NG。


草相撲、OK。


自衛隊の相撲、OK。


中学校行事の相撲、OK。


神社の子ども相撲、OK。  ひゃほー。




あ。




馬鹿らしい。




テレビを消す。


コンセントを抜いて、プラグをポッと放り投げた。




散歩。


茂み、湿った土。


裸足になってみようかな。




電車。


車窓に見える社殿。あそこに土俵はあるだろうか。




ジワジワ、ゾワ。




僕、おかしいのかな。




まわりを見渡す。


そりゃあ、毎日毎日。


相撲、坊主、バリカン、まわし。


アホか、僕は。




ケイ中に戻れば治る。たぶん。


戻れない。




チラシ。


『ビューティーサロン・なんとか』


ここ、丸刈りにできるのかな。


メニューは、どれどれ。




いかん、いかん。


僕、おかしい。




自分の髪に触れる。


耳の周りは、少し短い。整えた。


毛先の方はまだ、あの「坊主」だった時の名残だ。


ああ、この先っぽの髪。




こういうとき、あの証明写真。


おおーぼうずー。




ふー、ふぅっ、はー。




僕は今、何かの入口にいる。





-----


一年一組




デンはいつもどこいんの?


きれいな机




「二階」 低い声




「二階なのね。どこの棟?」、広角上がるリョウコ、ゆっくり聞く。




リョウコとデン




食事終わり。きれいにペロリ。




「二階に行く」ゆっくり立ち上がるデン。




「ビバリさんの下の階よ。」ユミ


あそこか。二階。


窓空くのかな。






二年一組




ビバリ。


トウコたちと数学をバリバリやってる。


「ちょっと、ここおしえてよ。ねえ、ビバリ」


「あー、もうちょっとゆっくりおしえてよ。ビバリ」


「ビバリ、できすぎ」




チャイム


 片付けるビバリ。プーって教室を出る。おでこが体を引っ張る。




「三階に行くのね」


「ビバリさんいつからあの教室に行ってたっけ?」


「ずっと前からじゃ」


「国語はあっちらしいよ、習うの」




あ、お便り忘れてる。




トトト


戻って来た。はい、これ


「ありがと」




ーーーー


えー、トウコまわし洗ったことあんの?




トウコ、リョウコ




「現役よ。私。おほほ」トウコ、わざとらしい。


「兄ちゃんのを、洗わ サセテ もらって います、時々ね」




「身内はこんなもんよ」いつものトウコにもどる。




「臭いでしょ?」


「最近とりこになった」


「ぶっ なにそれ」




「爪見てよ」


「おー働き者の爪」


「爪、じゃーん」




「こうやってね、カリカリ」




リョウコの顔が歪む




「手は石鹸で綺麗に洗ってます、もう」




「トワのまわし洗ったの」


「まだ」


「ウソ」


きゃー





-----




チョウタ 部屋




髪を指で挟む。


うーん、坊主からの散髪で坊主が本物だよなー。じゃないねー。クソー。




なんでー のばしたー


耳周りだけ切っちゃたぁ


アイツのせい


コイツのせい


おおお


僕のせいか、ああ、


やっぱ、うーん。




座る、グチャ。


体育実技の教科書


うしろ付近をめくる


柔道、剣道、相撲


相撲最後かよ。


小学校の時、高校生からもらった、中学実技教科書引っ張ってくる。


何年か前のもの。


めくる


相撲、柔道、剣道




そうだよな、この順番じゃなきゃ。


このときの優勝者は〇〇中の〜。




おうおう




えーと えっと




最初はまわしの締め方


前垂れのしまい方が微妙だなあ


教科書間違ってないか?




次に、技、は? え?


四股からだろ 基本は四股だよ


四股も載ってるな でも、ちっちゃ


足、上がってんな、この写真。




えー、この写真、スパッツじゃん


邪道 こんなん


スパッツ、アンド、まわしって


おいおーい




先輩の実技教科書


こっちは素肌にまわしの写真、


んん、いいぞ、でも写真古いな。


ないよりましか。編集どこだ?


読めねえや。なんて読むんだこの会社。


鳥みたいな字だな。鳥、鳥居おお。


紙が薄い。


相撲のあとに柔道、剣道って順番。


  ヨシ。これだよこれ。この順番。


で、めくる。


おお、全部、素肌にまわし、いいぞ。




で、この学校、いつから武道だ?


冬? ああ、ふゆ。


北風なんて。エイエイ。


鳥肌さすって-。


雪の中、まわしもいいねぇ。あはは。




たしか剣道って言ったな。土俵に竹刀ってよく聞くよな。


剣道はいいよ。相撲にしろよ。着物みたいなの着れるかよ。あんな紫、あ、黒か




そういえば、武道の調べ学習やってたな。


相撲、空手、柔道、剣道、調べてたな。去年のがまだ貼ってたな。


今は見当たらん。うんうん。




僕が調べるなら、相撲だな。ほいほーい。




じゃない、みんなまわし持ってるから、調べ学習もして、相撲もやろう、よし。うす。




おーい、この学校、相撲しないの?




え、だんだん寒くなるからしないって。




えーやろうよ みんなまわし持ってるしさ。




全員持ってない?


そだね、注文しないのもアリだったね。そうそう。僕、注文したよ。もちろんさ。夏締めたんだよ、いいだろ、ね、ね 見てよ




僕、みんなのまわし買ってあげようか。何本でも。なんなら借金してもいいよ。


ああ、未成年、借金無理か




そこをなんとか、あ、あ





確実に何かの入口。





-----


リョウコ、ユミ 


「お芋おいしかったね」


「あの芋ね、デンたちが作ったって、二階のみんなで」


「へー、そこ?」


ちっちゃな畑を指さす。




とおりかかったデン


「デン」リョウコの声


ちょっと、お芋のこと、


「ありがと、デン」






「この学校、刺激が強いーーって思ったけど」


「うん」


「そんなん、たいしたことない」


「そうよね」


「裸足だって、エス中もあったし、正座なんて、好きでしてるし」


「相撲のしきたりも似てるし、こっちは年中やってるけど ぎゅ、ぷっ」




「うん」とうなずくユミ。




さらりとかわすリョウコ。




いつだって、


だれだって




トンネル、暗闇、何のその。






どこだって一緒でしょ。




リョウコ


天高く馬肥ゆる秋




同じ季節の中で

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