002. 教師たちは今年の受験者を吟味するようです
『魔法学園』––––正式名称アーステシア独立魔法学園とは、この大陸において王国、帝国、皇国、聖主国のどの国家にも属しない完全独立の魔法学校である。
厳しい入学試験で知られ、いかに高貴な出であろうと、いかに金銭を積もうと、実力が伴っていなければ決して入学はかなわないとされている。
その創立者は、かつて世界を魔王の脅威から救った勇者パーティ、その中でも多種多様な魔法を扱い最も多くの魔族を滅したとされる『賢者アーステシア』である。
彼は元々魔族の専売特許であった『魔力を使って起こすことのできる現象』を魔法と名付け、そのための方法を魔術として人類に広めたことでも知られている。
もしも彼がいなかったら、人類は魔族への対抗手段を持たず、とっくに滅びたと言われているため、勇者パーティにおいても特に評価の高い人物だ。
そして、彼が魔王を滅ぼしたのち、魔力を操る術が衰退するのを恐れて創立したのが魔法学園だとされている。
ゆえに、ただ魔を極める者のためのここは決してどの勢力にも肩入れせず、ただ人類のためのものでなくてはならない。として『アーステシア独立魔法学園』と名付けられた。
そして現在。今年も魔法学園の入学試験が佳境を迎えようとしていた。
◆
魔力計測と筆記試験が終わった頃。魔法学園にて。
「さて、一次試験である筆記試験まで終わったわけじゃが、二次試験の会場分けのためにお主らの意見を聞かせてもらおうか」
場を取り仕切るのは白髪の男性。現在学園事務長を務めているエルドレインだ。
学園全体を見れば彼以上の立場の者もいるが、癖のある教師陣を束ねたり、入学試験や学校行事などを執り行ったりと実務作業を任せられている苦労人である。
そして、彼の言う通り、魔力計測は0次試験とも言われているが、その目的は足切りだけでなく、教師たちが直接受験生を見て大まかな能力を把握することであった。
「じゃあ、まずは試験会場1のアタシたちからいくかね。アタシたちのとこは、魔力の流れやら練度で突出して優れてるって奴はいなかったよ。まあ、希少属性に目覚めていたり、魔力量に見込みがあったり、今後に期待できそうな奴らはちらほらいたけどね」
エルドレインの言葉にそう答えたのは赤髪の魔女、ローズだ。長年教師を務めており、経験豊富な彼女は試験会場1の責任者を任されていた。
「ほう、詳しく教えたまえ」
「んじゃそれは私が。まず一人目は受験番号72番。鉄属性っていう希少属性保有者の女の子だったね。腰に刀を下げてたし、服装も独特だったから、多分大陸の外から来た子なんじゃないかな。魔力の練度はそこまでだったけど、ちょっとちょっかい出してみたら反応速度が相当だったし、実戦になると化けると思うよ~」
エルドレインに答えたのは軽い口調の女性、ラナだ。彼女もこの学園の教師で、若いながら相当の魔法の使い手である。
彼女はそこまで言い切ると、手元の端末を操作して目当ての映像を選択した。
魔力計測の様子は映像記録の魔道具によって記録されているためだ。
映し出されたのは着物のような服装の黒髪の女性。ラナが何事かを言い、何かを飛ばすと、瞬く間に腰の刀を抜いて切り伏せる様が映っている。
「どう? 瞬間的な身体強化も高水準でできてるし、中々の逸材でしょ」
その後の口論のシーンに行く前に映像を切り替え、ラナは得意げな表情で言った。
それを見て隣に座る眼鏡の男性がため息をついた。
「ちょっかいというにはやりすぎだったように思いますがね。まあいいでしょう。二人目は受験番号10番です。他の会場のデータと比べたところ、恐らく魔力量は今年で一番でしょう。例年と比べても突出して高いと思われます。魔力属性は水でした」
彼はカイン。実直な姿勢で魔術を研究している教師だ。
彼の見せた映像には、少女が宝珠に触れた瞬間部屋一面が青に染まる光景が映っていた。
「おいおい、この光の量、もしかしてエルドレインの爺さんを超えてるんじゃねえか? 今年の新入生候補はバケモンぞろいだなァ」
その映像を見て口を挟んだのはサイモン。シリウスの試験会場を担当していた魔術師だ。
彼の挑発ともとれる発言に対し、エルドレインはあくまで冷静に返す。
「どれだけ魔力量があっても上手く扱えなければ意味がないじゃろう。生かすも殺すもお前ら教師次第というわけじゃ」
同意するようにローズが頷く。
「そうさね。そういう意味ではウチの会場には将来性に期待できる奴らが集まったよ。指導できるのが楽しみだねえ」
「ふむ、では試験会場1はこの辺りでよいな。次はリリィ、お主らの会場はどうだったのか教えてもらえるか?」
「はーい。試験会場2だよ。じゃあ、サイモン、リュカ、任せてもいいかい?」
リリィと呼ばれて返事をしたのはシリウスの計測を担当した背の低い魔術師だった。今はフードを外しており、眩しい金髪と碧眼を晒している。
「ああ。俺らのところも面白ぇ奴らがいたぜ? だが、俺が特に面白ぇと思ったのは122番だな。コイツ、入学前の時点で魔力視まで習得していやがった」
「へ~。今年もいたんだ。最近の受験者はレベルが高いね」
「まあ待てよラナ、それだけじゃねえんだ。コイツは雷の希少属性保有者で、魔力の保有量もトップクラスだ。正直二次試験の相手は俺がしたいくらいだぜ」
「雷! 大当たりじゃん。いいな~。アタシも勇者と同じ属性使いたかったな~」
ラナの言う通り、雷属性とは賢者と共に魔王を打ち倒した勇者と同じ属性である。
勇者もまた魔王討伐の立役者としてのみならず、魔術師としても優秀だったと有名であるため、当然魔法学園でもよく知られていた。それを聞いて、ラナ以外からも感嘆の声がちらほらと上がった。
ざわめきが静まり始めたのを確認し、リュカが報告を続ける。
「……私の方からは110番と111番を推薦しよう。彼女らは双子で、しかも両方が同じ希少属性保有者だ。属性は、本人たち曰く『影』らしい。未発見のものだから検証が必要だろう」
リュカが見せた映像の中には、自身の影を伸ばしたり広げたりする少女が映っていた。
希少属性はシリウスの雷のように過去の人物と同じ性質を持つ者もいれば、この少女たちのように今までにない新たな性質を持つ者もいる。
例えば、この部屋の中でもラナなどは前例のない『煙属性』の希少属性保有者であった。
「え、ガチ? 今年も未発見の新入生候補がいるの? しかも双子? めちゃくちゃ楽しみじゃん。ちゃんと魔術師として生きていけるよう指導してあげないと」
「同感だね、僕たち教師の技量が試されるってもんだよ。あ、あと一人いいかな。まだ属性には覚醒してない子だけど、199番の子が結構魔力の流れが綺麗だったよ。それに魔力視まではできてないみたいだけど、魔力の変化には割と敏感だったかな。二次試験次第では結構上のクラスに入れるかも」
リリィが見せた映像には、黒髪の少年が宝珠に触れ、灰色の光が溢れる様子が映る。
魔力属性に覚醒していなければ、灰色に光るのだ。
世間では成人しても魔力属性に覚醒していなければ落ちこぼれとして扱われるが、この学園では魔力属性に覚醒していなくても入学試験を突破することは可能である。
理由としては、無属性魔法という属性変化させなくとも使用できる魔法もあることと、成人後にも魔力属性に覚醒する可能性があるということが挙げられる。
事実、この学園入学後に属性に覚醒し、現在では学園上位の実力を持つに至った生徒も存在する。
「ふむ。ありがとう。試験会場2はずいぶんと豊作だったようだようじゃな。では次は––––
こうして、教師たちは生徒を吟味する。
二次試験において魔術の実力を測るために。
そして生徒たちは魔法学園の入学試験が厳しい理由となる、洗礼を浴びるのだった。
▼▼教師の名前が多すぎて覚えられないという方用▼▼
エルドレイン:爺さん。会議メンツで一番偉い。実は雑務を任せられまくってる苦労人。
ローズ:婆さん魔女。赤髪。教師歴は長いらしい。
ラナ:若い魔女。煙属性の希少属性保有者。遊び心がある
カイン:真面目な男教師。本人は教師よりも研究者の方が肌に合っていると思ってる。
実はエルドレインに気に入られているらしい。(早く若手にあとを託して引退したいのじゃ……)
サイモン:荒々しい口調の金髪魔術師。自分勝手だが何だかんだ実力は高いので教師陣からの評価は高い。シリウスに目をつけている。戦闘狂
リリィ:背の低い魔女。僕っ娘。実はちょっと偉いらしい。年齢不詳
リュカ:真面目な女魔術師。本人は魔術師というより教師としての自覚の方が強い。
そろそろ結婚したいと思っているらしい。
とりあえず今回までに出てきたキャラはこんな感じです! キャラクター紹介が欲しいという要望があれば別で作ろうかな……
それと……今回も読んでいただきありがとうございます!
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