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504.【番外編】側妃候補

私の名前は、リマリーエ・マ・サザリーナンダ。高等学校二年生。南の公爵家サザリーナンダの五星次女だ。そう、私は、長女ではなく次女。二番手なのだ。さらに、高等学校二年生になって半年以上も経つのに未だに婚約者が決まっていない。その理由は、私が王族王子『C・ザカラン・F・レリ・アール』王太従弟殿下の婚約者候補に名前が挙がっているからだ。


C・ザカラン・F・レリ・アール王太従弟殿下は、昨年末、王家の王女殿下であるクノン・マ・アール王妹殿下と御婚約された。親子ほどの年齢差、クノン王妹殿下は再婚であるにも関わらず、お二人の御婚約は、国民に受け入れられ、祝福された。


それもそのはず、クノン王妹殿下は我が王国の国政に於いてなくてはならないお方なのだ。公上は、王国女性第二位の御位に就き、第一王妃陛下をサポートしているとあるが、実際に国政の中心にいるのはクノン王妹殿下だ。

次世代、ザカラン王太従弟殿下が国王に御即位なされば、クノン王妹殿下は、王国女性第二位の御位を失い、国政に参加出来なくなってしまう。そうなれば、我が王国の国政は成り立たなくなる。クノン王妹殿下を絶対的に支持し、頼りにしている上位貴族たちは将来を憂いていた。クノン王妹殿下がいなければ次世代の国政はどうなってしまうのかと。ところが、クノン王妹殿下はザカラン王太従弟殿下と御婚約なされたのだ。上位貴族達は、歓喜した。次世代も我が王国の国政は安泰だと。


そして、その半年後の今年6の月上層会議後、ザカラン王太従弟殿下と王家の五星第一王女クララ・マ・アール殿下との御婚約が国民発表になった。クノン王妹殿下とクララ第一王女殿下は、叔母と姪っ子なのだが、「王」の妃が、叔母、姪、従姉妹等の親族なのは前例のあることなので何の問題もないらしい。


お異母姉様の時もそうだったと思い出した。次世代の王家王族家系五星がクララ第一王女殿下唯お一人に危機感を覚えた四大公爵家の当主達は、自分達の一族の女性達をクロード国王陛下(当時は王太子殿下)に次々に差し出した。フィアレアラ皇女殿下が隠し子王子様となってくれたので結局はそれらのお話はなくなったが、お父様は、次世代の新しい王家王族家系五星の王子様王女様を得るためにお異母姉様だけでなく私も王家に差し出しただろう。国家のためには、姉妹揃って同じ王の妃になることも親子ほどの年齢差も全く問題ではなく、次世代王家王族家系五星を失うことの方が大問題なのだ。


さらに、王族ならば「王位継承権」を維持しなければならないことなどから、再婚、親族女性が「妃」になるのは長い王国の歴史上避けれないことだったのだ。


なるほど、と思ったのと、やっぱり、と思ったのとの両方だった。


はぁ~〜〜。

深いため息が出てしまう。


だから、クララ第一王女殿下は、ザカラン王太従弟殿下の婚約者になることを諦めなかったのだ。


ザカラン王太従弟殿下の正体は、帝国壱の宮家の五星皇姪皇女フィアレアラ・マティス殿下。彼女には、前世、我が王国の伝説の王女フィオナ・マ・アール殿下であり、双子の兄フェリオ・マ・アール国王陛下だった頃の記憶がある。故にフィアレアラ皇女殿下は、我が王国に戻ってきた。再び国王として我が王国を守るために。前世、己の第一王妃レリーリアラ国母陛下だったクノン王妹殿下を再び己の妃とするために。


フィアレアラ皇女殿下が我が王国に留学していた時、私とクララ第一王女殿下は、フィアレアラ皇女殿下とお付き合いしていた。私とクララ第一王女殿下もフィアレアラ皇女殿下が好きだった。もちろんフィアレアラ皇女殿下とクノン王妹殿下のご関係ならば知っていたが、それは前世のことで、今世は別人で年齢差もあるのだからお二人が前世のようなご関係になることはないと思っていた。…いや、ないといいのにと願っていた。


ところが、私達の期待は、叶わなかった。前世の記憶を受け入れたフィアレアラ皇女殿下は、私達を振り、クノン王妹殿下を選らんだのだ。


そのことを知った時、私もクララ第一王女殿下も悲しみに泣き暮れた。フィアレアラ皇女殿下に振られたクセに、私もクララ第一王女殿下もまだフィアレアラ皇女殿下が好きだったから。

好き。

好きなのだ。

私たちは彼女のことをずっと好きなままなのだ。

その気持ちを抑えられないほどに。


彼女は、ザカラン王子様として我が王国に戻ってきた。複数の妃を迎え、複数の五星を得るために。それは再婚のクノン王妹殿下には出来ないことだ。


ならば、フィアレアラ皇女殿下への恋心を捨てれない私達の思いは一つ。自分がザカラン王子様の妃になることだ。私たちは二人共彼の妃になり、好きな人との間の子どもが欲しい。その子は、彼と国民の望む五星の子となるのだから。


クララ第一王女殿下は、ずっと自分をアピールしていたらしい。私は知らなかったが、クララ第一王女殿下は、フィアレアラ皇女殿下がザカラン王子様として我が王国に戻って来ることを知っていたのだ。そして、いい返事を期待して待つこと四年半。漸くザカラン王子様の第二妃予定の婚約者に内定した。


『第二妃』だ。


『第二妃』なのだ。


王家の五星第一王女殿下ともあろうお方が、『第二妃』なのだ。


つまり、ザカラン王太従弟殿下は、『第一妃』をお迎えにはなられないということだ。


クノン王妹殿下のために。


再婚のクノン王妹殿下は、ザカラン王太従弟殿下のご正妃にはなれない。だから、第一ご正妃の御位を空席にするのだ。それがザカラン王太従弟殿下のクノン王妹殿下への愛の証なのだ。


分かっている。


クノン王妹殿下には敵わないことは承知の上だ。私達は、第二妃だろうが側妃だろうがなんでもいい。自分が好きな人の妃になりたい。


魔力が全てのこの世界で、その頂点に立つお方なのに、押しに弱いことを私は知っている。優しくて、格好良くて、可愛くて、なんでも出来て…。あのお方は、友人達をとても大切に思ってくれる人だ。フィアレアラ皇女殿下としての留学時代も、そして、今のザカラン王太従弟殿下としても、あのお方の回りには人が集まり、笑顔が絶えない。


あのお方ならば、複数の妃を迎えてもみんな大切に扱って下さるはずだ。留学時代、私とクララ第一王女殿下の二人ともを大切な恋人だと思ってくれたように。



私は『側妃』でもいいとお父様に伝えてある。お父様は「分かった」とそうおっしゃった。


フィアレアラ皇女殿下がザカラン王子様として我が王国に来て下さったから我が王国は守られた。そうでなければ、我が王国は侵略国に敗れていた可能性が高い。お父様はその責任を強く感じている。王家王族のお方との御婚約のお話を断るはずがないのだ。


そして…。


年明け、三の月上層会議の後、私は、ザカラン王太従弟殿下の『ご側妃(五星なので第二特別妃)』予定の婚約者に内定した。


クララ第一王女殿下に遅れること九ヶ月。私は、高等学校三年生になっていた。

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