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499.ぼくの侍女が…

ぼくは、新ウェスターナル公爵メアリー・マ・ウェスターナルの長男サダドック・マ・ウェスターナル。


長男…。


『長男』といってもたくさん種類がある。


ぼくは、第二子で四星なので嫡男にはなれない長男だ。ウェスターナル公爵家の嫡子は、ぼくの実姉メリッサ・マ・ウェスターナル。MR五星。


姉上は、昨年、高等学校を卒業し、自領に戻っている。ぼくも高等学校を卒業すれば、分家として独立し、自領を守る予定だ。


自領かぁ~。


はぁ~。


自領が悪いわけでも嫌いなわけでもないが、自領に戻りたくない気持ちがあるのもまた事実だ。


ぼくの一家は元々分家で、ずっと自領にいた。それが本家を継いだ伯父と従兄の失脚でぼくの母上と姉上が本家を継ぐことになった。


ぼくの一家は王都に上った。本家ウェスターナル公爵家の令息となったぼくは、分家だった頃と全く違う華やかな世界に圧倒された。何日も続いた母上と姉上のためのパーティー。出席していた人達はみんな綺羅びやかで眩しかった。ずっと自領で育ったぼくは、もしかして鄙者と思われてしまわないかと不安だったが、そんなことはなかった。親と姉の七光りとは分かっているが、みんなぼくをもてはやし、友人になりたがった。


もちろん、自領にいた頃から友人たちは皆ぼくを特別扱いしていたので、そういう立場だとは心得ている。だが、ぼくは家を継ぐ『嫡男』にはなれないのだからいい気になってはいけないのだ。そして、分家ウェスターナル公爵家の品位を汚してもいけない。姉上のように品行方正で優秀であるように、家を継ぐ姉上の足枷になってはいけないと教えられていた。


故に、母と姉が本家を継ぐことになった理由を聞いた時に驚いたくらいだった。伯父も従兄も馬鹿ではないのかと。


だが、一方で、華やかな世界のトップに君臨すれば、そうなってしまうのも仕方ないのかも知れないとも思ってしまった。従兄は、本家ウェスターナルを継ぐ五星嫡男で、甘やかされて育てられた一人息子だった。そのくらい王都での生活は、質素な自領での生活と全く違う綺羅びやかなものだ。ぼくもずっと王都でいたいと思うほどに。


今年、中等学校三年生になったぼくは身だしなみにも気を遣う。貴族はみんなお洒落だから。


今年からぼくの侍女になった『キメ』は、凄い。彼女は、きょうだいがたくさんいる男爵家の末っ子令嬢として王都で生まれ育った。『キメ』の実家の男爵家は、優秀な王宮侍女をたくさん排出しているお家柄で、彼女も王宮侍女をしていた。

ところが、自領で育ち、王都が不慣れな姉上が母上の爵位を継ぎ、ウェスターナル公爵として王都に戻った時に困ることのないようにと母上が王宮侍女から引き抜いたのだ。


『私、本家メニーオレ男爵家出身ですが、第五子の末子なのです。三星の姉三人、兄一人は高等学校卒なのですが、末子二星四女の私だけ中等学校卒なのです。メアリー様にお話しを頂いてこちらにこさせていただくことにしました。』


自分だけ高等学校に通わせてもらえなかったが、高等学校の学費はとても高いので、父親は五人の子ども全員分の学費を工面することが困難だったことは分かっている。二星では王宮侍女としての出世もない、と『キメ』はそう言っていた。


五人きょうだい。凄いな。上位貴族は、たとえ夫人が二人いたとしても、子どもは二、三人だ。伯爵家以上で四人以上子どものいる家はめったにない。理由はMRが高いほど子どもが授かりにくいことに加え、下の子どもほど低いMRになってしまうからだ。たとえ上の兄姉と同じMRだったとしても弟妹は兄姉よりも魔力量が少なくなる。故に、きょうだいは最小限となってしまうのだ。


ぼくも『キメ』と同じような立場だ。五星嫡子の姉上の足枷とならないように、本家ウェスターナル公爵家の名誉を汚さないように日々精進するだけだ。


ぼくは、ぼくの侍女になった『キメ』に好感を持った。


『キメ』は、流石母上が目を付けた侍女だけあった。メニーオレ男爵家の女性達は、王都のファッション事情に明るい。王都のファッションといえば、リップル伯爵家とメニーオレ男爵家の二大勢力と言われているくらいなのだ。『キメ』の手にかかればぼくは普段の1.5倍くらいイケメンになれた。


いつも通りの学校に行く前の身仕度に『キメ』がいない。今日はおやすみかと残念に思っていたのだが、翌日も『キメ』はいなかった。


「キメは、連休?」


キメがおやすみの時のぼくの侍女は、去年までぼくのメイン侍女をしていた者で、今年からはぼくのサブ侍女だ。彼女に聞いてみる。


「『キメ』様でしたら、侍女A様にお付きになりメアリー様のところにいらっしゃいます。」


「えっ?侍女Aに?何故?」


「侍女A様の後を継ぐメアリー様のメイン侍女となられるためです。『キメ』様は、最初からウェスターナル公爵家ご当主様にお使えするメイン侍女となられるために選ばれたお方ですから。」


それは知っている。母上が姉上のためにキメを王宮侍女から引き抜いたのだと。だが、キメが姉上の侍女になるのは、姉上が母上の後を継ぐウェスターナル公爵として王都に帰って来る時ではなかったのか?キメは、王都の本家専属侍女で、ぼくが王都にいる間はぼくのメイン侍女のはずだ。


はっ、まさか…。


一昨日闇の曜日、急に王宮から呼び出しがあった。キメはぼくの侍女なのに人手不足だからと母上のお手伝いに駆り出された。キメは、その日、ずっと母上に使えていた。


まさか…。


まさか、まさか…。


あの日の夕食の時、母上の髪型がいつもと違っていた。『ああ、キメが母上の髪をセットしたのだろう。流石、キメだ。母上がいつもよりもいい感じに見える。』とぼくはぼくの侍女を誇らしく思っていた。キメはいきなり母上のヘアメイクを任されたのだ、と。


だが、それは、いきなり母上のヘアメイクを任せられるほど母上に気に入られたということだったのだ。


ずどーんと落ち込む。キメが侍女Aのところにいるならば、もうぼくのところには戻って来ないだろう。侍女Aは母上が幼少期から母上に使える母上が最も頼りにして信頼しているベテラン侍女だ。母上は、その侍女Aの後釜としてキメを選らんだのだ。ぼくは母上にキメを取られてしまったのだ。 


「再び私がサダドック様のメイン侍女を任されました。よろしくお願いいたします。」


「ああ…。うん、こちらこそよろしく。」


ぼくが母上に文句言えるはずがない。そして、それ以降、母上に使えるキメを時々見かけたが、母上のメイン侍女になったキメがぼくに話しかけることはなかった。


ぼくは、四星第二子と心得ている。分家ウェスターナルの第二子で独立すれば平民となる立場から、本家ウェスターナル公爵家の令息で、分家ウェスターナルとして準貴族の身分を持って独立することが出来る立場になれただけでもラッキーだったのだ。多くを望んではいけないと分かっている。


が、辛い。


はぁ~。

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