500.婚約発表
昨日の12の月上層定例会議後、ぼくとクノンの婚約が国民発表になった。今日は、学年末終業式なのだが、朝から校門はぼくの登校を待つ人たちでごった返していた。
「御婚約おめでとうございます、ザカラン王太従弟殿下。」
あっちこっちから祝福の声が上がり、たくさんの人たちがぼくの側に来る。普段はぼくに近付く事のない女子生徒たち、他学年の生徒たちに、既に卒業した三年生や、はたまた親たちまでがいる。
クノンは再婚だったので、国民がぼく達の婚約を祝福してくれるのか少し不安には思っていたのだが、それは杞憂だった。王城を出た時から沿道にたくさんの国民が国旗を降って祝福してくれていた。
クノンは、国民から絶対的な人気がある。それは、前世レリーリアラだった時から変わらない。本当に凄い女性だと思う。もし、もう一度生まれ変わったとしても、ぼくは必ず彼女を見つけ出し、ぼくの妃になってもらいたいとそう思う。
だが、待てよ…。ぼくの妃になってもらうためには、生まれ変わった来世の自分にフィオナの父親の呪詛を受け入れてもらう必要があるな…。どうだろうか?来世の自分は、前世のぼくの望みを叶えてくれるだろうか?いや、可能ならば、来世の自分の身体を乗っ取ってでも、彼女を手に入れたい。
…と、そう思って苦笑いしてしまった。だからフィオナはぼくに全てを託して消えたのだと。留学時代、フィアレアラの身体には、フィアレアラ、エリザベート、フィオナの三人分の精神がいた。フィオナがフィアレアラの身体を乗っ取ることは、まぁ、まず不可能だった。フィアレアラにはエリザベートがついていたから。エリザベートに勝てないフィオナは、本体と融合し、自分がフィアレアラとなるしかなかったのだ。
はははっ。ならば、来世はどうしようかな?ぼくはクノンを来世の自分に譲る気はない。フィオナもレリーリアラを来々世の自分に譲る気はないだろう。だったら答えは一つだ。フィオナと手を組み、来世の自分を乗っ取るしかない。エリザベートは反対するだろうが、関係ない。本体が出来るだけ幼いうちに乗っ取るんだ。ぼくとフィオナが手を組めばエリザベートが本体を守ろうとしてもぼくらは勝てるはずだ。ぼくらはぼくらのワガママを貫き通す。誰が相手でも。それが来世の自分自身だったとしても。
『【ちょっと、ザカラン。危険な思考は止めなさい。あなたもフィオナも一人の女性に拘り過ぎよ。】』
それは、マ・アール王家からの遺伝だ。フィオナの父親も、フィアレアラの父親も一人の女性に拘った。元々は、エリザベートの夫、息子からの遺伝子ではないか。エリザベートだって初恋の女性を忘れられないのだ。拘り遺伝子をどうにかする方が難しい。
「おはようございます、ザカラン王太従弟殿下。御婚約おめでとうございます。凄い人でなかなか殿下のお側に辿り着けず、申し訳ありません。」
バッシュを先頭とする男友達たちだ。
「ああ、おはよう。ははっ。大丈夫だよ。まさかこんな風になるとは。流石、ぼくのクノンの人気は凄いな。」
「クノン王妹殿下は、ザカラン王太従弟殿下のご婚約者候補に上がってなかったので意外でした。ですが、国民は大喜びですよ。クノン王妹殿下は我が王国の国政になくてはならないお方ですから。」
ああ、なるほど。昨年いきなり現れた正体不明の王族王子が強い魔力を持つからと王太従弟になったのだ。しかも、王族法により、成人後すぐに国王として即位することが決まってる。ぽっと出王子が即位すれば、それまで国政の中心で王国を支えていたクノンは王国女性第二位を失い、国政に参加出来なくなる。そして、ぽっと出王子の第一王妃となる若い妃が王国女性第一位の御位に就くのだとしたら、国民は国政を不安に思っていても仕方ない。それが一転、再びクノンが国政に参加出来る地位を得たのだから、国民は歓喜して歓迎しているのだ。
「ははっ。ぼくの希望が叶ってよかったよ。クノンにプロポーズを保留にされた時は、目の前が真っ暗になったからね。ぼくは、クノンを妃に迎えるために王太従弟になったのに、そのクノンにプロポーズを断わられてしまったら、ぼくはなんのために王太従弟になったのか分からない。」
「やっぱり、と言っていいのでしょうか?以前、殿下が好きな女性のために王族王子になったとおっしゃってましたから。お相手がクララ第一王女殿下ではないとしたら、クノン王妹殿下か、カルア王女殿下。六歳年下ならばありですけれど…。」
ないから。カルア王女は、まだ初等学校一年生じゃないか。ぼくの視界に入ってない。ちびっ子を好きになるなんてあり得ない。
「第二妃以下ならばちょうどいい年齢差ですし。クノン王妹殿下は、19歳年上で婚姻歴があります。カルア王女殿下の方が濃厚だと予想してました。」
「おい、こら、バッシュ。ぼくは、ロリコンではない。初等学校一年生なんてまだ幼児だ。幼児に興味はない。」
「失礼致しました。」
「本当に失礼だよ。バッシュにクノンの魅力が分からないなんて。」
怒って強い口調になってしまった。
「申し訳ありません。」
青い顔で必死で謝罪するバッシュの背中を叩き、笑い飛ばす。
「あははっ。冗談だよ。謝らなくていい。」
「今更ですが、クノン王妹殿下は、めちゃくちゃお綺麗で魅力的な女性です。」
「そうだろう。ぼくは初めて会った時からそう思っていたんだ。彼女をぼくの婚約者に迎えるのに六年も待ったんだ。」
「ならば、当時の殿下は、クノン王妹殿下にとって自分の息子よりも年下の幼児。王妹殿下は、眼中になかったのでは?」
「…。バッシュ、ぼくは王太従弟だぞ。貴族教育をやり直したいのか?」
「たいへん失礼致しました。お許し下さい。」
土下座して謝るバッシュに、他の男友達たちとドン引きする。
「冗談だよ。ぼくが恥ずかしいから土下座なんてしないでくれ。ぼくが虐めてるみたいじゃないか。」
「申し訳ありません、ザカラン王太従弟殿下。」
「だから、謝るなよ。ぼくがいじめっ子みたいじゃないか。」
誰かが、「プッ」っと吹き出したのをきっかけに男友達みんなで大笑いする。婚約を祝福する言葉も同時に飛び交う。
楽しいな。嬉しいな。ああ、ぼくは、この国の王太従弟になってよかった。ぼくは、やがて国王となり、この国を守る。愛するぼくのクノンと共に。
【完】
長い間お読みいただき、ありがとうございました。
別作品なのに前作を読んでからてないと主人公達の人間関係とエピソードが全く分からなくなってしまっていることを反省しています。
本編は以上で終了となりますが、番外編が数話続きます。その後の主人公がどうなったをお読み下されば嬉しく思います。




