498.クロードの第一王妃 2
「…以上になります。何かご質問がありましたら、挙手をお願い致します。」
しばらく待つ。手は上がらない。良し。やったわ。
「皆様、ご質問等無いようですので、私の報告はこれで終わらせていただきます。」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチ。
会議室に同意の拍手が響き渡る。やった、やったわ。嬉しい。これでザカラン王子様とクノン王女様の御婚約は問題なく国民発表となる。上層会議で支持されたのだから、国民も祝福してくれるはずだ。『おめでとうございます、おめでとうございます』と飛び交う祝福の言葉と拍手にクロード様と顔を見合わせ、お互いに安堵の笑みをこぼす。
私は、国王クロード陛下の第一王妃。王家五星第一王女クララの母親です。今日は、私が第一王妃として立后してから初めて迎える定例上層会議です。そして、初めて、第一王妃として王家王族の婚約を発表する場でした。次期国王となる王太従弟ザカラン王子と退位したランセル国王陛下の元第一王妃王妹クノン王女様との御婚約です。親子ほど年齢の離れたお二人の御婚約でしたが、貴族から反対の声があがることはありませんでした。
はああぁ~〜〜っ。
大きく息を吐きます。10日少し前、お義母上様から『クノンとザカラン王子の婚約を問題なく国民発表出来るような資料を神殿の間会議が始まる前までに作成しなさい。』とのお手紙を受け取った時には、何を準備すればいいのか全く分からず、目の前がまっ暗になりました。
情けない第一王妃で義姉と恥を忍び、クノン王女様御本人に上層会議で発表する資料作成のアドバイスをお願い申し上げた時のことを思い出しました。
………………………
「申し訳ありません、義姉上。母上が義姉上に無理難題を言ってしまいました。このような資料作成なんて誰も出来ませんわ。私自身でさえ、私がザカラン王子の婚約者に一番相応しくない女だと思ってますから。母上には私から文句言っておきますのでお許し下さい。」
クノン王女様はそうおっしゃって私に頭を下げられました。そして、次の上層会議では私の思った通りに言えばいいと言ってくれたのです。もちろん、神殿の間会議でお義母上様がおっしゃっていたことに関しては、すぐに教えて下さいました。流石としか言えません。
…あのお義母上様に文句を言えるところも。
先ずは、称第一王妃の件ですが、第一王妃は、王国女性第一位の御位に就き、国政に参加しなくてはいけません。第一王妃が空席、又は国政に参加出来ない状態ならば、誰を称第一王妃として扱うかは時と場合によるそうなので特に決まってないらしいのです。第二王妃がその御位に就くこともあれば、お義母上様の御代のように国王が女性の場合、前の御代にその御位に就いていた者が第一王妃不在のままその御位に就くこともあります。つまり、『称第一王妃』とは王国女性第一の御位に就く者の別名の一つということなのです。
ザカラン王子様の場合、クノン王女様を『称第一王妃』にするためには、第一王妃をお迎えしなければいいのです。つまり、第一王妃は不在のまま、『第二王妃』『側妃』をお迎えになられるのです。
ならば、そのことは、次の定例上層会議でわざわざ言うことではないのです。ザカラン王子様が国王になられてから、クノン王女様を『称第一王妃』とすると言えばそれが通るからです。もちろん、ザカラン王子様に第一王妃がいないことが条件になり、上層定例会議での賛成が必要にはなりますが、国王陛下のご希望を反対する貴族はいないと言っても過言ではありません。
『側妃』の件も、特に条件はないらしいのです。未婚でも再婚でも年齢制限もないのです。そして、『正妃』も『側妃』も親子きょうだい以外ならばOKらしいのです。特に『側妃』は、単にその地位を与えるためだけに親族等を『側妃』とした例はたくさんあるらしいのです。具体的に言えば、クノン王女様がランセル国王陛下の妃になったのと同じです。年齢が合えば『正妃』になれるのですが、そうまくいかないことの方が多いのです。例えば、王族に男子しか生まれなかった場合、『王位継承権』を維持したくても出来なくなってしまいます。その場合に取られていた対策が離婚、再婚、養子縁組等なのです。『王位継承権』を維持するためには必要なことだったのです。よくよく考えてみれば、貴族も適切な嫡子がいなければ一族から養子などを迎えるのです。叔父や叔母、弟妹が養子となるのは珍しいことではありません。年齢も関係ないのです。
クノン王女様のご説明を聞けば聞くほどにクノン王女様がザカラン王子様の御婚約者になることは何の問題もなく、むしろ喜ばしいことのように思えてきました。
『まさに『ノンマジック』だわ。流石ね。』
クノン王女様のご意見は全て正しく、説得力があり、何の問題もないように納得してしまう。まるで魔法にかけられてしまったようだが、魔法ではない。それは本当に全て正しいと、貴族の間ではいつの間にか『ノンマジック』と言われているのです。もちろんそれはクノン王女様の深い知識からくるご意見だとみんな分かっているからこそで、クノン王女様の信用と信頼がとても厚いからなのです。
私は、クノン王女様のご意見を自分なりにアレンジして上層会議で発表しました。そして、それは、今、盛大な拍手で支持されたのです。
ああ、よかった。本当によかった。
私は、今回の件でよくわかりました。
私には、第一王妃の御位がとてもしんどい地位だということが…。ああ、クノン王女様、早く私の代わりにその御位に就いて下さい。私には荷が重いのです。




