494.ウェスターナル公爵 メアリー 23
本日の神殿の間会議の議題は、王家クノハ前国王陛下の第一王女クノン王妹殿下と王太従弟C・ザカラン・F・レリ・アール殿下との御婚約についてでした。あのお二人の前世の関係を知る私達が反対するはずなく会議は終わるのだと思ってましたが、重要なのはここからでした。
「クノンは再婚だから、ザカラン王子の正妃にはなれないわ。だけど、ザカラン王子の希望でクノンに称第一王妃の称号を与え、第一王妃扱いの特別妃として迎えたいと言っているわ。
前世の私の父上フェリオ・マ・アールもまだ婚約者だった頃のレリーリアラ様に称第一王妃の称号を与えたのよ。レリーリアラ様は結婚する前の学生時代から称第一王妃として少年王の父上を支え、国政に参加していたらしいわ。つまり、実際に第一王妃でなくとも称第一王妃ならば、第一王妃としての扱いが出来る、ということよ。ここにいる皆は、そのことを知っていると思うけれど、定例上層会議を通すためには、根拠となる資料が必要となるから用意させたわ。第一王妃、私が頼んでおいた資料を配りなさい。」
前国王クノハ陛下の無茶振りが始まったのです。
「申し訳ありません、前国王陛下。時間が足りず、まだ資料が作成出来てません。」
第一王妃陛下は立ち上がり、半泣きのお顔で頭をお下げになられました。
「何やってるのよ。クノンならばその程度の資料作成なんてあっという間なのに。まぁ、いいわ。事前上層定例会議までに用意しなさい。
時間がないから次に行くわ。
ノーストキタ公爵家のトーキタ五星の祖となった異母弟レオンの母親は、父上と再婚する直前までノーストキタ公爵だった。それは王家王族史で習うから、上層貴族の嫡子ならば皆知っているはずよ。年齢もね、父上とは親子ほど離れていたのだけど、第二王女クレアレイアだった私は、父上の特別妃エリアノーラ様に全く興味なくて、父上と何歳離れていたのかなんてスルーしてたのよ。エリアノーラ様は、父上の父親エドガーお祖父様の第二妃候補だったし、父上はエリアノーラ様の母親のミューラ大々叔母上様に夫と離婚して自分の妃になって欲しいと言ったらしいわ。
つまりよ、親子どころか祖母孫ほど年齢が離れた再婚も可能だということよ。これも根拠となる資料が必要になると思って用意したわ。第一王妃、私が頼んでおいた資料を配りなさい。」
「申し訳ありません、前国王陛下。時間が足りず、まだ資料が作成出来てません。」
第一王妃陛下は再び立ち上がり、半泣きのお顔で頭をお下げになられました。
「何やってるのよ。まぁ、これは少々時間がかかりそうだから今回はいいわ。事前上層定例会議までに用意しなさい。
時間がないから次に行くわよ。
以上のことから、クノンが称第一王妃としてザカラン王子の婚約者になるのは何の問題もないのだけれどね、かといって国民が二人を祝福するとは限らないわ。ザカラン王子には、次世代の王家王族家系五星の子孫を求められる。クノンは国民の望む子を得ることが出来ないから。故に、クノンはザカラン王子のプロポーズを断るつもりで返事を保留にしたのよ。
その結果、どうなったと思う?ザカラン王子はショックで学校に行かなくなったわ。クノンのお誕生日パーティーさえも途中退出よ。仲直りに一週間もかかったわ。で、漸く、ザカラン王子のプロポーズを受け入れたのが今日の朝よ。クノンがまた自分はザカラン王子の妃に相応しくないなんて言い出さないうちにさっさと二人をくっつける必要があるわ。 で、さっきのエリアノーラ様のお話に戻るのだけどね、私の父上は、なんと、エリアノーラ様の前夫が事故死した直後に彼女を毒牙にかけたらしいわ。その結果、授かったのが異母弟レオンなのだけど、私が言いたいのは、離婚して何日経てば妃に迎えていいのか、よ。規定があるのは知っているけれど、王家王族が再婚するなんてまずないから気にも止めてないのよ。だから、資料を用意させたのよ。第一王妃、私が頼んでおいた資料を配りなさい。」
「申し訳ありません、前国王陛下。時間が足りず、まだ資料が作成出来てません。」
第一王妃陛下は立ち上がり、半泣きのお顔で頭をお下げになられました。
神殿の間会議の連絡が入ったのは、今日の午前中です。司会の南家殿も、前国王クノハ陛下もクノン王妹殿下がザカラン王太従弟殿下のプロポーズを承諾したのは今朝だと先ほどおっしゃっていました。
つまり、前国王クノハ陛下は、僅か数時間でこの会議に必要な資料作成をするようにと第一王妃陛下にお命じになられたのでした。




