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493.ウェスターナル公爵 メアリー 22

「あら?ウェスターナル公爵。前回神殿の間会議みたいに一時間近く遅刻して来るかと思ったら、まぁまぁ早いじゃない。三時間以上あればいくら準備に時間のかかるあなたでも大丈夫ってことね。しかもお化粧変える余裕まであるなんて。いいじゃない。とても素敵ね。」


前国王クノハ陛下にイヤミを言われてしまいました。前回神殿の間会議は、突然過ぎの連絡で時間に間に合いませんでしたが、今回もギリギリのご連絡です。せめて前日までにご連絡くだされば遅刻なんてしませんから、と、言ってしまいたいところですが、言えるわけがありません。お化粧を褒められたと思うことにします。


「前回神殿の間会議では大幅に遅刻してしまい、たいへん申し訳ありませんでした。」


謝罪の言葉を述べるのが正しいのです。


「いいのよ。別にあなたがいてもいなくても同じだから。うちの孫王子とメリッサの慶事に反対する者なんて我が王国にいるはずないもの。」


怖っわ。怖っわ。怖っわ〜い。


クノハ前国王陛下の鋭い眼光と陛下から僅かに感じる深い魔力に畏怖します。


我が嫡子メリッサ…。

何故このお方の孫王子様を好きになったの?母は理解不能です。


「後は、クロード、あなたの第一王妃だけね。いつ来るのかしら?遅いわね。」


「申し訳ありません、母上。一生懸命準備をしているみたいですから、もう少しだけお待ちください。」


国王クロード陛下からの招集命令と聞いていましたが、どうやらクノハ前国王陛下の御命令だったようです。チラリと時計を見ます。私が神殿の間会議室に入ったのが会議開始時間の18分前で、今は15分前です。クノハ前国王陛下の御言葉に早くも会議室はピリピリと緊張した空気に変わりました。私の心臓がバクバク音を立て始めます。


『キメを王宮侍女から引き抜いてよかった~。あの子に寸志をあげてもいいわね…。』


私の正装を任せた息子の侍女キメは、驚くほど早く完璧に着付けしてくれました。一番のキメ手はヘアメイク。私はヘアメイクは時間がかかるのが当たり前だと思ってましたが、キメは超早い上にとても素敵に仕上げてくれたのです。キメのおかげで私は昼食を食べる時間も取れました。キメがいなければ、私も遅刻必須でした。


……………………


第一王妃陛下は、結局、五分遅刻して来られました。申し訳なさそうに遅刻の謝罪をする第一王妃陛下をクノハ前国王陛下は一瞥しただけで何も言いません。明らかに怒っていると分かるその態度に第一王妃陛下はブルブル震え真っ青です。


ですわよね、そうですわよね。分かるわ~。


第一王妃陛下に深く同情します。このお方が義母なんて、このお方の王子様の妃なんて、私ならば怖くて耐えれません。


我が嫡子メリッサ…。

何故このお方の孫王子様を好きになったの?母はあなたの神経が分かりません。



良くない空気を一生懸命どうにかしようと、司会の南家殿は、さっさと会議を開始しました。


本日の神殿の間会議の議題は、王家クノハ前国王陛下の第一王女クノン王妹殿下と王太従弟C・ザカラン・F・レリ・アール殿下との御婚約についてです。次期国王陛下になられるお方の御婚約者が親子ほど年齢の離れた離婚したばかりの元前第一王妃陛下に普通ならば反対の意見もあるかも知れませんが、あのお二人の前世のご関係を知る私達が反対するはずありません。


「両殿下のご両親、後見人であられます前国王ご夫妻のご報告によりますと、王太従弟C・ザカラン・F・レリ・アール殿下のプロポーズを第一王女クノン王妹殿下は本日の朝承諾したそうです。

クノン王妹殿下のご両親はもちろん、殿下の実兄国王陛下ご夫妻、クノン王妹殿下の後見人北家殿、C・ザカラン・F・レリ・アール殿下の後見人東家殿は既にお二人の御婚約をお認めになられ、祝福されております。僭越ながら司会の私も、会議前に皆様にお祝いの言葉を贈らせていただきました。」


『それって私一人がまだなだけや〜ん。反対の意見なんて言えるわけないや〜ん。もちろん反対なんて致しませんが。』と言いたいところですが、当然、言えるわけないのです。

全員の視線が私に向けられました。私が立ち上がり、皆様にお祝いの言葉を贈ると会議室は拍手で溢れました。


会議なんて形だけなのです。

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