491.ウェスターナル公爵メアリー 20
「メアリー様、王宮から緊急連絡が入りました。本日13時に神殿の間会議室に来るようにとのクロード国王陛下の御命令です。」
「えっ?13時?後三時間半しかないなんて、ギリギリだわ…。」
休日闇の曜日の午前中、久しぶりに特に予定なくのんびりしていました。もちろん仕事ならばたくさんあるのですが、超超超久しぶりのお休みなのです。今日だけは特別、と侍女たちを下がらせ、自室に閉じこもり、ゴロゴロベッドに寝転がっていました。
ああ、こんな休日はいつ以来でしょうか…。思えば、お異母兄様の爵位を継いでからはとても忙しい毎日…。
二番手だからと、自由に遊んで過ごしていたことをとても後悔しました。特に勉強なんてしなくても上位の成績が取れた私は、必死に努力なんてしなかったのです。故に、学生時代の勉強なんて頭の中から綺麗にすっ飛んでますし、国の国防を担当するウェスターナル公爵家の令嬢だったクセに、刀剣、武具に無頓着、興味なく、爵位を継ぐことになってから慌てて知識を叩き込むことになりました。が、まだまだ不十分。休む暇なく覚えないといけないことがたくさんあります。
『ああ、早くメリッサに爵位を譲り隠居したい。』と、本気でそう思ってます。
我がウェスターナル公爵家を継ぐ私の五星嫡子メリッサ。勉強も運動も特に努力をしなくても何でも簡単に出来た私にそっくりで幼い頃からとても優秀でした。二番手だから努力しても無駄だといい加減で適当だった私と違い、父親譲りの真っ直ぐ生真面目で素直な性格のあの子は、分家ウェスターナルの嫡子として二歳の頃からお父様と一緒に自領を回っていました。下の息子サダドックの妊娠と子育てを理由にのんびり過ごしていた私に代わり、お父様と一緒に我がウェスターナルを守っていたのです。
異母兄の失態で、突然爵位を継ぐことになった私は、今までの異母兄、父、メリッサに任せっぱなしのぐうたら人生に終止符を打ち、異母兄から引き継いだ爵位をメリッサに譲るまで頑張らなくては、と、思ってはいるのですが、たまには…、本当に、たま〜にはぐうたら息抜きしてもいいわよね、とベッドでゴロゴロと転がっていたそんな矢先の呼び出しでした。
「ああああ〜。はぁああ~〜。」
残念過ぎて深いため息が出ます。
「急いで侍女Aを呼んでちょうだい。身を清め、正装しなくては。」
私の侍女Aは、幼少の頃から常に私の側にいて母親のように信頼するベテラン侍女です。
「侍女A様でしたら、本日はお休みで実家にお戻りになられております。」
…そうでしたわ。今日は久しぶりに何も用がないからと侍女Aに休暇を与えたことを思い出しました。そして、はっ、と気付きます。私は、侍女Bにも休暇を与えていたことを。さらに私の三人目のお気に入り侍女Cは、王都に不慣れなメリッサが困らないようにとメリッサ付きの侍女に任命したために、メリッサと共に自領に戻っているのです。
「ならば、侍女DとEを呼んでちょうだい。後は、誰か役に立ちそうな侍女がいるかしら?」
「本日は、休日闇の曜日で、元々人が少ない上に、メアリー様が仕える者達の多くに休暇をお与えになられましたから…。旦那様や、サダドック様の侍女でもよろしいのであれば、声をかけてみます。」
「誰でもいいわ。急いで。夫やサダドックに侍女なんていなくてもいいから私を優先しなさい。」
私の秘書は、慌てて走って行きました。そして連れてきた侍女は、たったの二人。
「メアリー様、今年からサダドック様にお仕えすることになりました新人侍女でも大丈夫でしょうか?」
「…新人。」
新人に任せるのはイマイチ不安ですが、そんなことはいってられません。うちで雇う侍女ならば、身元のしっかりした侍女のはずです。
「誰でもいいと言ったわ。間に合わなくなるから急ぎ侍女達を集めなさい。」
「全員です。」
「…。」
…マジですか?




