481.エリザベートとクノハ 2
ク:エリザベスお祖母様。ザカラン王子の様子がおかしいのです。今日のクノンのお誕生日パーティーの時、途中退出したのが気になり確かめたところ、どうやら昨日は学校を欠席し、一昨日は早退したらしいのです。
エ:ああー。ええ、そうね…。
ク:何があったのですか?
…まぁ、だいたいの予想ならばつきますが。
エ:そうね…。
ク:クノンのせいですね?
クノンがザカラン王子を拒否した…とか?ですか?
エ:…。
ク:ザカラン王子が…、父上が落ち込む理由なんてそれしかありません。レリーリアラ様がお側にいてこその父母上でしたから。
エ:そうね…。
ク:私は、クノンとソウルが苦しむ姿を見てきました。なのに、何の権限のない王族五星の私は、娘と孫の力になれず、何も出来なかった母親で祖母でした。漸くランセルの呪縛から解放されたのです。娘と孫にはこれから幸せになってもらいたい。孫はお付き合いしていたメリッサとの婚約が成立し、後は結婚式をあげるだけ。ほっとしていました。そして、娘は、フィアレアラ皇女様とお付き合いしているのです。当然ザカラン王子とも上手くいっていると思ってましたが、違うのですか?
エ:レリーリアラちゃんの気持ちを私に聞かれても…。責任感の強い子だから、自分はザカランの妃に相応しくないって思っているのではないかしら?さっき、クレアが言ってたじゃない、第一王子が四星なことに責任を感じていたのでしょ?前世、レリーリアラちゃんの時も、ちょうどイーデアルに五星がいなくなった時だったから、五星の子を得ることに使命感を持っていたわ。
ク:…。
エ:王家王族五星の配偶者ならば、五星の子を得ることを求められるのは仕方ないことよ。未来の国の運命に関わることだから。でもそれは一人で背負ってはいけないのよ。フィオナの母親のようにね。そのために二人以上配偶者を得ることが認められているのだから。私の父上なんて10人以上妃がいたわ。
ク:はい。旧帝国皇族家系五星の子を得ることが如何に難しいか、今世は身に沁みて実感しましたわ。ランセルも息子もたくさん妃を娶りましたが、結局、クララ一人。よく考えてみれば、前世クレアだった頃も、きょうだいはたくさんいましたが、王位継承権のある旧帝国皇族家系五星は私とアリア異母姉上だけでした。
エ:五星の子を産めないからって気にする必要なんてないのよ。第二子以下ならば五星の子を得ること自体難しいから。だからザカランの側で精神的支えになってくれたらいいのだけど、レリーリアラちゃんはそれが辛いのだと思われるわ。
クレアも知ってるでしょ?フィオナが魔力暴走したことを。まだ初等学校一年生だったアリアが必死でフィオナの魔力暴走を止めたあの事件よ。あの時も、レリーリアラちゃんはね、フィオナに『子を得ることを出来ない自分のところに通っても無駄だから、他の妃のところに通えばいい。自分は用済みだと思ってる。』なんて言ったのよ。
フィオナが妃達のところに通うのは、子を得ることが目的ではないわ。妃達を愛していたからよ。自分の出生の秘密を知ったフィオナは孤独だったわ。自分は生まれてきてはいけない最悪の五星王女だったってね。その孤独感を癒やすために妃達のところに通っていたのよ。妃達が自分を愛してくれることでフィオナは満たされていたのよ。
特にレリーリアラちゃんに対しては特別な感情を持っていたわ。命を賭して自分を産んでくれた母親に対する尊敬と畏敬、憧憬、その他全てを母方従妹であるレリーリアラちゃんに向けていたのよ。
なのに、レリーリアラちゃんに本気でそう思っているなんて言われてしまったフィオナは暴走したわ。『捨てられた』と思ったのよ。レリーリアラちゃんと母方実家のイーデアルにね。
フィオナがフィオナでいられるのは、レリーリアラちゃんに愛されているからこそなのよ。レリーリアラちゃんに捨てられれば、フィオナはフィオナでいられなくなる。自分は生まれてはいけない子どもだったってね。母親と兄を殺して生まれてきたから父親に呪詛をかけられた。母方実家のイーデアルにも顔向け出来ないってね。
そして、それはフィアレアラも同じなのよ。あの子はフィオナだから。フィオナだから王国に帰ってきたのよ。レリーリアラちゃんがいる王国にね。なのにそのレリーリアラちゃんに拒否されたら、フィアレアラは、ザカラン王子でいられなくなる。ザカラン王子なんて要らないと思ってしまう。
レリーリアラちゃんは何故それが分からないのかしら?不思議だわ。
ク:…私が母親としてクノンに注意すべきでしょうか?迷う必要はない、ザカラン王子の妃となり、我が王国の未来を支えろ、と。
エ:…なんとなく、違う気がするわ。
ク:自分で言っておきながら私もですわ。ですが、何かしら娘に注意というか、アドバイスを、とは思います。今のままでは、ザカラン王子とクノンにとってよくありませんから。
とはいえ、クレアの記憶を取り戻してからは、娘のクノンがレリーリアラ様に見えて仕方ないのです。一生懸命間違えないように気をつけてますが、気付けば娘を『レリーリアラ様』と呼んでしまってます。娘に『母上』と呼ばれてハッっとするくらいなのですわ。間違えたわ、『クノン』だったと。母親としてアドバイスしたくても、レリーリアラ様にクレアの私がアドバイスなんて出来ないのですわ。
エ:分かるわー。だって、クレアって自分の興味のあることだけに夢中になるタイプだったじゃない。他のことは全部スルー。なのに、そのクレアがレリーリアラちゃんにアドバイスなんて。アリアがいたらひっくり返ってびっくりするわよ。ふふふっ。想像したら笑えるわ。あははっ。あははっ。笑った、笑った、笑えたわ。あははっ。
ク:…。そんなに笑わなくても…。(今世の私はクノンの母親ですけれど…。)




