40.傍系王族王女クララ 5
「ええっ?」
まさか、お祖母様は、私に呪詛をかけるつもりなのだろうか?
「…しないわよ。でもね、一瞬本気でそう思ったわ。だけど、クノン第一王妃陛下に絶対にダメだと言われたわ。前世のね、レリーリアラ様はフィオナ父母上が呪詛に苦しむ姿を一番近くで見てきた人だから。それに、私も無理だわ。可愛い孫に呪詛なんて私には出来ないわ。」
「良かった~。」
「だけど、将来に関してはかなりの危機感を持っているわ。あなたが王家系五星の子を得るチャンスは第一子のみよ。第一子が四星や家系の違う五星ならば、我が国は終わりなのよ。」
「…はい。」
「もうすぐ中等学校になるからそろそろ婚約者も考えないといけないわね。相手が五星ならば男性側の家系五星になりやすいし、四星ならば第一子が四星になってしまう可能性がある。とても難しいわ。はぁ~、本当にどうしたらいいのか分からないわ。
私の前世は五星第二王女『クレアレイア』だったけど、あの頃の父上や異母姉上がよく言ってくれていたのよ。『クレア、あなたがいてくれるから将来を安心出来る』ってね。私は王位を継ぐ王女ではなく二番目で半分無駄な存在だと思っていたけれど、今、痛感しているわ。次の世代があなただけなんて、恐ろしいわ。本当に安心感が全く違うわ。」
「父上がもう一人妃をお迎えになるとか、ランセル陛下がもう一人妃をお迎えになられるとか出来ないのですか?」
「我が国の四星女性の数はそれほど多くないし、各公爵家にも五星が多くいるわ。国王でも基本的に妃は二人まで。なのにもう一人側妃は厳しいわ。息子もね、王族なのに側妃は、厳しいのよ。ランセル陛下の異母妹王女が王家から離れたから第二妃をランセル陛下が許可してくれたけれどね、基本的にはね、王族男性の妃は一人なのよ。ランセル陛下も息子も五星が全くいないならば可能だけど、第二王子が王家系五星になっているのとあなたがいるわ。降嫁したレティーリア王女のお腹の子供もまだ生まれてないから家系の発表もされていない。
四星女性は、婚約も結婚も早いから、未婚の四星女性で婚約者がいない者なんて中等学校以下の子供だけよ。10代後半の若い未婚女性の婚約を無理矢理解消させて妃にしてもね、30歳を過ぎると五星は授かる確率が下がるのよ。
経験測だけど、20歳前後ならばほぼ100%、25歳前後で50%、30歳前後は20%、35歳以上ならば10%くらいらしいのよ。被ったら0%よ。
もちろん20歳前後のほぼ100%は第一子だから。第一子は被らない限りほぼ100%五星。…でもね、クノン陛下のように気を付けていても被るのよ。帝国にも同じ家系五星がいるのよ。被らないようにすることは難しいのよ。
クレアの父親は五人の妃と七人の子供がいて、五星は四人いたけど、父上が28歳の時の四星末弟が最後の子よ。クレアの父親は、五星が生まれてくるように超拘って、結局、実質は異母姉上と私の二人よ。異母妹五星は、母親も五星で帝国の帝位を継ぐ子だったし、異母弟五星は母親も旧帝国皇族家系五星なのに両親と家系の違うトーキタ王族家系五星だったから。
ランセル陛下が新しく妃を迎えてもたぶん四星ね。息子も同じよ。しかも、新しい妃を迎えるためには、イーデアル公爵家に降嫁した異母妹王女の子供の家系が王家系五星ではないと発表になり、第二王子の家系も本当の家系を明らかにしないといけないわ。時間が必要よ。
その間に息子は35歳を越えてしまう。35歳以上は10%以下の確率っていうけれどね、その10%には、両親共に五星の場合も、家系の違う五星も含まれるのよ。超運よく五星を授かるなんて無理だわ。」
「はい。」
「後悔してもね、仕方ないけれど、もっと危機感を持たないといけなかったのよ。
雑談は終わりね。あなたは強い五星にならないといけないわ。自分が一番強いことを証明するのよ。ランセル陛下よりもね。魔力量では負けてしまうから、技術力でランセル陛下に勝つのよ。勝ってあなたは、王太姪になるのよ。あなたしかいないことを貴族や国民に示す必要があるわ。」
「私に出来るのですか?自信がないです。」
「出来る、出来ない、ではなく、やらないといけないのよ。あなたが最後なのだから。」
「はい。お祖母様。」
「『幹』は、分かるわね?」
「はい。お祖母様。」
「『幹』を感じなさい。まずは、そこからよ。」
「『幹』を掴まれてずきずき痛い感覚がまだ残っています。」
「…。
本当に強引な指導よね。最長でも1ヶ月もないから仕方ないけど。クレアレイアだった私でもヤバいって思ったわ。私の魔法の先生がフィオナ父母上でなくて良かったって。」
「…。」
私は、とてもつらいです。お祖母様。でも危機感ならば分かりましたから頑張ります。逃げることは出来ないことも分かってますから。
そして、お祖母様に魔力が空々になるまで指導された。寝るだけだからと。これから毎日寝る前に空々になるまで練習だ。
「明日からは、もう少し遅い時間の方がいいわね。今日は私が清浄魔法かけてあげるけれど、明日からは、お風呂とか、翌日の準備をしてからの方がいいわね。今は、学年末休みだけど、学校が始まったら、学校の準備もあるし、家庭教師や剣術の時間のこともあるわ。クノン第一王妃陛下と相談して、新学期からの予定を組み直すわ。」
お祖母様がそう言っていたが、私は、魔力切れで朦朧としていた。