41.王族クノハ 6
「「おはようございます。フィアレアラ皇女殿下。」」
孫を連れて、フィアレアラ皇女殿下のところで魔法の授業。二回目だ。最初の一時間は、幻影のエリザベスお祖母様とフィオナ父母上が孫に魔法指導して下さることになっている。残りの一時間半を私とフィアレアラ皇女殿下の二人で孫に魔法の指導をする予定だ。
フィアレアラ皇女殿下の魔法の勉強の時間なのに申し訳ないが、殿下は私の父上だからと、甘えることにした。
「おはようございます。クノハ先生。クララ王姪殿下。」
挨拶を交わし、早速魔法の練習開始だ。孫は、幻影のお二人にお任せし、私は、殿下と雑談する。見た目は普通の子供。新学期から初等学校二年生だが、身長は同学年の子供よりも少し高いみたいに思う。父上の子供や孫たち、つまりクレアのきょうだい、帝国の異母妹エリザベートも含めて、甥、姪達、みんなデカかった。あっ、一人だけ父親そっくりのミニマムな甥っ子がいたわ。サーンバンメ公爵家は、今でもミニマムな家系なのかしら?王家、王族は、今でも平均的に皆デカい。クノハの私もデカい。帝国の皇族も同じなのだろうか?殿下の父親は旧帝国皇族家系五星。つまり、私の父上の子孫だから、殿下もデカいのだろうか?ついつい前世を感じてしまっている。私は、クレアなのかクノハなのかごちゃごちゃになるが、どっちも私だと思うことにする。
『『【時間がないから昨日の続きからよ。「幹」は分かるようになったはずよ。今日は、出来る限り薄い結界を張りなさい。】』』
「【はい。】」
幻影のお二人が孫のクララに強引な指導を始めた。孫に申し訳ないと思うが、これも我が王国の将来のためだ。心の中で孫に謝罪しながら殿下と近くで様子を見守る。
「凄い強引ですわね。ヤバいくらい。」
「先生もそう思いますか?私もです。」
「本当に常識はずれですわね。あのお二人だから出来ることだと思いますわ。ところで、フィアレアラ皇女殿下。殿下に解放されているあのお二人の記憶は何歳までなのですか?」
「エリザベートが9歳でフィオナは12歳までです。最初は、二人とも今の私よりも1つ年上の初等学校二年生の終業式まででしたが、フィオナにこの国の将来のために協力して欲しいと頼まれて、フィオナが帝国留学を終えた頃まで開放されました。
ですが、あの二人、いつも私の中で余計なことをバンバン言い合って喧嘩してますので、その後のフィオナの人生はだいたい分かってます。フィオナの妃達や子供達、孫達のことも。」
「ふふっ。なんとなく想像出来ますわ。私の父母上ですから。」
「出来れば知りたくなかったです。私の前世があの二人なんて。まぁ、魔法や学習に関しては、悪くないですけど。私は、何の努力をしなくても何も困らなくなりましたから。」
殿下のおっしゃる通り、何の努力をしなくても簡単に何の魔法でも扱える、勉強もしなくてもいいなんて凄いと思う。クノハの私もだ。クレアの記憶のおかげで今までの私とは違う。クレアが必死に頑張って努力して磨いた魔法の技術力をクノハの私は簡単に手に入れることが出来た。これがもっと若い頃だったら良かったのに、と思ってしまう。そうだ、四年前でもいい。娘がランセル国王陛下の異母妹レティーア王女の降嫁に反対した頃。娘がレリーリアラ様だった時の記憶を取り戻した頃。あの頃に私もクレアの記憶を取り戻したかった。
「チートって言ってしまえばそうですわね。私も、『クレアレイア』だった頃の記憶をもっと早く思い出したかったですわ。」
「先生がフィオナの娘の『クレアレイア』でしたらお分かりかと思いますが、この国の次の世代の旧帝国五星が先生の孫一人なのは、フィオナが娘のエリザベートを皇帝にしたからですので。」
「ああっ。まさか、帝国との被りなのですか?」
「そうです。ランセル国王陛下の子供達は全員被っているのです。第一王子は先生の孫王女と、第二王子は帝国の私の叔父皇帝の第一皇子と、そして、第一王女は第一皇女と。つまり、私の従弟妹たちとの被りで、五星を失っていたのです。」
「私は、クレアレイアでクノハですが、クノハと言いますわね、一人称だとややこしいので。
クノハの父親の代までは、帝国の皇族五星と懐妊が被ることを避けていた可能性はあります。ですが、クノハは、父親にそのことを教えられていないのですわ。帝国の皇族五星と懐妊が被ってはいけないと。帝国の第50代皇帝エリザベートがフィオナ父母上の娘だったことはクノハは知らないのです。我が国の王家王族家系五星と帝国の皇家皇族家系五星が同じ家系五星だとクノハは教えられていません。
クノハは、祖父の代からの王族なので王家はどのように伝えられているのかは分かりません。ですが、同盟国の皇帝の妃の懐妊の情報ならば入っているはずです。お祝いのことがありますから。なので、ランセル国王陛下が帝国の皇家五星と被ることを避けていたとも思えません。発表されてからの時間にズレもありますし、娘のクノン第一王妃陛下の時のようにたまたま、偶然被ったのかも知れませんが。」
「私も皇家ではなく皇族皇女なので、皇家では第50代皇帝エリザベートの父親が誰なのか伝えられているのかどうかは分かりません。ですが、私も、皇帝エリザベートの父親がフィオナだと知りませんでした。私がまだ子供なので知らないだけなのか、父や祖父、叔父たちがその事を知っているかどうかも分かりません。
が、こんなことを言っては失礼かと思いますが、帝国はこの国を同盟国とは思っていますが、格下と思っています。隙あらば厳しい条件の格下扱いしますよ。親国と思っていないことは確かです。
『帝王結界』も。フィオナが教えて、アリアレイアが異母妹エリザベートに教えたなんて知らないかも知れないですね。どの世代まで本当のことが伝えられているのかは分かりませんが、今はたぶん…。
知っていたら、今、この国のことを目の上の瘤みたいに思いませんから。昔のように交流していると思います。たぶんですよ。たぶん。私、子供で、傍系皇族皇女なので実際はどうなのか分かりません。伝えられてはいるけれど、何らかの理由で今のような状況になってしまった可能性もあります。」
「そうかも知れないですわね。残念ながら。」
「はい。留学が決まって、この国のことは私なりに調べました。フィオナの時代からです。私が調べた限りでは、100年くらい前に常識はずれの強い魔力を持つ王女、フィオナのことですね、がいて、彼女は老齢になっても世界一の魔力量を持っていたらしい、程度でした。私がフィオナとエリザベートの記憶を取り戻す前です。とても信じられないと思っていました。」
「殿下が記憶を取り戻したのは、いつなのですか?」
「この国に来てからです。5日前です。」
「…マジですか?」
「はい。この国に着いたその日のお昼にイーデアル公爵領で旧マ・アール城に案内してもらいました。その時に、旧マ・アール城に飾ってある初代国王ジュリアスの少年時代の家族の肖像画を見た時です。私の頭の中にエリザベートがいきなり話しかけてきました。フィオナもです。強引に。私はそのまま気を失ってしまいました。そして、あの二人の少女時代の記憶を解放されてしまいました。」
マジか~。殿下の年齢からすれば、早いとは思うけれど、まさか、我が王国に来てからのことだったとは。だが、しかし、私は、エリザベスお祖母様とフィオナ父母上の強引さに思わず感謝してしまった。今の現状を思えば殿下にあのお二人の記憶があるのはたいへん有難いことだと。




