39.傍系王族王女クララ 4
お祖母様と一緒に自分達の住む王族用の宮に向かって歩く。
「クララ、あなた、先に宮に戻りなさい。私は、今からクノン第一王妃陛下のところに行きます。さっきのフィアレアラ皇女殿下と幻影二体のことは、誰にも言ってはなりません。あなたの両親にもですよ。午後からの剣術と家庭教師の勉強は今日は中止にします。あなたに今日のことを詳しく説明しますから。」
「はい。お祖母様。」
一人で宮に戻りながら考える。フィアレアラ皇女殿下の幻影は、二体共に別々の人物の意思を持った幻影だった。エリザベス王太后陛下とフィオナ王女殿下。もちろん二人共知っている。我が国の歴史で出てくる方々だから。
そして、お祖母様。お祖母様は、フィオナ王女殿下を『父母上』と呼んでいた。『父上』とも。お祖母様は、『クレアレイア』って方らしいが、『クレアレイア』が誰なのか分からない。だが、『父母上』ってことはフィオナ王女殿下の子供のようだ。フィオナ王女殿下は、独身だったはずだし、女性なのに、父母上?何故なのかは分からない。独身だから、父親と母親の両方って意味で『父母上』なのかも知れない。その辺りも午後から教えてもらえるのだろう。
宮に戻り、自分の部屋でも考える。午前中の魔法指導は明らかに普通ではない。今までの常識では考えられないのだが、『クレアレイア』のお祖母様は、違うようだった。少なくとも『クレアレイア』のお祖母様は、魔力量を調整する技術があるのだ。
お祖母様を待つがなかなか戻って来ない。昼食時間になったが、まだ戻って来ない。先に昼食をいただいた。午後からの剣術と家庭教師の勉強は中止の連絡も正式に入ってきたので自室で待機する。二時間ほど待ったところでお祖母様に呼ばれる。侍女に連れて行かれた場所は、また王家のエリア。王族のエリアではない。
お祖母様と一緒にいたのは、クノン第一王妃陛下。私の叔母上様だ。お祖母様とクノン第一王妃陛下が今回の経緯を説明してくれる。とても長い話だった。フィアレアラ皇女殿下のことも含めて。何故叔母上様のクノン第一王妃陛下はフィアレアラ皇女殿下の留学を希望なされたかの理由も。
そして…。
私も思っていた通り、第二王子は王家系五星ではなかった。さらにイーデアルに降嫁したレティーリア王女様のお腹の子供は、おそらく旧マ・アール家系の男児。もしくはワントゥン家系だと。つまり、次世代の王家系五星は、私が最後。私が王家系五星の子孫を得ないと我が国は終わりだと言われてしまった。
もしかしたら…、と不安に思っていたことが現実だった。そして、今日のいきなり強引な魔法の練習は魔力量を調節する技術を10歳までに身につけるため。その技術を身につけるタイムリミットが10歳のお誕生日前後だから。
お祖母様は普通の五星だから普通の指導しか出来ないらしいが、今日から私の魔法の先生がお祖母様に変更になる。夕食後から早速始まる。
厳しい現実を突き付けられて、私も真剣にならざるを得ない。しかし、クノン第一王妃陛下まで前世の記憶があるなんて。ならば、もしかして、私も誰かの生まれ変わりだったりするのだろうか?
でも…。
たとえ誰かの生まれ変わりだったとしても、どの時代だったかは分からない。我が国なのか、帝国なのか。ならば知らない方がいいのかも知れない。我が国のならば、王妃、管理、少し前の時代ならば降嫁。帝国のならば降嫁か管理か王妃、最悪消される。…同じだ。自由のない人生だったと考えられる。好きでもない男性と結婚させられて。
…うん。やっぱり私は、前世なんて知らないでいい。
特に帝国ならば、最悪だ。あんなに凄い魔力のフィアレアラ皇女殿下でさえ、目立たないように生きてきたのだ。私のお祖母様のように好きな男性を選べることは極稀だ。全部同じ想像通りの人生だったはずだ。
お祖母様達のお話の後はすぐ夕食の時間だった。そして夕食後はお祖母様の魔法指導。
「本当は、あなたの魔法の先生を決める時に私が教えることを希望したのよ。だけど、ダメだったのよ。王族五星は、王家の五星の子供の魔法の先生になるために保留だったから。ランセル陛下が第二妃をお迎えになられて、懐妊を待っていた時だから。
まあ、でもクノハでは『クレアレイア』のような指導が出来なかったから同じね。記憶を取り戻した今ならば出来るけどね。ふふっ。50歳を過ぎた今の私でも薄い結界ならばまあまあ張れるわよ。私は、普通の五星だから20~30重か、今はもう少し少なくなってしまうかしら?クレアの父母上は別格だからあんな指導は普通の五星の私には出来ないわ。父母上の留学があなたが10歳になる少しでも前で良かったわ。」
「はい。頑張ります。」
「フィアレアラ皇女殿下は、父母上のように男児になれないのかしら?異母妹エリザベートのように殿下の子供を一人もらいたいわ。女児だから誰の子供か足が付かないし。殿下は、父母上のように呪詛をかけられていないからたぶん無理だろうけれどね。」
「お祖母様。呪詛なんて恐ろしい禁忌ではないのですか?」
「…そうね。クレアの父母上は利用したけど、己の父親を一生許さなかったわ。慰霊の儀式の時もね、父親の墓碑を全く見なかったらしいわ。己の出生の秘密を知った時からね、ずっと苦しんでいたらしいのよ。クレアからみたらとても自由な叔母上様だと思っていたけどね。
フィオナ父母上が男性として生きることを選んだのは、仕方ない選択だったと思うわ。父母上しかいなかったから。女性のままだと、五星の子供を得る可能性は一人だけ。それも万が一にも誰かと被ってしまったら、『0』になってしまうのよ。父母上で終わりになってしまう。私だって次世代を思うならば、あなたを男児に変えたいくらいよ。」




