38.傍系王族王女クララ 3
「クララ王姪殿下。クノハ王義母殿下が急ぎお呼びです。クララ王姪殿下。お急ぎください。」
午前中の魔法の練習の時間にお祖母様からの急用って何だろう?
「クララ王姪殿下。クノハ殿下のところにお急ぎください。私の魔法の授業は今日はもう終わりにしましょう。」
「はい。先生。ありがとうございました。お祖母様が何の急用なのかは分かりませんが失礼致します。」
祖母侍女達が祖母のところに案内してくれた。えっ?ここ?何故王家専用の魔法の練習部屋なの?疑問に思いながらも中に入る。
「失礼します。私をお呼びと聞いて参りました。」
「【エリザベス王太后陛下、フィオナ王女殿下、孫のクララです。】クララ、ご挨拶しなさい。」
へっ?旧帝国言語?エリザベス王太后陛下?フィオナ王女殿下?幻影なのだろうか?いや幻影に違いない。ますます疑問に思うがとりあえず言われた通り挨拶する。
「はい。お祖母様。【エリザベス王太后陛下、フィオナ王女殿下、クララ・レリ・アールと申します。】」
『【時間がないから、何の説明もなくいくわよ。クララ、普通の結界でいいから、五重に張りなさい。】』
突然薄い幻影に命令される。
「【えっ?五重ですか?出来ません。三重で精一杯です。】」
『私達が教えてあげるわ。フィアレアラ、とりあえず、あなた手本を見せなさい。』
「いいけど、あなた達に魔力使っているからあまりやりたくなわ。」
…あの幻影二体は、フィアレアラ皇女殿下の幻影のようだ。凄い魔力、凄い技術。自分以外の幻影が作れるなんて。私なんて、自分の幻影も作れない。ってか、まだそんな魔法さえも習っていない。幻影魔法は難しいのだ。習うのは早くても中等学校の高学年だ。
『【薄いのでいいのよ。魔力なんてほとんど使わない程度の。】』
「はい。はい。分かったわよ。エリザベート。」
フィアレアラ皇女殿下が一重、二重、三重…と結界を張っている。10、11、12、13…まだストップがかからない。えっ?えっ?一体どうなっているの?こんなこと出来るの?
「まだ~?何重でも出来るけど、面倒なんだけど~。」
マジで?嘘よね?誰か、嘘って言って。目の前の現実に混乱する。
『【もういいわよ、フィアレアラ。】』
フィアレアラ皇女殿下は、一気に全部壊し、椅子に座って私の様子を見ている。
『【さっきフィアレアラがお手本見せたように、結界なんて何重でも張れるのよ。魔力量を調整すればね。さぁ、やりなさい。今すぐに。】』
「【はい。】」
命令されて、言われた通り結界を張る。だが二重目で
ダメ出しされる。
『【はい。ストップ。フィアレアラの結界見たでしょ。全力で張るからいけないのよ。】』
『パリーン。』
容赦なく外側の結界を壊される。そしてもう一人が内側の結界を片手で掴み、もう片方の手を私の胸元に手を入れた。
「えっ?」
突然、私の『何か』を掴まれる。幻影の手首から先が私の体の中に入っている。
「はぐっ。」
痛い。めちゃくちゃ痛い。そして熱い。掴まれた部分に魔力が集まっているのが分かる。
『【クララ。自分の『幹』が分かるかしら?私が今掴んでいるのがあなたの『幹』よ。魔力が集まっているって分かるかしら?】』
分かる。分かるけど辛い。とても痛い。幻影が私の魔力量を調節してくれているのが分かる。分かるけどめちゃくちゃ痛くて辛い。もうダメ、限界だ。私は、意識を手放した。
…はずなのに、一瞬で強制回復させられた。『幹』を捕まれたまま。めちゃくちゃ辛いのに気絶して逃げることも赦されず、結界を張る練習をさせられる。そして私の魔力がなくなるとまた強制回復させられる。極上の魔力で。凄い魔力。凄いけどとても辛い。
どれくらい時間が経ったのかさえも分からない。強制的に魔力を使わされ、なくなれば強制回復。もはや自分の感覚がないくらいに肉体的にも精神的にも疲弊してしまっているのに体に直接強制的に魔力を調整する感覚を覚えさせられている。
……………
「【エリザベスお祖母様、フィオナ父母上。魔法指導の終了時間には少し早いですが、もう一時間経ちますわ。続きは、また明日になされてはいかがですか?フィアレアラ皇女殿下の魔力が持ちませんわよ。】」
お祖母様だ。助かった。良かった。今日の練習は終わりだ。
『フィオナ父母上?あなた誰?』
私も気になった。お祖母様の呼び方が。
「私ですわ。父母上。『クレアレイア』ですわ。」
『あなた、クレアなの?』
誰だろう?『クレアレイア』?知らない名前だ。お祖母様が幻影フィオナ王女殿下と話しているが全く意味が分からない。私だけ混乱中だ。
…………
「どっちも煩いわ。さっさと消えて。私の魔力がヤバいのよ。」
『『【そうね。じゃ、またね~。クレア。】』』
………………
「「「…。」」」
パッと消えた薄い幻影二体。しばらく無言になった。
「えっと、すみません。私の幻影がお二人にご迷惑をおかけしました。」
「大丈夫ですわ。フィアレアラ皇女殿下。いつも通りですわ。私の方こそ申し訳ありません。あんな父親で。フィオナ父母上よりもフェリオ父上の方が真面目ですので、困った時には父上の姿になってもらうといいと思いますわ。」
「…えっと、お祖母様?」
「何かしら?」
「お祖母様ですよね?」
確認する。絶対に今までの私のお祖母様ではないことは分かっているが、不安な気持ちが大きくてお祖母様本人でもあることを確認せざるをえない。
「そうよ。ふふっ。記憶が戻って嬉しいわ。もう50歳を過ぎてしまったけれど、まだまだイケるわ~。私には技術があるからね。私、子供の頃、めーちゃくちゃ一生懸命練習したのよ。クレアレイアの時ね。結界もね、記憶を取り戻すまで五重なんてたいへんだと思っていたけれど、余裕だわ。さすがに何重も永遠には普通の五星の私には厳しいけれど、そこそこ出来るわ。
フィアレアラ皇女殿下。少し早いですが、殿下の魔力はもうほとんどありませんし、今日はもう終わりに致しましょう。また、お伺い致しますわ。今後のことも娘と相談してまた殿下にご相談致しますわね。
クララ、あなたもよ。あなたは、フィオナ父母上とエリザベスお祖母様にご指導いただいて、強い五星にならないといけないのよ。フィアレアラ皇女殿下にお願いしなさい。あのお二人を造っているのは殿下の魔力なのだから。」
「はい、お祖母様。
フィアレアラ皇女殿下、本日は魔法のご指導ありがとうございました。またよろしくお願いいたします。」
いつもと全く違うお祖母様、幻影お二人の魔法指導…、混乱中だけど、言われた通り挨拶をする。
「私というよりもあの二人が勝手にしているだけですけれどね。」
「ふふっ。そうですわね。懐かしい私の父親のフィオナ父母上そのものでしたわ。エリザベスお祖母様も全然お変わりありませんでした。では、フィアレアラ皇女殿下、私達はこれで失礼致します。」
お祖母様と一緒に部屋を出たが、私の頭の中は混乱したままだ。さっきまでの魔法指導の理由、突然変わってしまったお祖母様、フィアレアラ皇女殿下のことも…。今までとは違うこちらのお祖母様は、私に理由を説明してくれるのだろうか?




