《 永遠のアリスフィーナ 》の子供達。①
1番目の子~13番目の子
【母親】ラ・アリスフィーナ・ジークルーネ・エル・カウベル大公爵
誕生:聖王歴300年
「完全なるエルダー」と「完全なるホルスタ」の完全両面特性。
《 1番目の子:カイゼル・ジークルーネ ・アル・カウベル・侯爵 》
誕生:聖王歴1289年
長男。強いハーフエルダー。
カウベル王国宰相にして、王宮魔導術大臣を兼任。
冷静沈着マン・Mr.完璧超人・鉄仮面・冷血宰相、等、様々な呼び名を持つ。
アリスフィーナを「ギャフン」と言わせられる、唯一の人類。
好物は、東方大陸のお菓子。
・カイゼル:隠れマザコン。「母上」。
【 ははうえのおさいふ 】
「母上」
「はい?」
「先月の、ジークルーネ家の予算支出についてですが」
「……?」
「何故、王宮の予算から、個人的な旅行費まで出ているのですか? 財務府から連絡がありましたよ」
「え?」
「『え?』ではありません」
「だってカウベルのお金でしょう?」
「違います。国庫です」
「…………」
「母上?」
「……初耳です」
「でしょうね」
「母上。それは『王族の財産』ではなく『国民の財産』です。詳細まで言うと、同じ王族でも『カウベル王家』と『ジークルーネ大公家』の財産は別です」
カイゼルは淡々と説明する。
「……そうなのですか……」
「そうです」
「では、私のお金は?」
「ありません」
「…………」
「正確には、母上が把握していません」
「…………カイゼル」
「はい、母上」
「私、結構働いていると思うのですが……」
「存じています」
「外交のお仕事もしています」
「存じています」
「世界経済の事も考えています」
「それも、存じています」
「なのに、どうして私はお金がないのですか?」
「母上がお金に興味が無いからです」
「……なるほど」
アリスフィーナ、無言で胸を持ち上げて揺する。
「売春なんてやめて下さいね。大公が恥ずかしい」
「いえ、乳を……おっぱいでも売ろうかと……」
「……母上、ご予約のお客様が優先ですよ」
「むぅ…………」
「大体、母上はですね……」
本当は『小国ぐらいは軽く買える資産』がある事は伏せて、
ひたすら、母親に説教を垂れるカイゼルなのであった。
《 2番目の子:ローザリア・ハイネス・アウストゥール・アライズヘイム 》
長女。標準的なハーフエルダー。カイゼルの実妹。
誕生:聖王歴1294年
東のエルフ大国、「アライズヘイム王国」の正室王妃。
自由人。10歳時に家出。
様々な国や街で、働きながら、世界を漫遊していた最中、お忍びで城下に下っていた、王太子ハスラムに一目惚れされる。そして、流されるままに王宮入りを果たす。
結婚当時は、エルフ族では早婚すぎると云われる44歳。王妃となったが、自由人ぶりには変わりがなく、外交官として大陸中を飛び回っている。
来歴のせいか、あまり王族のような話し方はしない。
図太い神経の持ち主。正に母親の血筋。
ドラゴンライダーの資格を持ち、「赤髪の竜騎妃」の二つ名で呼ばれる。
・ローザリア:マザコン。「母さま」。
【 おきてがみ 】
『 てがみ かあさま ほないってくる 』
「ぇええええええええええええーーーっ! どこにいいいいいいいぃぃっ!!???」
《 3番目の子:アリア・エーデルガルド 》
誕生:聖王歴1340年
次女。標準的なハーフエルダー。
「神聖中央アガルトラント教国」南司教区の司祭。
簡素清貧・品行方正・慈愛の化身等と謳われているが、腹芸も得意。
利益や権力が、最終的に、自分の基へと集約されるよう立ち回っている。
南司教区の、次期司教候補筆頭。
真なる平和主義者。
姉妹達の中で、容姿が最も母親に似ている。
・アリア:マザコン。「お母さま」。
【 ねまわし 】
「わたくしが権力を手に入れれば、世界は、随分と平和になると思いますよ? そうですよね? はい、決まりです! お布施は、わたくしがご用意しますので、あとは、手筈通りにお願い致しますね!」
《 4番目の子:エーナル・エーデルガルド・ドレスディーン・4th 》
誕生:聖王歴1344年
次男。人間族寄りのハーフエルダー。アリアの実弟。
西の人間族大国、「ドレスディーン王国」の国王。
ドレスディーンの暗黒時代、民に圧政を布く王制派に対し、アリスフィーナは「エーデルガルド家」を引き継ぎ、有志貴族を引き入れ、裏から内戦を誘発。
一触即発の事態に、エーナルは、王制派軍を無血で制圧し、混乱を収束させ、王位に就く。
新たに議会制を導入し、政治体制を一気に革新した。
ローザリアとアリアを通じて、アライズヘイムと、アガルトラントの国交を樹立し、荒んだ王国を、徐々に富んだ国へと発展させてゆく。
顔と体と声がデカい。髭も立派。
王の中の王「キング・オブ・ザ・キングス」と呼ばれるに至る。
アリスフィーナも持て余していた《 古代聖剣:レイバックアスガルド 》の所有者。
・エーナル:マザコン。「お母上殿」。
《 5番目の子:ディーナ・ハインリヒ・ウォーゼンレート・女子爵 》
誕生:聖王歴1374年
三女。標準的なハーフエルダー。
「神聖中央アガルトラント教国」、冒険者ギルド西部本拠地のギルドマスター。
アリスフィーナの知略を受け継ぎ、様々な難問題を、スルりと解決する才女。
ギルドランク最上位「ザ・ダイヤモンド(金剛石)」の更に上位、唯一その人の為に制定された「レーア・セレスティアル・ビフロスト(虹)」の提唱者。
「奈落よりも深く昏き迷宮」の踏破者である《 永遠のアリスフィーナ 》の為だけの称号。
この称号は、聖王を始め、アガルトラント上層部しか知り得ない、秘匿とされている。
アリスフィーナに褒められる事が、人生のご褒美。だが、多忙過ぎて、中々会いに行けない。
・ディーナ:マザコン。「母さん」。
《 6番目の子:リーナ 》(享年8歳)
誕生:聖王歴1414年
四女。エルダーに満たない薄いハーフ。
未熟児状態で産まれ、生死の境を繰り返し、辛うじて命を繋ぎとめる。その後も体が弱く、常に、発作と隣り合わせの状態で育つ。
花が大好きで、将来の夢は街角で見かけた「お花屋さん」。
聖王歴1422年、冬のある日、発作と肺炎を併発。
涙を流し、謝るアリスフィーナに心配かけまいと、最期の力で薄く微笑んで死去。
彼女の死は、アリスフィーナの、その後の人生を揺るがす出来事となり、感情を、一切表に出せなくなるほどに弱り果てた。
カイゼルの取り計らいで、国で保存されている、国宝「カウベル伯爵家の屋敷」で静養するも、立ち直るのに十数年を要した。
そのきっかけは、妹である、愛の聖女アイラの、記憶映像からだった。
・リーナ:(まだまだ、お母さんが大好きな年頃)
《 7番目の子:ジルレトール・バレンシア 》
誕生:聖王歴1439年
三男。 標準的なハーフエルダー。
大陸南部の自由都市「グランディガール」に本拠を構える、バレンシア商会大頭目。
朱色のターバンを巻き、長身で色黒の、目付きの鋭いヒゲ兄貴。
幼い頃から、とにかくお金に目が無く、暇さえあれば、各国の貨幣の名称や証書、経済を自主的に学んでいた。
苦労して算術を覚えると、両替レートの計算に没頭、その姿にアリスフィーナは商才を感じ、大昔にカウベル家と取引のあった、バレンシア家へ、養子縁組の打診をする。
商会入りを果たしたジルレトールは、成長と同時に、メキメキと才能を発揮。
成人時には、既に跡取りとして絶大な信用と、実績を得ていた。
・ジルレトール:マザコン。「母上様」。
【 かねのかち 】
「金貨というのは手に掴む物ではなく、流すモノだ。飯を食うなら、銀貨で事足りるのだよ」
《 8番目の子:レグルス・アルバヘル帝国辺境男爵 》(通称:レグルス卿)
誕生: 聖王歴1453年
四男。 強いハーフエルダー。
元ザ・ダイヤモンドの冒険者。伝説の傭兵・最強の魔剣士等、多くの名で語られる。
大陸中にその名を轟かせた、武勇伝の最たるものは、北方「エルベリオン帝国」の辺境に、数百年ぶりに出現した《 深紅の赤竜フォルクレス 》の討伐であった。
冒険者の仲間達と《 炎の聖女:ユリア・レーゼラ 》の敵討ちを果たした、悪竜退治の物語は、大陸全土で吟遊詩人に唄われ、数多くの民の憧憬に火を灯した。
時の皇帝は、レグルスに「真なる・ドラゴンバスター」の称号を授け、アルバヘル家と辺境男爵位を与え、帝国貴族として遇した。
英雄譚としては聞こえは良いが、結果的に、北を二分し、隣接するランダメリア大公国の警戒線役や、名前持ちとして他国への折衝など、長年に渡りコキ使われる羽目となる。
辺境貴族と仕事柄でフットワークは軽く、他の兄弟姉妹達との接触も多い。
愛剣は、若い頃、アリスフィーナと迷宮で手に入れた《 古代魔剣:アーティザリウス 》。冒険者時代に、聖泉の乙女より賜った《 精霊刀:胡桃割りの太刀 》。
・レグルス:マザコン。「母ちゃん」。
【 ばかちん 】
アリスフィーナの夫と、初顔合わせ時の会話――
「ねぇ、旦那様。この子、市井では、ちょっとした有名人なのですよ。伝説の傭兵とか呼ばれているのです!」
「へぇ、それはそれは凄いね。きっと、とてもお強い戦士様なんだね」
「王様に褒められて、なんでも、立派な称号も頂いてて……えーっと……あっ! ドラゴンバカチン?」
「ドラゴンバスターな ! (# ゜Д゜) ワザと間違えただろ……!」
「バレました? おりこうさんになりましたね。偉いですよ ヾ(・ω・*) ♥ 」
「…………///」
「ははっ! 仲が良いんだね。見ていて微笑ましいよ」
「ええ! 自慢の息子ですもの!」
「…………///」
《 9番目の子:カムイ博士 》
誕生: 聖王歴1456年
五男。 標準的なハーフエルダー。レグルスの実弟。
魔道具錬成師。アリスフィーナから大公領の、ほんの一部を割譲してもらい、日夜工房で、魔道具の錬成と研究に勤しんでいる。
「着火式焜炉」「氷室保冷庫」や「水流便器」等、魔導術の心得がない人でも自由に扱える、利便性の高い魔道具を、多数実現させた。
まだまだ高価な代物の為、一部の裕福層にしか出回っていないが、いずれは、多くの人々に行き渡るよう、日々研鑽を重ねている。
兵器類や、悪事に使われそうな物は、決して作らない。
そのあまりの功績の為、大陸全土の王室貴族・研究機関から招かれてはいるが、その全てを丁重に断っている。
ボサボサのくせ毛に、常に眠たそうな眼差しだが、柔らかな物腰と知性的な話し方で、血族間では男女問わず人気がある。
幼少時には、アリスフィーナに連れられ、レグルスと共に、迷宮攻略の訓練を受けていた。
・カムイ:マザコン。「母さん」。
【 きょうだい 】
「カムイ。お前は、俺なんかよりもよほど、多くの人々の助けになっているな。兄として、誇らしい限りだ」
「いやいや、母さんやレグルス兄さん。大勢の、兄弟姉妹達の、協力があってこそだよ。僕一人の力じゃあないよ」
「そういうところも、含めてな……」
《 10番目の子:シャルロッテ・ド・エーデルワイズ 》
誕生:聖王歴1490年
五女。標準的なハーフエルダー。
アガルトラントの西側に隣接する「聖王領地エレストブルグ」の管理を預かる、大陸門閥貴族の大名門、エーデルワイズ家の顧問相談役。
金髪縦ロールお嬢様。
少女時代は、知識と見聞を広める為、アリスフィーナと各地を巡っていた。
途中、立ち寄ったアガルトラントにて、エーデルワイズ家当主に出会い、養子縁組を是非にと頼まれる。
素養があった彼女は、幼少より、貴族社会の礼儀作法や社交界の知識等を、アリスフィーナから叩きこまれていたので、すぐに溶け込むようになる。
やがて、どこに出しても恥ずかしくない、淑女に成長したシャルロッテは、聖王誕生祭の祝宴の際、持ち前の器量で、華々しい社交界デビュタントを飾る。以来、「エレストブルグの白薔薇姫」「綺羅星の君」等と呼ばれるようになった。
人間族社会に於いて、他人類種が、ここまで周囲に認められるのは、極めて異例であったが、エーデルワイズ家が、わざわざ養子に迎え入れる、という事も追い風となっていた。
その後、周りの人間族達との寿命の条件を理由に、家督相続権利の一切を返上し、籍はそのままに、顧問相談役として下った。
その謙虚さと高潔さが、社交界人気を、更に押し上げる事となる。
各国の様々な貴族や、官僚達と積極的に交流し、「薔薇の茶会」という貴族社会の情報網を構築。
専門の諜報組織を作り、各国王侯貴族・社交界はおろか、裏社会の情報まで集積できるほどに、シャルロッテの「手と耳」は長くなる。
魔導術の才能には恵まれなかったが、情報調査系の優秀な「魔眼使い」である。
アリアとはよく会い、共に情報交換を行っている。
カイゼルは、決して口や態度には出さないが、彼女の能力を兄弟姉妹の中で、一番高く評価している。
アリスフィーナの教育が、本格化する以前の幼少期は、鉄砲玉のお転婆で、朝から晩まで、全身泥だらけになるまで、元気に遊び回っていた。
6番目以来の女児だったので、その姿を見るアリスフィーナは、可哀そうだった、リーナの分まで遊んでくれているのだと、目頭と胸を熱くさせていたという。
アライズヘイムでの滞在中、とある事で、アリスフィーナとローザリアの間で「アホ面シャルちゃん」が定着してしまう。
・シャルロッテ:マザコン。「ママ → お母様」。
【 あほづら 】
「ママー! みてみて! ブッヒィー! ブヒッ!」
『wwwwwwwwwwwwwwwwwww』
《 11番目の子:ナターシャ・アルダンテ 》
誕生:聖王歴1515年
六女。人間族寄りのハーフエルダー。
「ドレスディーン王国」首都ミラルダ城下街郊外の小さな森に、隠れ家のように建てられた料亭、《 叢雲と月の雫 》のオーナー兼、総料理長。
幼い時分から、アリスフィーナの料理に、強い関心を持ち、5歳になる頃には、既に一緒に調理をしていた。嗅覚と味覚が、他の子らよりも遥かに鋭敏だった上、熱感知の魔眼と、鑑定の魔眼にも、自然に目覚める。
独自のアプローチで、既存料理の概念を覆し、全く新しい料理を数多く産み出し、多くの喝采と評価を得る。
各国で料理修行の後、ドレスディーン王国の、アルダンテ伯爵と縁が有り、現在の店に落ち着いた。
カムイの開発した「着火式焜炉」「氷室保冷庫」等はナターシャの発案。
店にはたまにエーナルがお忍びで「カツ・ドン」を食べにくる。
素材を選ばず「何でも」切れる、超万能《 魔法庖丁:叢雲 》の所有者。
彼女の店の名前は、この庖丁に由来する。
・ナターシャ:マザコン。「お母さん」。
【 ないしょ 】
――バタン!
「お母さん! おっぱい頂戴! 10瓶ぐらい!」
「ヒャッ! ナターシャ? またですか!? 乳なら、カウベルから仕入れているのでしょう?」
「特別なお客様の為に必要なの~。……そもそもアリスフィーナ・ブランディスなんて、普通じゃ手に入らないし……」
「モゥ……仕方がありませんね……変身魔法解いて搾ってくるから、夕方ぐらいに取りにきなさい。それと……くれぐれも、カイゼルにはバレないようにして下さいね!」
「うんうん! 助かるわー。あ、今夜泊まっていくから、夕食は久しぶりに二人で作ろうね!」
※「アリスフィーナ・ブランディス」市場価格、1瓶、中央聖金貨500枚より~
《 12番目の子:エルフィアナ・アースランド 》
誕生:聖王歴1531年
七女。標準的なハーフエルダー。
魔導術学校三大名門の一つ、カウベル国立アゲラーダ学院・白亜の塔で教鞭を振るう。
アリスフィーナの、魔導術の弟子としては、カイゼルに続く二人目。
小柄で、子供っぽい容姿をしている。
魔導術のセンスは天才的であり、7つの魔眼に開眼。6つの《 魔導の最奥 》の皆伝を修める。
しかしながら、師であるアリスフィーナからは、20の魔眼の開眼と12の《 魔導の最奥 》皆伝からが、本当の魔導術の入口だと、云い渡されており、未だ、一人前だと認められてはいない。
それは、アリスフィーナが魔導術に関しては、どこまでも、スパルタであるからに他ならない。かつて自分も「枯れ谷の魔女」から、そう教わっていたように。
名前の通り、大地の属性と非常に相性がよく、元素変換錬成系と、多重連結系が得意分野。
時折、カムイと共同で、魔道具を製作している。
巨乳が多い姉妹間の中で、逆にレア属性だと、おかしな意味で慕われている。
・エルフィアナ:マザコン。「ママ師匠」。
【 すぱるた・まま 】
「いいですか、エルフィ。《 魔導の最奥 》は全部で36ありますので、最終的に全て皆伝するよう、精進するのですよ」
「えっ? ママ師匠。最奥の数って24じゃないの?」
「世間一般ではそうです。ですが、私が12追加したので《 アリスフィーナ流魔導術 》では、36になります。概要は、地下二階の書庫棚全部に記してあるので、熟読するように。暗号言語で書いているので、解読しながら読みなさい」
「えっ? ママ師匠……私死ぬの??」
「何を、おかしなことを言っているのですか? 本を読むぐらいで、人は死にはしませんよ。さぁ、お行きなさい」
「やっぱり逝くんだ……? (´;ω;`) 」
(一週間後にギャン泣き → ママ必死に慰める)
《 13番目の子:アストレェア・ダルカス 》
誕生: 聖王歴1560年
六男。蒼輪族のハーフ(魔族)。
人類圏と、魔王国領の境にある共同管理区「混沌の要塞都市カレリン・カレル」の評議員。
白い肌に切れ長の目、額に第三の目と云われる、蒼い石。
銀色に少し青みがかった長髪を、蒼い輪の髪留めでまとめた、超絶美男子。
ある時、南方魔王国領国境付近で、過激派の魔王軍と、ダーナ・レギン共和国との、小競り合いがあったと聞き及んだアリスフィーナは、戦火の落ち着いた地に、単身視察に行った。
その際に、小さな森で蒼輪族の軍人が、瀕死で倒れているのを発見する。
各地に、魔導術で隠蔽した隠れ家を作っていたアリスフィーナは、蒼輪族の軍人を連れ帰り、献身的に看護した。
その甲斐があり、後遺症も無く、命を取り留めた蒼輪族の軍人は、ダルカスと名乗った。
魔族語が通じる、不思議なエルフに戸惑いながらも、感謝の言葉を伝えた。
そして、怪我が癒えるまで半年あまり、二人は隠れ家で生活を共にする。
ある日、ホルスタ族の特性を抑える、変身魔法を解除していたアリスフィーナを、ダルカスが偶然目撃する。
瞬く間に愛の加護の波動が、ダルカスの、魔族本能を激しく刺激し、ダルカスはアリスフィーナを襲ってしまう。
だがアリスフィーナは、ホルスタの本能のままに、溢れんばかりの愛情で、それを受け入れた。
情事が落ち着き、正気に戻ったダルカスは、命を救ってもらった恩人に対して行った非礼を、頭を地面に擦りつけて謝罪した。
アリスフィーナは、そんな、生真面目な魔族の軍人を見て、穏やかに微笑むと、ホルスタである事を隠していた、自分にも責はあると伝える。
それでは、命を救った礼なら、傷が完治するまでの間に、子を一人授けて欲しいと願った。
こうして二人は、短い間ながらも恋人同士となる。
二人は互いに好いていたが、ダルカスは、蒼輪族の王子であった為、国に戻らなければならなかった。
アリスフィーナも、カウベルにその身を捧ぐ者として、王子と姫は、別れる宿命にあった。
哀しくも美しい、愛の形が、確かにそこに存在した。
別れの日にダルカスは、産まれてくる子にこれを、と、菱形の宝石が埋め込まれた、蒼い首飾りの護符を託し、魔王領へと帰った。
アリスフィーナは、後ろ髪を引かれる想いを振り切り、出産の為、カウベル王国へと帰還した。
カウベルに戻ったアリスフィーナは、戦場視察や、魔族の子を宿した事情を王や子供達に説明し、大公の屋敷で魔族の男児を産んだ。
古い言葉で「絆と祈り」を意味する「アストレェア」の名を贈り、兄弟姉妹と共に、沢山の愛情を注いで育てた。
カウベルの民達もまた、アリスフィーナの息子として、アストレェアを大事に見守った。
アストレェアが成人する頃には、誰もが振り返るような美丈夫となり、街を歩けば頬を染める女性達で溢れかえった。
アリスフィーナは、かつて託された護符を、息子に授けながら生い立ちを語り、ダルカスの姓を与え、その命と名に祝福を贈った。
剣術・学術にも秀で、その丁寧で優雅な物腰は、どの王宮でも通じる所作で「魔王領の魔族は恐ろしい」という、固定概念を吹き飛ばすに、十分な効果があった。
アリスフィーナは、アストレェアを外交官補佐とし、実に五年の歳月をかけて、大陸中の国々を、外交挨拶という名の「息子自慢」で訪ね歩いた。
姉妹間の人気は、カイゼル派閥一強だったのが、カイゼル派とアストレェア派が、二分する戦況となっている。
チャームポイントは、魔族譲りの少し長い八重歯(笑うと光るオプション付き)。
・アストレェア:当然のようにマザコン。「母上様」。
【 かしましい 】
大公屋敷の中庭で、午後の紅茶を嗜む、四人の姉妹――
「ァアアストレェエエアの子供を! 産みたぁーーーいっ!」
「ちょっ……コホン。ローザリアお姉様、あまりに、はしたな過ぎますわよ……!」
「そういう、アホ面シャルちゃんはどーなのよ?」
「えっ……わたくし!?……それはまぁ……えぇ……まぁ……はぃ……♥ あと、アホ面って言うな……♥」
『お二人とも、クッソ下品で草生えますわw 私達はーアストお兄様の、恋人志望ですからー♪』
「そこの双子うるさいわよー! ステレオでハモるな!」
「(シュッ)全くモゥ……中庭で騒々しいですね。館まで響いていましたよ?」
「うぉぅ! お母様……瞬導転移で、乱入しないで下さいませ……;」
「あと、貴女達スチャラカ娘姉妹に、ハッキリと教えておきますと、アストレェアの子は、最終的に『私が、産みます』ので――」
『なんじゃそりゃー!』 ズコー
14番目の子に続く――――
では、魔族の軍人、ダルカスとの不自然な情事について、
母上を誰よりもご存じな、カイゼル宰相から、解説をしてもらいます。
「はい。まず、ホルスタ族の前提ですが、種族存続の本能的部分が、関係しています。そして、たとえ望まぬ行為でも、防衛機能が働き、愛として、それを受け入れてしまう種族です。これも、力無い彼女達への、女神の慈悲です」
「この辺りのくだりは、『第一節』の冒頭部分でも、ホルスタ族の歴史的背景で、少し触れられています」
「その上で、母上は特別加護が強力な『完全なるホルスタ』です。つまり、エロエロの淫乱ド助平です。『第一節』でマリアンヌ王妃様も、納得していましたね。普段はエルダー化で、必死こいて抑え込んでいますが」
「ダルカス氏の行為は、『見た目』は、強姦ですが、その実、違います」
「疑問点その①。何故、母上自ら、人目につかない隠れ家で、看護しているのか?」
「その②。何故、わざわざ、見つかる可能性がある場所で、変身魔法を解き、愛の加護を垂れ流しにして、おそらくは、食料の乳を搾っていたのか?」
「その③。何故、あっさりと、受け入れたのか?」
「ここまで来ると、解りましたか? そうです。『母上が』、魔族の青年と『致したかった』、だけです。母上の手管の一つ、『誘い受け』ですね」
「で、やる事ヤって、既成事実という外堀を埋めてからの『赤ちゃんホスイ♥』です。逃げられませんよね」
「ですが、その後、ちゃんと互いに愛の芽生えがあり、惹かれ合う二人だが結ばれぬ運命的な、ロマンス風味も醸し出しています」
「本文中にこれを書くと、色々と台無しになるので、割愛したのでしょう。なので、『あとがき』にでも、記載しておくとよいですよ」
カイゼルさん、ありがとうございました。
「はい。では、仕事に戻ります。大体、母上が、『襲う』ならまだしも、『襲われる』なんて事、有り得ないのですよ……」




