過去編~岡本恵子さんとの出会い~
邪馬2651年 3月12日 快晴 07:59
男の時のものがなかったので普通に便座を下ろして用を足す。
自分の身体なのに自分の身体じゃない気分に頭がかすかにくらくらする。そりゃそうだ今までとは勝手が違うのだから。
トイレが終わり、水を流しながらそう思ってしまった。
[中山君、どうしよう?身体もおかしくなったみたい。]
(どうしようもできないね。)
冷たく淡々と話す中山君、まあ実際どうしようもできない。
わたしはトイレから出てきて手を洗うのも忘れ目を瞑り腕を組む。
考えが纏まらない。なぜ、どうしてこうなったのか。
埒があかないので、目を開けて頭で全部理解しようとすると半透明の巫女服を着ていた目のぱっちりとした黒髪のロングな女の人と目が合った。
この彼女こそが後にわたしの師匠となる第14代大神美夜子こと岡本恵子さんだった。
「え?うわあぁあ」
突如として現れた来訪者にわたしは腰を抜かした。揶揄ではなく本当に腰を抜かした。尻餅をついたともいえる。だって誰もいないと思っていたのだから。
その幽霊は面白そうに口元に手をもっていきクスクス笑いながら
「ここに来訪者が来るとは思いもしなかったわ。このままこの神社は誰も来なくてそのまま廃墟になって終わりを迎えると思ったもの。」
「へ?終わり?何のこと?というかそちらは…?」
わたしはあのとき腰を抜かしながらもキョトンと半透明の相手を見ていた。そのわたしの反応をよそに、半透明の女の人は、自己紹介するかのように口でおっほんと咳払いして
「申し遅れたわね。私は…。」
手を顎に持って行き少し考えるそぶり。じれったいと思う前に数秒も経たないうちに手をぽんとして
「私は第14代大神美夜子、大きいに神様の神に、美しいという字に真夜中の夜に子供の子、と書くのよ。よろしくね。」
頼んでもいないのに自己紹介している女の人は自己紹介してきた。
「第14代となると、第13代目以前のもいるはず。それはどうしたんですか?」
わたしの質問に、相手は目を丸くして
「あなた、面白い人ね。自問自答もして、かと思えばこういう鋭い質問もする。気に入ったわ。」
何かはわからないが面白く感じたのか、両手をパンと叩いて。というか、わたしと中山君のやりとり聞いていたのか。我ながら恥ずかしい。そんな考えをよそに、目の前の女の人は急に真顔になる。
「死んだわ。皆。私の前代は彼女が15のときに。あと3日で16歳というのにね。」
まるで知り合いを懐かしむかのように目を細める。だから知り合いなのかと興味がわくと同時に
「その人とのどういう繋がりですか?」
ということを真顔で聞いた。
「たまたま私の近くに住んでいる子よ。私も一緒に修行していたの。でも彼女がいつも先を行ってた。ただ最期の日も身体の不調を押して戦って、そして魍魎に食い殺された。」
「そっか、余計な事を聞いたかも。申し訳ないです。」
わたしは素直に余計な詮索したかもしれないことを詫びた。だが彼女は首を振りながら
「いいのよ。それよりもあなた、どうしてここに?大神の術を学びに来たのかしら?」
さっきの魍魎の発言とこの幽霊となった先代大神美夜子の時点で、気づくべきだった。ここは魑魅魍魎の跋扈する世界だった、ということに。
だから、術などと言う言葉に気づき、頭を抱えながら、どうしよう、と悩んだのだった。
お待たせしました。久しぶりの投稿になります。




