プロローグ4
3月30日 0:10 快晴
紺色の車に乗るとわたしは後部座席に座っていた。助手席でもいいが文字通り足を伸ばしたいと思ったが
「あんまり足を伸ばさないでくれ」
と言われたときは、顔面が紅潮した。わりとやろうとしたときの心読まれると何気に恥ずかしい。
後部座席でシートベルトをし手を太ももの上に載せながら黒崎さんの運転を見ていた。こうしてみると、カップルに思えるけど、わたしはそんな気持ちはない。黒崎さんも同じではないかと思う。
車に乗っていると黒崎さんは運転をしながら懐かしむかのように昔話をし始めた。
「そういえば麻美、もう二十年か、恵子さんが成仏したのは。」
恵子さんと言うのはわたしがこの世界に来たときに初めて会った人のこともとい幽霊でかつ師匠。
そして黒崎さんの”彼女”だった人である。
麻美というのはわたしのもう一つの本名。むしろこの世界も使っている本名で、大神美夜子は世襲制の名前で仕事上での使うものだ。第十五代目にあたる。本名は小野原麻美。そして恵子さんは第十四代の大神美夜子。しかも血のつながりのないのが選ばれる。実際わたしと恵子さんは全くない。
それもそのはず、歴代大神美夜子の平均寿命は40あるかないかという短命。短い人は15歳、長い人は43歳で寿命を終えている。わたしは今34、いや、今日で35歳か。わりと順調に加齢している。前世は35歳で終えたから、ある意味順調。まだ先は長いけど長生きできるといいなと思う。というか、黒崎さん、わたしの誕生日忘れてない?まあ誕生日を祝ってもらうような年齢じゃないけど。
そんなことよりも、私と黒崎さんのやりとりは続く
「ええ。早いもので。この仕事に就いてから一日一日あっという間。」
「確かに。本当にな。」
頷く黒崎さん。協会での仕事の印象とは違い、ここではどちらかと言えば柔らかな表情に見える。まあ表情が乏しいから他人には誤解させやすいのが彼の欠点だけれど。
恵子さんが命を落とすきっかけ、それは黒鬼帝、こっきていを倒すのにその身を全ての霊力、精神力、体力、寿命を全て捧げた先代巫女。それが恵子さん。
「その黒鬼帝を復活を目論むやつらがいるらしい。」
「何だって?あの邪帝を復活なんて…。」
「わからん。けど噂にしかすぎない。だから協会も調査を始めている。」
「黒崎さんは調査しないの?」
「まだ協会からお呼びじゃない。まあ噂程度だから、協会も本腰じゃないんだろう。だけど麻美。君にも情報が来たら僕に教えてほしい。」
運転するハンドルに力が入るのが目に見える。やはり思うことがある相手だろう。
その後たわいない話をしたらあっという間に自分の家の大神神社に到着した。
車から降りる前に忘れていたのを思い出す。
「黒崎さん、一つ言うの忘れてた。」
「何だろう?」
「わたし、4月から学校に行くから、たまにしか協会の仕事しなくなるかも。」
黒崎さんの瞬きが多くなった。
驚いたり考えたりするときの癖だ。
「学校?大学でも行くのか?」
「ううん、高校。かわいい制服があるから着てみたい。」
「そうか。けどなんでまた高校に行くのか?もう行かなくてもいいはずでは?」
「確かにそうだけど、高校の制服かわいいから適当に願書だしたら通っちゃった。」
「…………。」
無表情ながら唖然しているだろう黒崎さん。まあ前世のわたしでも唖然するだろう。普通に考えていい年なのにあり得ない、と。だけど不老で15で年齢が止まったものだから行くのも悪くないと思ったからだ。まあそれに中卒より高卒のほうが響きいいしね。
ちなみにかわいいというのは、一度セーラー服を羽織りたかったから、というもの。まあダメ元で願書出して受験したら通ったんだから通わなくちゃ損だ。
「それで名前はどうするんだ?また大神美夜子にするのか?」
「ううん。名前は小野原麻美にしてる。」
「おいおい、いくらなんでも住んでいるところや本名はまずくないか?」
「大丈夫。大神の巫女というより大神美夜子と名乗らないし、大神美夜子のこと突っ込んできたら親戚の叔母さんと名乗るから。それに眼鏡もかけて変装するつもり。」
「ならいいが。とりあえずなるべく素性は悟られないように。前回の中学までの生活でわかっていると思うが、大神の名はなんだかんだ言って恨みを持っているのは少なくないからな」
「ええ。わたしも普通に学園生活を楽しみたいしね。友達は出来れば、だけど。」
「そうか。ところで、だ。麻美は、どこの学校に行くのか?」
「鳳学院高等学校」
この名前を聞いた瞬間、黒崎さんは一瞬難しい顔をされたように見える。何かいけないことを言ってしまったのではないかと不安になる。だが杞憂に終わった。
「そうか。頑張れよ、麻美。」
「ありがとう。」
そう言い終え、上着を後部座席におき、車から降りようとした瞬間
「麻美、お誕生日おめでとう。これプレゼント。」
なんだ誕生日覚えていたんだ。まあ、毎年くれるけど、今回は依頼があったから忘れていたと思った。
わたしは水色にラッピングされていた箱を両手で手に持ち、黒崎さんと別れた。案外軽い。
[何が入ってるんだろうね。]
(楽しみだね。)
そんな感じのやり取りを中山君と一緒にたわいのない話をする。
自室につけば、電気を点けて箱を開けてみる。すると中に入っていたものは……。
大きな後ろ髪の髪留め用に入っていた赤いリボンだった。しかも5個。
食べ物かと思ったときめきを返せ。
それでも貰い物は嬉しいので、素直に貰う。我ながら大分女っぽくなってきた自覚はある。
その後わたしは普通に湯船に入って今日の疲れを癒やし、そのあと寝床に入りながらこの世界に来たときのことを思い出していた。
これでプロローグは終わりです。次はしばらく過去編に入ります。
比較的長編になるかもしれません。
お付き合いお願いできれば幸いです。




