過去編~覚悟の意志確認~
邪馬2651年 3月12日 小雨 19:30
長いです。
大広間から2階までの階段のときに穂刈さんが「なぜ2階に行くの?」という疑問をわたしに問いかけてきた。わたしは、いったん足を止めて、穂刈さんのほうに顔を合わせて「確認したいことがあるから、だめですかね?」と。相手に答えた。
まあもちろん二人の前で確認するのもありだが、やはりデリカシーというか、それがあるのであえて2階に行き確認しようと思ったのだが、この際ここの階段でもよかった。
だからわたしはここで階段から、小声で穂刈さんに「あの二人ってやっぱり彼氏彼女の関係性?」
と、小声で確認したところ、にこりと笑みを浮かべていた。どうやらビンゴである。
それと同時に、穂刈さんがわたしの手をひっぱりながら「もういいでしょ?」といって階段から降りると、黒崎さんと恵子さんが大広間にいた。正確には黒崎さんがお茶を用意していた。
大きな茶色い木の卓に真ん中に恵子さんが座っていた。顔は初めて会った時とは違い、少し真剣そうな表情。そこに湯飲み茶わん1つ、その左右にも湯飲み茶わん、そして、最後にその反対側のほう、おそらくわたしが座るであろう場所に一つ、湯飲み茶わんを用意していた。
わたしは比較的空気読めない人間だと思っているが、こればかりは空気読んでいた。一応確認のために、黒崎さんのほうに視線を向けて、指をさして、ここに座るのか、というジェスチャーをして、向こうはこれはわかりやすく頷く。どうやら正解だった様子。
わたしは正座で座るのが正解かと思い、正座で座りながら、黒崎さんの行動を見ていた。
穂刈さんは恵子さんの左のほうに座り、そして黒崎さんは、てきぱきと準備をし終えて、最後の締めとしてどこかしら出してきたのか、かごに入っていた海苔煎餅を卓の真ん中に置き終わって座っていた。威圧感がどことなくある。
「さて…。改めて聞こう。小野原麻美さん、君は大神の術を覚えたいのは本当にそう思っているのか?」
黒崎さんは落ち着いたトーンでの確認。
わたしは同意するかのように、こくりと頷きながら
「はい、人助けになれればと思っています。」
本当は黒崎さんの言いたいことはそのときはまだわかってなかったところもあり、率直に最初に思ったことを告げる。
黒崎さんは言い終えると、今度は穂刈さんから
「麻美ちゃん、生半可の覚悟じゃ駄目よ?それでもいいの?」
いますぐにでも引き返してもいい、といわんばかりにわたしのほうに視線を向ける。3人とも真剣な表情だ。そこでわたしは本当のことを言っていた。
「はっきり言えば、怖い。覚悟がないかもしれない。向いてないかもしれない。ですが、自分にできることはやりたいんです。目の前に自分のできることがあるかもしれないのに、できないのは正直言って嫌だ。」
思えば日本にいたときもそうだった。日雇いのときも、出禁になった現場でまた募集があるのを目の前に仕事があるのに仕事できないのは正直言ってもどかしいし、悔しかった。せっかく稼げるのに稼げないという悔しさがあり、それがほかの現場でも頑張るというのがわたしの原動力だった。それも今も変わっていないと思いたい。
その覚悟を恵子さんは受け取ったのか、恵子さんは
「いいわ、明日修行をつけてあげる。必死に食らいつきなさい。ただ、名前は大神美夜子を名乗ってもいいけど、一般人としての、大神美夜子。それに修行は私だけじゃ足りないから護さん、真希にも手伝ってもらうようにする。いいわね?」
と、わたしに問いかけてきた。一般人とはどういうことなのかはわからなかったが、とりあえずは相手の応答には、もちろん大丈夫です、と、口を開こうとした。だが、わたしが言おうとしたそのときに、穂刈さんが割って入ってきた。
「怖いのね。その怖さを忘れないように。それが一番大事なこと。これの意味することは自分で探すこと。私からは以上」
「はい、わかりました。」
恵子さんの言い分に、わたしは恵子さんの話を肯定することを言いそびれたものの、わたしは肯定の意味と受け取り、納得したかのように軽く何度も頷く。そして黒崎さんのほうに視線を向ける
「今日は持ってきてないが、明日夕方の10時ごろに協会の加入のための契約書を含む手続きするための資料を持ってくる。それと穂刈さん、小野原さんへの修行は、穂刈さんも可能な範囲で構わない。頼めるか?」
「えー?私も?まあいいけど、やるからにはもちろん、私に出来ることなら何でもやるから、麻美ちゃん覚悟しててね!」
言い終えるとわたしに右手でわたしのほうに指さしてきた。
はて、少し違和感を感じたが、そのときのわたしはそこまで気づかなかった。むしろこの威圧感のあるような面接のおかげで気づかず、むしろわたしは許可もらったことに対して、なのだが感謝の気持ちでわたしは頭を下げて
「よろしくお願いします。」
と、告げた。そのあとは穂刈さんと黒崎さんーーー主に穂刈さんが一方的にだが、色々と昔話を煎餅を頬張りながら聞いていた。




