過去編~二人の久しぶりの対面~
邪馬2651年 3月12日 小雨 19:08
日本の神社の構造はわからないが、ここの神社は拝殿の後ろの社務所がいわゆる自宅を兼ねている。さらにその先には宝物殿、という倉庫になっている。どれも比較的年季が感じられる。後でわかったことだが、元の建物は築200年以上、リフォームしてないためところどころガタが来ている、といった状態である。
わたしと黒崎さんと穂刈さんが3人社務所に入っていく。最初に入っていくのは穂刈さん。穂刈さんは、どうも一番乗りに行きたい癖がある様子。わたしも日本にいたときは何気に一番乗りしたいと思ってもいたから、その気持ちがわかる。その次にわたし、黒崎さんと続く。そして穂刈さんは懐かしく思うのか「10年前と変わってないね」とか「この玄関のお皿まだあったんだ」とか、はしゃいている様子。黒崎さんは特に何も言わないあたり、彼女のいつもの光景なんだろうか。というか10年も放置されたことに対して少し驚くというより呆れる。ずっと恵子さんを一人にしてたのかと。
「ただいま」
わたしが帰ってきたときに開口一番にこのことを言ったときに穂刈さんは口に手をやりクスクス笑ってしまった。まあ不快な気分は不思議となかった。何よりも黒崎さんの無表情さの視線が目の前の穂刈さんよりも恵子さんを探している様子でもある。黒崎さんを一瞥した後、わたしは借りてきた草履を脱ぎ、とりあえずきれいに揃えて昼まで恵子さんのいるであろうところに行こうとした。だが、穂刈さんは「私、恵子のところにちょっと挨拶に行ってくる」といい、恵子さんのいるところを知っているのか、茶色のローファーを大雑把に脱ぎ、ドタバタと最初の大広間の室内に入っていく。わたしは呆れたように同じように追随していくと、黒崎さんも黒の革靴を脱ぎ、穂刈さんの靴も直しながら一緒に入っていった。
最初の大広間からは恵子さんの姿はない。ただ改めて見ると、長く人が来なかった割にはまあまあ綺麗と思うのは、定期的に誰かが来ていることだろう。とはいえ少し埃っぽいのは仕方ない部分ともいえる。恵子さんはどこにいるのか、と、思ったら奥の寝室から恵子さんと穂刈さんが一緒に出てきた。恵子さんは笑みを浮かべながら、穂刈さんは、恵子さんを久しぶりに見たからだろうか、落ち着きを取り戻していた。
「あら、久しぶりね、護さん。半年ぶりかしら。真希ともども元気そうね。この子のこと大体聞いた?」
「ん。」
小さく肯定の頷きをする黒崎さん。穂刈さんの下の名前真希、というのか、というどうしようもない言葉に納得しながら、二人が対面しているのを見つめていた。
少し気になることもあり、さすがに二人に聞かれたら色々アレだったので、わたしはとりあえず穂刈さんのところに歩を進めて
「穂刈さん、二人の邪魔しないところにちょっとどこか行きませんか?」
という穂刈さんに告げると同時に心の中で器用に
(二人で久しぶりにお話しでもどうぞ)
と、恵子さんに心の中で念じるかのように言う。ここで冷静になって気づいたのだが、黒崎さん、穂刈さんは心読めなくて、恵子さんは”幽霊”だからか聞こえる、ということだろう。たぶん。
「ん?いいけど。じゃ、2階に行くか。黒崎さんも恵子に挨拶に行ってきたら?」
「わかった、ありがとう。」
そう言い終えると同時にわたしは大広間に行くふすまを閉じて、一緒に穂刈さんと2階まで行ったのだった。




