27話 マリアの秘密
「ところでさ、ラルムはなんで魔王が生まれる前の話を知ってるの?魔王から生み出されたんなら、魔王が生まれる前の出来事は知る術がないんじゃない?」
僕がふと感じた疑問をラルムにぶつけると、サーシャが言われてみれば!と眉間にシワを寄せ言葉を続けた。
「何よ!アンタ口から出任せいってたの?」
サーシャの剣幕に、負けじと言葉を返すラルム。
「ちげぇよ!魔王はもともと人間だったんだ。俺はあいつが人間だった頃に生み出されたモンスターなのさ。だから、魔王が生まれる前、この大陸がどんな状態だったかも知ってるわけよ」
「えっ!?魔王って元々人間だったの!?それじゃどうして今は魔王になんてなってしまったの?」
僕がそう言うと、ラルムはわざとらしく首を横に振りこう話を続けた。
「それは、それは、聞くも涙、話すも涙な壮大な物語でなぁ。三日三晩は語れるんだが…」
「じゃあ、いいわ。そんな悪党の生い立ちなんて、私、興味ないもの。それより、始まりの勇者アイゼンリッヒと、魔法使いマリアの事を教えてよ!」
「中々ひでぇ言い草だな、お嬢ちゃん」
「そうだよ、大体その2 人はラルムにとっては生みの親を封印した人達だよ。あんまり語りたいとは思わないんじゃないの?」
僕のその言葉にラルムは、普段と変わらない口調でこう言葉を返した。
「いや、別にいいぜー。俺、その2人とマブダチだもん」
「ええっ!マブダチ!?」
「ちょっと!何がどうなってそうなるのよ!!」
ラルムの思っても見ない返しに、僕とサーシャは一斉に声を上げる。
僕たちの食いつきの良さに、少し苦笑いしながら、ラルムは言葉を続けた。
「いやぁ、これも話すとなげぇんだが…まぁ、俺のことはどうでもいいだろ?
俺はなぁ、特にマリアと仲が良くてな。あいつとの思い出は昨日のことのように覚えてるよ。マリアはなぁ、優しい良い女だった。あいつの腕に抱かれて感じた、あの乳の弾力を俺は今でも忘れねぇさ」
そのラルムの言葉に、ガクッとズッコケたサーシャ。
「何よ、そのアホな感想は!真面目に聞いた私が馬鹿だったわ」
サーシャがラルムに怒っている横で、僕はラルムの言葉が本当か気になってしまい、もう一度マリアの像に目をやった。いや、仕方ないのよ。…これはもう、男の性と言うやつだ。
言われてみれば確かに、マリア像の胸の膨らみは豊満である。ラルムってば、あの大きな胸の感触を、身体全体で味わったのか…。何とも羨ましい限りだ。
「ラルムは、あの胸に身体全体で抱かれたのか…。いいなぁ」
…あ、しまった、声に出してしまった。
そう思ったのとほぼ同時に、パチーンと良い音を立てて、僕はサーシャに頭を叩かれてしまったのだった。
「アンタもマリア像をマジマジと見ながら、バカな感想言わないの!」
「イッター!何すんのさ!」
「まぁ、セオ。お嬢ちゃんが怒るのも無理ねぇさ。なんせ、お嬢ちゃんのお胸は中々の貧相っぷりだからな。マリアと比べられちゃ、たまったもんじゃないだろう」
「ア・ン・タね〜!!マジでこ○す!!」
「待って、サーシャ!!おちついて!!」
サーシャが杖を取り出し、本気でラルムに魔法を繰り出そうとしたので、慌てて仲裁に入る僕。
えーっと…何が話題を変えないと…そうだ!
「ねぇ、ラルム!僕、アイゼンリッヒの話も聞きたいなぁ。ね、サーシャもアイゼンリッヒがどんな人だったか気にならない?」
サーシャを羽交い締めにしながら、そう言うと、まぁ確かに気になるけど…とサーシャの勢いが少し弱まったのを感じた。
よし、いい感じだ!あとはラルムがしくじらなければそのまま話はそれていくだろう。
「アイゼンの話かぁ?それより俺はマリアがいかにイイ体…じゃなかったイイ女だったかについて語りてぇんだが…」
「やっぱりアンタは、こ○す!」
「もー!ラルム!!僕の助け舟を台無しにしないでよ!!」
そんなこんなで、ガヤガヤと言い争いをしていた僕たち。
やがて、あまりに騒がしいもんだから、通行人たちが僕たちのことをチラチラと見始めた。
その事に気づいた僕は、ちょっと!2人とも騒ぎすぎて人に見られてるよ!いい加減落ち着つこうよ!と少し抑え気味に声をかけた。
あたりの視線に気づいたサーシャは、少し恥ずかしそうに頬を赤くして、しょうがないわね…あとで覚悟しなさいよ!とラルムに小さくそう言ったのだった。
まぁ、そう言われたラルムは少しも悪びれた様子はなかったけどね。




