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palette  作者: 棠 智果
HEART
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9/22

#01

*金糸雀


愛されたいから 籠の中から鳴く

出してくれないことは知ってる


このからだも 本当はそんなに

気に入っていないけど

あなたが大事にしてくれるから

おしゃれなんか興味ないふりをする


生まれ変わる機会があるなら

あの 窓の外にいる

烏にでもなってみたいの


今はあなたに愛されているから

次は思いっ切り嫌われてみたいの



*キャラメル


焦がした砂糖の香りが 昔は苦手だった

鬱屈するような あてつけがましい懐かしさが

胸に詰まる感じがして


でもそれは きっと

懐かしむものが なかったせい


口に含んだキャラメルが

今は私に 帰る場所をくれる



*雨天決行


番傘に 詰襟の外套

夜闇にまぎれてしまうあなたを

どうか追わせてください


恋は厄介なもので

見えないくせして あたりはとても鮮明で

まるで麻薬みたい

あなたばかりが 万華鏡のよう


雨を冒して 下駄を鳴らして

夜闇に煌めくあなたを

ひとり 追わせてください



*夜は短し


特別なひとになんて なれないと知ったから

努力するしかないの

無責任に笑うしかしないあなたにも

あたしは 愛想尽かしたから


短い夜を少しずつ削って

翳のあるひとになれるように

その分 あたしは純潔をなくす

そうでもしなければ

あなたは あたしを見ない

あの子を目で追うあなたを見て

そう確信したの


冷たい女は嫌いなんて よく言うわ



*怪奇小説


ヒロインは気を失って

ヒーローは 彼女を横抱きにして

窮地を切り抜けるために走り出す


どっちになれば 私は幸せでしょうか


昔から ヒロインになり切れなくて

ずっとずっと 脇役だった

そんな自分に価値なんてないと思っていた


今もそう

なり切れないヒロインをやるよりも

ヒーローから役割を奪ってでも

価値ある役になりたい


まるでモンスター

それでもいいのだけれど



*鏡台


“私”を装った僕は

あの子にとても愛された

あの子を僕は 愛せなかったのに

とても尽くしてくれた


心地よくて 心苦しくて

何度目かの拒絶も 失敗して

あの子との間には歪な溝ができて

それはやがて 遠い地平になり

すっかり分裂してしまった


それでもあの子は

僕とのことを 何ひとつ悪い思い出にしないで

お別れの前に 声を掛けてくれた


“私”でいることを許してくれた

あの子を 僕は忘れたくない


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