#01
*金糸雀
愛されたいから 籠の中から鳴く
出してくれないことは知ってる
このからだも 本当はそんなに
気に入っていないけど
あなたが大事にしてくれるから
おしゃれなんか興味ないふりをする
生まれ変わる機会があるなら
あの 窓の外にいる
烏にでもなってみたいの
今はあなたに愛されているから
次は思いっ切り嫌われてみたいの
*キャラメル
焦がした砂糖の香りが 昔は苦手だった
鬱屈するような あてつけがましい懐かしさが
胸に詰まる感じがして
でもそれは きっと
懐かしむものが なかったせい
口に含んだキャラメルが
今は私に 帰る場所をくれる
*雨天決行
番傘に 詰襟の外套
夜闇にまぎれてしまうあなたを
どうか追わせてください
恋は厄介なもので
見えないくせして あたりはとても鮮明で
まるで麻薬みたい
あなたばかりが 万華鏡のよう
雨を冒して 下駄を鳴らして
夜闇に煌めくあなたを
ひとり 追わせてください
*夜は短し
特別なひとになんて なれないと知ったから
努力するしかないの
無責任に笑うしかしないあなたにも
あたしは 愛想尽かしたから
短い夜を少しずつ削って
翳のあるひとになれるように
その分 あたしは純潔をなくす
そうでもしなければ
あなたは あたしを見ない
あの子を目で追うあなたを見て
そう確信したの
冷たい女は嫌いなんて よく言うわ
*怪奇小説
ヒロインは気を失って
ヒーローは 彼女を横抱きにして
窮地を切り抜けるために走り出す
どっちになれば 私は幸せでしょうか
昔から ヒロインになり切れなくて
ずっとずっと 脇役だった
そんな自分に価値なんてないと思っていた
今もそう
なり切れないヒロインをやるよりも
ヒーローから役割を奪ってでも
価値ある役になりたい
まるでモンスター
それでもいいのだけれど
*鏡台
“私”を装った僕は
あの子にとても愛された
あの子を僕は 愛せなかったのに
とても尽くしてくれた
心地よくて 心苦しくて
何度目かの拒絶も 失敗して
あの子との間には歪な溝ができて
それはやがて 遠い地平になり
すっかり分裂してしまった
それでもあの子は
僕とのことを 何ひとつ悪い思い出にしないで
お別れの前に 声を掛けてくれた
“私”でいることを許してくれた
あの子を 僕は忘れたくない




