#02
*夜霧
鍵穴から覗いた世界は 遠く
だれかの背中を追うよりもずっと
ファンタジーじみて見えた
一字決まりの骨牌に手を伸ばすより
取り違えるくらいがいいと すっかり決め込んで
夜霧は滲む
鍵を手にしたあの人の背中が
藍色に溶け出す頃
*噫 形骸と 深淵と
月夜の高速道路は まるで
ため息の中に浮かんでいるみたいだった
どこまで遠くへ行けるだろう
僕とあなたは 黙ったままで
ただ走り続けた
独り善がりな擬似恋愛に疲れて
お互いに そっとしていてほしくて
冷たい空気に僕らは流れていく
朝になったら どこかで休もう
僕はそう言って あなたを見た
あなたは深い目で僕を見て
声もなく微笑んだ
疲れた僕らは
それぞれの孤独を分け合って
狭い座席に身を預ける
この深淵に 何かを置いて行くため
*鮮やかなるもの
まったくの作り物でもなく
また 絵空事でもなく
ただ曖昧に混ぜて
誰にともなく差し出す
受け取った誰かが また
その内にあるものを織り込み
他の誰かに譲る
どこかで誰かが それを削る
別の誰かが 整えて
また別の誰かによって それは姿を変える
まったく知らぬ者が それを見つけ
その手に乗せ あるいは眺め
感覚のすべてで それを認めたとき
それは初めて 輝きの中に生まれる
*感嘆符 あるいは
パトロンの夢に
成すはブラフか
カタストロフか
あるいは如何様
知られぬうつつ
先人のゆめごと
退廃と黙示録は
不安の谷にあり
焚書はタブーか
アルカナの月に
運河は観測され
開拓の旅人風情
拒絶にひれ伏す
夢あるいは僥倖
符号あるいは轍
囀るは道化師か
パルサーか瞳か
*Carmen la Karma
愛に生きて 愛に死ぬため
愚かさも 愛した
奔放なジプシーのように
業を重ねても 満たされようと
スペードに呪われようとも
そのすべてが愛ならばと
最後の足掻きを振り切るのも
大いなる愛のためならばと
密かに覚悟を決め
それでも生きて行く
それだけが我が命の美しさと信じて
*罪深きもの
項垂れて ロザリオを握り締め
罪深きものは街道に立つ
シスターの目に 哀れみを浴びせられ
純朴な子供に 指を差される
雨はその見窄らしい肩を打ち
野良犬も構わない
罪深きものは 立っている
そうしている自分だけを見つめて
*歌に乗せて
雨の森が 遠くから呼ぶ
白い空が 風を鳴らす
この手は 杖をたずさえて
この足は 一心に進む
歌が響いてくる
愛の歌が 悲しみの歌が
導きのように
あなたが居る
木々の向こう 霧の中
白い空の下に
僕を呼んで 歌っている
聴こえるから
どうかその歌をやめないで
会える時まで
その詞を絶やさないで




