#03
*光芒と旗と
さんざめく西陽に眼を細め
その影は僕を追う
雲間に揺らぐ 光明の蜃気楼
ひとつふたつと 夢を投げかけ
君が待つ あの街角に
しがらみなどなく
苦悩も傷も すべて塵と舞い
金色の陽があまねく照らす
病める耳に 魔性のささやき
この足を 止めてはならない
*HELL
理想郷ならここに在った
我々の足の下に 絵空事として
人々はそれを見ていたが
そこから退こうとしなかった
たくさんの鏡に囲まれようとも
君の眼は一点を凝視し
沼地のごとき夢を幻視する
瞑目 息を数え
時に我が身を刻まんとして
五体を針の野に投げ出す
その姿 聖なるものと視る者すら在り
賽は投げられ
過ちは 正されず
*フラクタル
見るは天上のフラクタル
炎の演舞 燦燦と
天上へ 天空への回廊に
螺旋は重なり また目映く
今 明らかな 摂理の勝利
無知は罪と知り 愛は罠と知り
大脳の機関は 慈悲を超え
口角に笑み 虹彩に光り
喝采は渦となり 渦は貌を成し
踊れ地上のフラクタル
*やまなし
銀の水面に こがねのやまなし
翻り 月夜は満ちて
泡沫に光は弾む
きょうだいよ 星のもとに
コンパスの針を恐れるなかれ
連れ去られようとも
廻る天球 九十九の声に
暗闇を 見据える水底
*唐傘慕情
目を引く 蛇の目の唐傘
眉間に紅を引いた傾奇者が
「ごきげんよう」と笑みを浮かべて
狐の嫁入りに消えてゆく
名も知らぬ 六尺の若者
下駄を鳴らして 乙女のように
誰とも似つかぬ あやかしの君
*Alice
羽根飾りのナヴァホの狩人が
夢見がちな少女の前を通り過ぎた
エルバッキーが示す道の先には
貴族が粗茶を酌み交わし
おそろしい部族の女首長は
不機嫌まかせに力無き開拓者の首を刎ね
少女は魔女狩りの餌になった
殺せ 殺せ
大衆の野次が断頭台の下から雨音のように
処刑人の怒声が雷鳴のように
野次と怒声
雨音と雷鳴
耳から頬へ 全身へ
木陰で少女は雨に濡れ
おとぎ話にはほど遠い悪夢から醒めた




