#07
*candy
透明な視線が ぼやけた風景を穿つとき
次の1ページが 新たな分岐にさしかかる
ありもしない第六感に
誰もが悩まされている
原初を見るような既視感に
誰もが見て見ぬふりをする
透きとおった一閃で世界に色をつけて
覚めても覚めきれない
そんな夢を 誰もが
*秘密裏
かろうじてあなたは お天道様の下にいる
のうのうと生きている
空色の目で
生きとし生けるもののひとつとして
光の恩恵を受ける
私がこんなにも 憎んでいることを知らずに
幸せ者なのに 気付かないでいる
それがいちばんの幸せなのを
あなたは どこで学んだの
*回送電車
夜が迫ってくる
空白と0と暗闇とを連れて
心に大きな穴を開けに
自分の名前さえ知らない嬰児のように
無邪気な寝顔のまま
夜を 遠くへ遠くへ
明けることのないように
追いかけるように飛び続けよう
せめて 染まらないように
純粋でいられるように
*シルク
あなたの嘘を証明するための材料なら
私ひとりで充分
私ひとりの 純潔さえあれば
あなたが汚れているのか
そのベールが汚れているのかが解る
*cry
悲しいって ひとことでも言ってみろ
苦しいって 1度でも口にしてみろ
聞いてもいないのに
お前よりも悲しく お前よりも苦しいと
誰かが主張してくるだろう
お前がそんなことで
余計に苦しむことなんてないから
そうなる前に どうか
僕のもとに帰ってきて
*ビスクドールの頬
あなたが おとなになるために
なにもそんなに たくさんのものを
すてるなんてことは
ほんらいなら ひつようありません
むかしのあなたと いまのあなた
そして みらいのあなた
どれも べつべつの
にんぎょうにして
いつでも おもいだせばいい
おとなになる ということ
としをかさねる ということは
ひとえに そういうことです
*Blood Black
静かの海に浮かんで
青い星が ゆっくりと地平へ落ちるのを
黙って眺めていた
いつもそうやって 夜を明かしている
僕が遠くに来てから
長い年月が過ぎて
君には 新しい恋人ができて
彼は 新しい車を買って
あの子は 仕事が変わって
たくさんのことがあった
最後に言葉を交わした相手の顔も
もう 思い出せなくなって
僕のからだは すこし軽くなった
君には 子どもがいるのかな
彼には 新しい家があって
あの子には 生きがいがあって
僕には 何が残ったのかな
生きた証とか そんなかっこいいもの
ないみたいだけど
そうして またすこし軽くなった




