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palette  作者: 棠 智果
Orange
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7/22

#07

*candy


透明な視線が ぼやけた風景を穿つとき

次の1ページが 新たな分岐にさしかかる


ありもしない第六感に

誰もが悩まされている

原初を見るような既視感に

誰もが見て見ぬふりをする


透きとおった一閃で世界に色をつけて

覚めても覚めきれない

そんな夢を 誰もが



*秘密裏


かろうじてあなたは お天道様の下にいる

のうのうと生きている

空色の目で

生きとし生けるもののひとつとして

光の恩恵を受ける


私がこんなにも 憎んでいることを知らずに


幸せ者なのに 気付かないでいる

それがいちばんの幸せなのを

あなたは どこで学んだの



*回送電車


夜が迫ってくる

空白と0と暗闇とを連れて

心に大きな穴を開けに


自分の名前さえ知らない嬰児のように

無邪気な寝顔のまま


夜を 遠くへ遠くへ

明けることのないように

追いかけるように飛び続けよう

せめて 染まらないように

純粋でいられるように



*シルク


あなたの嘘を証明するための材料なら

私ひとりで充分


私ひとりの 純潔さえあれば

あなたが汚れているのか

そのベールが汚れているのかが解る



*cry


悲しいって ひとことでも言ってみろ

苦しいって 1度でも口にしてみろ


聞いてもいないのに

お前よりも悲しく お前よりも苦しいと

誰かが主張してくるだろう


お前がそんなことで

余計に苦しむことなんてないから

そうなる前に どうか

僕のもとに帰ってきて



*ビスクドールの頬


あなたが おとなになるために

なにもそんなに たくさんのものを

すてるなんてことは

ほんらいなら ひつようありません


むかしのあなたと いまのあなた

そして みらいのあなた

どれも べつべつの

にんぎょうにして

いつでも おもいだせばいい


おとなになる ということ

としをかさねる ということは

ひとえに そういうことです



*Blood Black


静かの海に浮かんで

青い星が ゆっくりと地平へ落ちるのを

黙って眺めていた

いつもそうやって 夜を明かしている


僕が遠くに来てから

長い年月が過ぎて

君には 新しい恋人ができて

彼は 新しい車を買って

あの子は 仕事が変わって

たくさんのことがあった


最後に言葉を交わした相手の顔も

もう 思い出せなくなって

僕のからだは すこし軽くなった


君には 子どもがいるのかな

彼には 新しい家があって

あの子には 生きがいがあって

僕には 何が残ったのかな

生きた証とか そんなかっこいいもの

ないみたいだけど


そうして またすこし軽くなった

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