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palette  作者: 棠 智果
風見鶏
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19/22

#05

*Planet


よく似た僕らが歌う歌

声を重ねて

見えないてのひらで

言葉ひとつが 雨粒になるまで


遠くに見える小さな窓を

僕らは希望と呼んで

そこまで続く冷たい床を温めるすべが

それぞれの自立だとすっかり決め込んだ

そうしないといつまでも揺らいでしまう


時が青色に流れていくのを

水の底のようなベッドから見上げて

終わってしまわないように 強く手を握った

ふたりの窓を叩く誓いの雨が 正しさを囁くのに紛れて

きみが夢を歌うから

まぶたが落ちる間も無く現実は息を潜める


ささやかな冷たさを湛えて

どこかよそよそしく改まったきみの態度

その薄氷の下を流れる大胆な愛が

何よりもおそろしく僕を包み込む

熱くて 呼吸を忘れそう

それでいて 僕の命を加速させる


月のような 海のような

きみの存在が

この小さな部屋を 惑星に変える



*Headphones


白い額縁のようなヘッドホンが

君の丸い頭を囲う

小さな手は スイッチを探して

昆虫のようにさまよう

君の目は わずかに伏せられて

すこし困って見える


なぜだか分からないけど

目が離せないんだ


すれ違ったあの夕暮れ

君はきっと僕に気付かないで 通り過ぎた

だけど そんなことはどうだってよくて

街灯に浮かび上がる額縁が

気が付けば 君の姿として 頭の中にあった


その中を満たす音に

君の大理石のような心は 動かされる

冷えたバターのような肢体は 揺らされる


そんな 何気ないことさえ君と交わせずに

終わりの季節を迎えてしまうなんて



*Peak


白い鋭角が 青い視野の中心を陣取る

その冴えた先端が溶け出して

かじかむ唇を 決意であたため始める


言わなきゃ

ことばにして 確かめさせなきゃ


こんなにも難しい 心の行方を決めなきゃ



*sweetheart


どこまでも好きになれそうな言葉はいつも

愛しい人への呼びかけだった


わけもなく苦しくて 悲しくて

目の前が砂嵐に歪む夜

誰にともなく そっと囁く

「泣かないで 親愛なる人」


すると突然 なにかが解けて

苦しさのわけが 明るみに出る

どうしたらいいかが分かる


いつも愛が 助けてくれる



*彼岸花


今年も 赤と緑が鮮やかに

水辺を彩る


火花のような 彼岸花

悲しいくらいの赤さが

どうしても ありもしない記憶を生み出す

強すぎる想いを その色に見つける

破壊的で 暴れ出しそうな

孤独な乙女の危険な純情


浮世離れした片想いみたいで 清々しい花



*例えば ちぎれ雲に想いを寄せるような


小さな旅のうち とことん悪運につきまとわれる時がある

その後もなにかと 嫌な思いをしそうな予感がし続ける


そんな時に限って あなたの声を聞く

どうして こんなタイミングの方が

あなたをまっすぐに見られるんだろう

「あなたに会うと思っていなかった」って

すんなり口から出てきてしまうんだろう


だけどそれが

小さな絶望の連続を 絶ってくれた

結局 晴れた視界の中で

好きな本を あなたにあげてしまった


また会えるような気がしている

もう「二度と」も「ずっと」も信じていない

偶然があまりにも 心に優しいから

約束と 責任のほかは

肩の力を抜いて 風の答えを待っていたい



*おわかれ


おめでとう

君に言うべき言葉は 間違いなかった


君がくれたあの時間

君の仕草 味の好み 柔らかさ

なぜか覚えていたけど 今度ばかりは

僕なりの 贈り物をしたかった


意味は 言わないでいるから

純粋に 楽しんで使ってほしい

一本の万年筆と 三つのインク

僕が好きなものを 君にも教えたいんだ


いつかまた会ったら

好きになれたか 聞かせてほしい

その日まで お元気で


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