#02
* Darling
少し腕を曲げないと 手を繋げない
少し屈んでもらわないと 耳打ちできない
継ぎ接ぎな 私たち
ほんの少しの精一杯が
2人の視界を重ねる
それを何と呼ぶかは 誰にも分からない
* Petals
暗い森の中 月光が白い花弁を照らす
大気のベールは群青色
プレアデスのように 輝く花
あまりにも眩しくて 目が覚めた
夢だったのか 今でもあやふやで
花の香りさえ 思い出せる気がして
こうやって 勝手に思い出は色付けられるのかと
部屋の隅を見つめることしかできない
青白く 輝く花弁
今でも時々 胸がはっとする
* Fluid
五感が冴え渡る瞬間
世界は私の喉へ飛び込む
肺を満たし 目から溢れて 血に変わる
その一連の流れに 飲み込まれる
入れ子式の人形になる
例えば 雷が夜を昼にしたり 夜空に内面を見たり
あまりに大きくて 不確かにさえ思える現象が実は
気持ちなんかより 言葉なんかより
ずっと確実にそこにあって
納得できて 信じられるからこそ
その気持ちの正体が知りたくて
思わず ホルマリンに飛び込んでしまう
流動的でありながら 何よりも確かな存在の前に
心は標本になってしまう
* Pluto
ずいぶん昔の話だった
遠くの星は 楕円軌道に乗って
僕らが生きているよりもずっと長い時間を旅する
冷たく 赤く 目には到底見えない
その姿は ついさっき 明らかにされて
色んなことが 事実として知られた
隠れていたわけじゃないのに
ずっとそこにいたのに
それは たくさんの注目を浴びて
だけど ずいぶん昔に外された仲間には
戻れるわけもなく
* Katzen
例えるなら ベロアのワンピース
暗い緑色で 白い襟がついていて
慎ましやかでないと 着こなせない
そんな生き物
音もなく 近寄ってきては
何の用もないとでも言うように 窓の外ばかり見る
その宝石の目が 空ばかり見ているのに
この目は その姿に釘付けになる
似合うのは オルガンの音
白い食器 あるいは 透明な秋空
時々 無邪気に振る舞うのも 知性あってこそ輝く
そんな 自由な生き物
* 少女ベリンダ
もう今じゃ誰も歌わないラブソング
私も少し うろ覚え
きっと セシルよりも知られていない
ベリンダを想う歌
若きアナーキストが歌う 悲しいバラードを
なぜか 輪郭だけ思い出していた
70年代 暗いライブハウス
レザーのジャケットに身を包んで
髑髏マイクを握りしめて
見も知らぬ景色が 断片に浮かび上がる
白昼夢から覚めても 耳から離れない歌声
その裏にたたずむのは
永遠に想われ続ける 幸福なベリンダ




