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palette  作者: 棠 智果
風見鶏
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16/22

#02

* Darling


少し腕を曲げないと 手を繋げない

少し屈んでもらわないと 耳打ちできない

継ぎ接ぎな 私たち


ほんの少しの精一杯が

2人の視界を重ねる


それを何と呼ぶかは 誰にも分からない



* Petals


暗い森の中 月光が白い花弁を照らす

大気のベールは群青色

プレアデスのように 輝く花

あまりにも眩しくて 目が覚めた


夢だったのか 今でもあやふやで

花の香りさえ 思い出せる気がして

こうやって 勝手に思い出は色付けられるのかと

部屋の隅を見つめることしかできない


青白く 輝く花弁

今でも時々 胸がはっとする



* Fluid


五感が冴え渡る瞬間

世界は私の喉へ飛び込む

肺を満たし 目から溢れて 血に変わる

その一連の流れに 飲み込まれる

入れ子式の人形になる


例えば 雷が夜を昼にしたり 夜空に内面を見たり

あまりに大きくて 不確かにさえ思える現象が実は

気持ちなんかより 言葉なんかより

ずっと確実にそこにあって

納得できて 信じられるからこそ

その気持ちの正体が知りたくて

思わず ホルマリンに飛び込んでしまう


流動的でありながら 何よりも確かな存在の前に

心は標本になってしまう



* Pluto


ずいぶん昔の話だった

遠くの星は 楕円軌道に乗って

僕らが生きているよりもずっと長い時間を旅する

冷たく 赤く 目には到底見えない


その姿は ついさっき 明らかにされて

色んなことが 事実として知られた


隠れていたわけじゃないのに

ずっとそこにいたのに

それは たくさんの注目を浴びて


だけど ずいぶん昔に外された仲間には

戻れるわけもなく



* Katzen


例えるなら ベロアのワンピース

暗い緑色で 白い襟がついていて

慎ましやかでないと 着こなせない

そんな生き物


音もなく 近寄ってきては

何の用もないとでも言うように 窓の外ばかり見る

その宝石の目が 空ばかり見ているのに

この目は その姿に釘付けになる


似合うのは オルガンの音

白い食器 あるいは 透明な秋空

時々 無邪気に振る舞うのも 知性あってこそ輝く


そんな 自由な生き物



* 少女ベリンダ


もう今じゃ誰も歌わないラブソング

私も少し うろ覚え

きっと セシルよりも知られていない

ベリンダを想う歌


若きアナーキストが歌う 悲しいバラードを

なぜか 輪郭だけ思い出していた

70年代 暗いライブハウス

レザーのジャケットに身を包んで

髑髏マイクを握りしめて

見も知らぬ景色が 断片に浮かび上がる


白昼夢から覚めても 耳から離れない歌声

その裏にたたずむのは

永遠に想われ続ける 幸福なベリンダ



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