#01
*Fridge
壁に阻まれたような気持ちで
その真っ黒な目を見ていた
わたしの 悪い癖
どんなに愛されていても
からだをばらされて
冷蔵庫の棚に 並べられているみたいな
あなたを怖がっているような
そんな 居心地の悪さを感じる
もちろん 信じてる
だけど いつでも わたしの居場所は
あなたの隣ではない
欲しい時にしか 開けられることのない
真っ白な 冷蔵庫の中
気のせいだって 信じたくても
そのドアが閉じているあいだ
そこに誰かいるんじゃないかって
*rain
低気圧に乗って
痛みが下りてくる
おそろしいほどの 風が吹いている
ペトリコールが 都会の壁を這い上る
コンクリートに 雨の足跡
景色は灰色
心象はありえない値をはじき出す
雨音に紛れて 車の前に飛び出したくなる
*ペパーミント・ラスト
暑い風が吹き抜けた
薄荷の葉が揺れていた
今なら言える
どうしてあんな所にいたんだろう
どうして本当の正しさに気づけなかったんだろう
どうして 逆らえなかったんだろう
白熱灯が揺れる居間で
どんな有益なことが話し合えただろう
降り積もる雪を眺めて
どれだけ心が優しくなれただろう
思い出せる あの風景が
いったい何だって言うんだろう
*AMALGAM
境界線が消えるほど
自分が小さくなっていく
化けの皮を剥がれた気分で
諦めようとしている
こんなところに居たら
いよいよ呼吸まで忘れてしまうだろう
誰の視界にも入らない
鏡にも映らない
それだけを取柄に
またどこかの誰かになろう
*a day never comes
泣いたことは あっただろうけど
今更思い出すようなことでもない
むやみに揺るがされて
この足がどうにも地につかなくて
怖くなって
それからのことは 思い出せない
感情の押し売りが ひどく下手で
中途半端なあなたのことだから
またどこかで その滑稽な演技のまま
敵意も悪意も 見えないままで
来ない日を 望み続けるんだろう
*プラットホーム
ランダムに流れる人波に
どこまでも穏やかさをなくしてしまう
何もかもを 誰かのせいにして
冷たい人間になりたくなる
この嘆きさえ貴女に押し付けて
嘲笑って 見せつけてでも
穏やかでいたいのに
速度に任せて
壊したくなる
*WHALE
白い巨体を翻して
鯨が飛ぶ
息づく夜の海が
目の前にある
透明感と
色の深さと
月明りと
飛沫の輝きと
すべてが鐘の音のように
ガラスのように
澄んだ音を立てて
目の前を過る
どんな甘い言葉よりも
熱い夜よりも
この瞬間だけで
夢まで 染め上がるような




