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palette  作者: 棠 智果
風見鶏
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15/22

#01

*Fridge


壁に阻まれたような気持ちで

その真っ黒な目を見ていた


わたしの 悪い癖

どんなに愛されていても

からだをばらされて

冷蔵庫の棚に 並べられているみたいな

あなたを怖がっているような

そんな 居心地の悪さを感じる


もちろん 信じてる

だけど いつでも わたしの居場所は

あなたの隣ではない

欲しい時にしか 開けられることのない

真っ白な 冷蔵庫の中

気のせいだって 信じたくても


そのドアが閉じているあいだ

そこに誰かいるんじゃないかって



*rain


低気圧に乗って

痛みが下りてくる

おそろしいほどの 風が吹いている


ペトリコールが 都会の壁を這い上る

コンクリートに 雨の足跡


景色は灰色

心象はありえない値をはじき出す


雨音に紛れて 車の前に飛び出したくなる



*ペパーミント・ラスト


暑い風が吹き抜けた

薄荷の葉が揺れていた


今なら言える

どうしてあんな所にいたんだろう

どうして本当の正しさに気づけなかったんだろう

どうして 逆らえなかったんだろう


白熱灯が揺れる居間で

どんな有益なことが話し合えただろう

降り積もる雪を眺めて

どれだけ心が優しくなれただろう


思い出せる あの風景が

いったい何だって言うんだろう



*AMALGAM


境界線が消えるほど

自分が小さくなっていく

化けの皮を剥がれた気分で

諦めようとしている


こんなところに居たら

いよいよ呼吸まで忘れてしまうだろう


誰の視界にも入らない

鏡にも映らない

それだけを取柄に

またどこかの誰かになろう



*a day never comes


泣いたことは あっただろうけど

今更思い出すようなことでもない


むやみに揺るがされて

この足がどうにも地につかなくて

怖くなって

それからのことは 思い出せない


感情の押し売りが ひどく下手で

中途半端なあなたのことだから

またどこかで その滑稽な演技のまま

敵意も悪意も 見えないままで

来ない日を 望み続けるんだろう



*プラットホーム


ランダムに流れる人波に

どこまでも穏やかさをなくしてしまう

何もかもを 誰かのせいにして

冷たい人間になりたくなる


この嘆きさえ貴女に押し付けて

嘲笑って 見せつけてでも


穏やかでいたいのに

速度に任せて

壊したくなる



*WHALE


白い巨体を翻して

鯨が飛ぶ

息づく夜の海が

目の前にある

透明感と

色の深さと

月明りと

飛沫の輝きと

すべてが鐘の音のように

ガラスのように

澄んだ音を立てて

目の前を過る


どんな甘い言葉よりも

熱い夜よりも

この瞬間だけで

夢まで 染め上がるような



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