7話 些細な共通点
真村は科捜研を後にして、一課のフロアに戻り、デスクでは岩馬が資料をずっと見つめていた。視線を外し、背もたれに体を預け、大きく伸びをした。体を伸ばしきった後、真村と目が合った。
「あっ! お帰りなさい。」
「だいぶ、お疲れみたいだけど何か分かった?」
「へええ…みっともない所、見られてしまいましたね…」
だが、岩馬はさっき程の照れ笑いが消え、真剣な表情に切り替わった。
「実は4件の被害者には共通点があって、それは高校が同じでした。」
「高校が同じ…?」
被害者の共通点…。先程まで、不可解な謎が続いていた。
その何気ない情報が、真村にとっては解決への大きな一歩に感じた。
「なるほどね…偶然にしては出来過ぎてるわね」
「ただ、大学は別々みたいです。」
真村はその情報を聞いた瞬間、ある疑念が生まれた。思考を巡らせるなかで
ある仮説が浮かんだ。
「………なるほどね」
「おそらく、大学に入ってからは繋がりが薄いかもしれないわね」
その仮説に岩馬は思わず、ポカンとした表情を浮かべた。
「なんで分かるんです。」
「もし、玲香の友達が3人も溺死してるのに、川遊びしたいと思う?」
「そりゃあ、遊ぶ気は…そういう事か」
目が見開くような表情で、思いついた仮説を真村に話した。
「お互い、大学に入ってから疎遠状態だから、もう動向が分かってない」
「そして、この時期はよくある事故として処理されてるから、ニュースを見てもあまり知らない」
真村は思わず口角を上げたあと、真剣な表情に切り替えた。
「まあ、でもこれはまだ、あくまで仮説だけど、どっちにしても殺人なのは確定してるから」
「今、被害者の共通点が分かった以上、電話照会には繋げられるわ」
「なるほど、てか殺人で確定なんですか?」
そして、真村は科捜研の解析結果の用紙を取り出し、岩馬に見せた。
「見ての通り、どう考えても、誰かが意図的に犯行を行った跡がある」
「ちなみに、あんたも河童みたいって言わないでよ」
岩馬は思わず動揺し、目が左右に動き出した。
「そんな…わけ…ないですよ。やだなもう笑」
その反応を見て、真村は思わず頭を抱えた。
「図星かい」
呆れた表情をしながらも、真村は気持ちを切り替えて、話を続けた。
「まあ、謎は深まるばかりだけど、この状況なら、電話照会には繋げられる」
その後、真村は風谷がいるデスクに向かった。科捜研の画像解析の結果、被害者の共通点など、様々な情報を伝えた。
「なるほど…確かに、電話照会の価値はある。」
「だが、判断が事故から殺人に変わる以上、私だけでは難しい。皆川警視に相談する必要があるな。」
警察にとって、事故から殺人に変わる…。それは、判断を誤れば信頼を失いかねない重大な決断だった。その為にも真村や風谷にとっても、慎重に行動をする必要があった。
「しかし、皆川警視は科捜研に対してあまりいい印象を持っていません。過去に何度か、皆川の部下と価値観のずれで、科捜研の詩織主任とも揉めた事もあります。そう簡単に上手くいかない気が…」
皆川は署内で現場第一主義の刑事として有名だった。皆川に育てられた刑事はその思考を受け継ぎ、時々、空島と価値観のずれで揉める事が過去にあった。
「大丈夫だ、そこは任せろ。」
そう静かに口にし、デスクから立ち上がり、フロアを離れた。真村は改めて捜査資料の一件目の担当刑事を見て、口角を上げた。
「なるほどね…




