5話 科捜研主任
真村と岩馬は自分のデスクに席をつき、風谷が用意した資料に手を出す。
まず、真村が最初に手を出した資料、それは事故現場の被害者の写真だった。
1件目 2件目 3件目 そして、新たに追加された4件目の写真を繰り返し見比べていた。
何より、一番注目をしているのは、被害者の足元だった。
「やっぱり、前の3件とも足元を良く見ると、圧迫痕がある」
「報告書を見ると、事故処理でそこまでやはり、意識が向いてないみたいですね」
そんな時、真村は写真を持って立ち上がった。
「科捜研に足元の圧迫痕、画像解析を依頼してくる、アザの範囲が一緒なら
事件性も出て、電話照会にも繋がるから」
「私、一人で行くから、その間、玲香は被害者の共通点を探し出して、その方が、事情聴取の際に動きやすいから。」
だが玲香は心なしか残念そうな表情で真村が聞こえないぐらいの声で口を開いた。
「主任がどんな人か見たかった。」
しかし、声は聞こえてはいないが、心を読んだかのように真村はツッコミを入れた。
「あんたには、癖が強くて疲れるわよ」
「どうして分かったんですか!?」
真村は呆れながらも、笑顔で岩馬を注意した。
「表情で丸わかりよ、刑事ならその辺の制御も覚えなさい。」
「はーい、分かりました…」
そして、残念がる岩馬を残し、真村は科捜研へ歩きだした。
ーーーーーー
真村は科捜研につき、前からシルエットでも、スタイルの良さが際立ち、落ち着いた雰囲気を纏い、ストレートヘアをなびかせながら、真村の元に歩いてきた。
その名札には空島詩織と書いてあった。
「追花じゃん! 話は聞いてるよ」
科捜研の主任とは感じさせないほど、フランクに真村に話しかけてきた。普通なら、敬語で返すが、それに対して真村は…
「シオ姉、この写真の画像解析、お願いしたいんだけど」
真村は被害者の写真記録が入ってる封筒を渡した。空島は封筒から取り出して、
先程の明るい対応が嘘のように真剣な眼差しで、一枚の写真を見終えては後ろに回し、一枚ずつ確認した。
「確か、連続溺死事故の写真だっけ?」
「うん」
しかし、見ていくうちに、一つの疑問が詩織の頭によぎった。
「でも、4件目でやっと事件性の方向って遅くない?」
「多分、この時期は川遊びをし出す人も多いし、水難事故も珍しくない分、
意識がそっちに行きがちだと思う。」
「なるほどねー」
何度も写真を見返しながら、詩織は一件目の時点で圧迫痕があったにもかかわらず、
そこまで意識が向かない刑事の判断に納得が出来なかった。
「まあ、同じ川、同じ証言が一致しすぎて、事件の方向性にやっとなったわけね。だから、刑事は科学に頼らず自分の足で行くのを好むから嫌なのよ、あんたは例外だけどね笑」
さっきまでの不満気な表情はなくなり、笑顔を見せ、真村を褒めた。しかし、真村は頭を抱えて困り果てた顔で注意した。
「シオ姉、また喧嘩売らないでよ…」
「だって、科学は人間には見えない真実を見出せる、可能性の塊なのに、古風な奴らは
そんなもの頼っては刑事の未来は心配って言うんだもん」
「にしても、一応、シオ姉と私達の関係、署内だと一部は知ってるから、こっちの身になってよね」
真村の心配をよそに、空島は笑顔で肩を叩いた。
「大丈夫だって、加減はするから…」
「でっ、解析して欲しい所は多分、足首の圧迫痕でしょ?」
さっきまで真村を困惑させるほど、フランクな対応を見せた空島は笑顔から、真剣な表情に切り替わった。
「うん、そうだよ」
「でも、本当にここを見逃すって信じられない、確かに状況的にも事故と、分からなくはないけど、見逃さなかったら少なからず対応はできたでしょうに」
未だに、刑事の判断に納得がいかないかのように写真の記録をグシャっとする勢いでイラつくも、一呼吸をおき、気持ちを切り替え、ある科捜研の職員を呼んだ。
「ヒロ、ちょっと来てくれる」
「はい!」
研究室から、センター分けの髪型が印象的で、絵に描いたような好青年が二人の所へ向かってきた。
「追花はまだ知らないと思うけど、最近、ここに配属になった、佐藤紘ね」
「……」
佐藤は真村を見た瞬間、見惚れるように思わず立ち止まった。真村から見たら、その状況が理解は出来てない。それに対して、空島は佐藤の姿を見て、何かを察したように口角を思わず上げた。
「多分、あんたには無理よ、鈍感で仕事人間だし、何より、見た目は20代に見えるけど
30超えてるから、20代のあんたには高難度よ」
「えっ!?」
「ちょっと、シオ姉!」
初対面の男性の前で、空島に年齢を暴露され、思わず眉間にシワを寄せ、瞬時に空島に
口出しをした。
「ただ、紘に現実を教えただけよ笑」
「にしてもね…!」
空島のからかいに再び頭を抱え、思わずため息をついた。
「まあ、ごめんって」
賑やかな空気の中、お互いが気持ちを切り替え、表情が変わった。
「話を戻すけど、紘、これ、画像解析お願いしていい?」
「はい、やってみます。」
だが、そのやりとりに、真村は思わず首を傾げた。
「シオ姉も出来ない事は無いよね?」
「まあ確かにね、でも、科捜研の今後のためにも経験を積ませないとね」
「あと、紘は解析技術が結構、高くて、私の推薦で入れたから、その辺は保証するわ」
紘は自分のデスクに向かい、早速、解析作業を始め、二人はその結果を待つだけだった。
しかし、その結果が謎を加速させる事を知らずに。




