4話 課長 風谷
真村と岩馬は署内に戻ると、まずは報告のために課長のデスクに向かった。
そこには50代ほどの男性で、年相応の大人の雰囲気、オールバックが印象的な男性が座っていた。
そのプレートの名前には風谷聡太と書かれていた。
「風谷課長、ただいま戻りました。」
「ご苦労、何か収穫はあったか?」
真村は現場で手に入れた情報を風谷に伝えた。目撃証言の一致、足には謎の圧迫痕など、
詳細に伝えた。
「現時点では、事件性が高いのではないかと思います。」
風谷は組んだ両手を口元に当て、しばらく考え込んだ。しばらくの沈黙が続き、口を開いた。
「なるほど、それなりに情報はあったようだな。そして、お前の仮定も一理はある。」
風谷は立ち上がり、捜査一課の捜査員に視線を向けた。
「各自、手分けをして事故当時、一緒にいた人間の再聴取を頼む。」
次に視線を真村と岩馬に向け、指示を出した。
「2人は、今回のも含め、4件の被害者の共通点、交友関係がないか頼む。
デスク作業になるが、個人的にはこっちの方が重大な手がかりがあると踏んでる。
地味な作業になるが頼む。」
「「はい!」」
2人は口を揃えて返事をしたデスク作業…。地味な作業ではあるが、謎が深まる事件において、
共通点が見つかるほど、突破口が見つかるきっかけになるのではないか。今までの経験上、
真村はその可能性を賭けていた。
「お前らは、現場から帰ってきたばっかだ。少し休んでろ。その間、資料を用意しておく。
あと、すぐ対応出来るように、科捜研にも協力要請を取っておく。」
2人はフロアを出て、しばらく休憩に入った。休憩中、岩馬はある疑問を抱いた。
「真村先輩、でも、そう簡単に科捜研と協力体制に出来るんですか?」
岩馬の質問に対して、真村は首を横に振った。
「普通はありえないわ」
そう、捜査一課の課長はそう簡単に科捜研を動かせるほどの力は持ってない。しかし、何故、
風谷がそこまで動かせる強みがあった。
「風谷課長は、些細な事でも取り合ってくれたり、現場の状況も理解してくれる。
そして、現場主義な刑事が多いせいか、科捜研と刑事は価値観のずれで揉める事が多いけど、風谷課長は親身に関わってくれる分、信頼は厚いのよ」
しかし、真村は呆れ声で話を続けた。
「まあ、うちの場合は科捜研の主任が変わり者すぎて、揉めがちやけど、風谷課長への
信頼が厚い分、話も通りやすいのもあるけど」
「変わり者…?」
だが、岩馬の反応を気にせず、真村は立ち上がった。
「あんたはそこまで気にしなくていいから、休憩を終えて行くわよ。」
真村はそのまま一課のフロアに向かった。それを見て、岩馬は急ぐようにコーヒーを一気に飲み干し、後を追いかけた。
「待って、先輩!」
二人は休憩室を離れ、捜査一課に戻った。




