10話 目撃
翌日、いつものように、捜査一課は慌ただしかった。そんな中でも岩馬と真村のデスクには
資料が山のように積み重なっていた。しかし、岩馬は気にせずパソコンを黙々と打ち込みながら作業をしていた。真村は被害者のSNSのツイートを確認し、スクロールしていた。そんな中、岩馬がある事実に気づく。
「今までの電話の履歴を辿りましたが、大学に入り半年後のタイミングで、やり取りが薄くなってます。」
それは、真村の仮説が真実に変わる瞬間だった。そして、真村の方でも新たな
事実が判明した。
「なるほどね……SNSの投稿を見ると、こっちも半年後に投稿を始めてるけど、
フォローし合ってない。疎遠状態と考えていいわね」
様々な事実が判明していくなか、岩馬はあることに気づく。
「四人の連絡先で共通した二人がいます。」
真村はそれを聞いた瞬間にトークアプリを開き、ある事実が判明し、真村の中で仮説が新たに生まれた。そして、真村はあるグループが目に止まった。
「加藤ヒロシ 田中ジロウ 山口シンジ 鈴木タカシ……」
「それって、今までの被害者四人じゃ!?」
「まだ終わってないわ。それに続いて、杉本ジン 水沢リュウ、全部で六人。『高校イツメン』
っていうグループがログに残っていたわ。」
岩馬はそれを聞き、画面を見返し、静かに息をのんだ。
「じゃあ、残り二人が狙われる可能性が……?」
「ええ、それかどっちかが犯人の可能性もあるわね」
数々の事実が判明し、着々と解決へ一歩ずつ進んでいくなか、一つの電話をきっかけに
新たな謎が呼ばれた。
プルルルルーーー ガチャ
「こちら、捜査一課です。」
一人の刑事が受話器を取った瞬間、慌ただしかった空気が一気に静まり返った。
「分かりました。直ちに向かいます!」
「風谷課長、例の川で遺体が発見されたそうです」
真村はそれを聞き、背筋に何かが走り、考えたくない仮説が頭によぎった。
真村は風谷と目を合わせ、風谷は察したように指示を送った。
「真村、岩馬。二人も現場へ頼む」
二人は駆け足でパトカーに乗車し、サイレンを鳴らし現場に向かった。
到着した頃には地元の警察のパトカーが既に止まっていた。二人はパトカーから降り、
遺体に向かった。そこには、見覚えのある姿だった。
「先輩、この人って……」
「間違いない、杉本ジン……」
そこには、先程、四件の被害者との関係で新しく名前が挙がった杉本の姿だった。真村も投稿サイトのプロフィール画像と見比べたが、本人で間違いなかった。
「クソ、遅かったか……」
岩馬は真村の姿を見て、感じた表情はいつもの冷静な真村だった。しかし、岩馬は真村が拳を
力強く握っているのを見逃さなかった。
そんな中、地元の刑事が二人の元に向かい、ある情報を話した。それは、二人にとっても衝撃だった。
「今回、今までと違い、犯行の一部始終を目撃した人物がいたと。」
「一体どんな?」
「目撃者が橋でランニングをしていたところ、河童の仮面を被った人物が杉本を引きずり、そのまま深瀬へ一緒に潜ったとのことです。」
「そして、河童の仮面を被った人物だけが出てきて、目撃者と目が合い、そのまま水中に潜り姿を消したと」
岩馬は目を見開きながらも、今までの事件との違いに気付いた。
「今までは、川で遊んでるなかで水中から足を引っ張っての犯行……」
「でも、目撃者の話が本当なら、犯行が直接的すぎる」
真村は顎に手をつけながら考え込む。しばらくの沈黙が続き、口を開いた。
「河童が本当にいると思わせるため……」
「どういうことです、先輩?」
「今までの情報を整理すると、私は認めないけど、河童がやったと説明がついてしまう情報だった。」
「もしかして、五件目を直接行うことで、河童がやったと認識を強くするため?」
しかし、その仮説はオカルトを信じない真村にとって、本当だとしたら受け入れがたい内容だった。
それ以上に被害者の共通点や関係図が浮き彫りになり、やっと一歩を進み始めた真村にとっては、また新たに謎が上書きされた感覚になった。だが、確信を持てることが一つだけあった。
「そうなると、次に狙われるのが水沢リュウの可能性が高い」
「玲香! 急いで署に戻って、水沢の住所照会を急ぐわよ!」
「はい、分かりました。」
そのまま、真村は地元の刑事に視線を向け、指示をした。
「念の為、この川を遊泳禁止にするようお願いします。」
そう地元の刑事に指示を出し、二人はパトカーに戻り、署に向かった。




