タケえもん
「とりあえず街まで戻るか」
健の言葉で帰路につく。問題はその前だった。俺は足元の籠を見る。大量の毒草。
「どうするこれ」
「持って帰る!」
即答だった。
「せっかく摘んだんだから!」
「そうだよな!」
思わず頷く。健が呆れたように溜息を吐いた。
「はぁ……」
「何だよ」
「じゃあ責任持って運べよ」
街へ着くと、馬車から薬草と毒草を降ろし、門番に頼んで荷台を借りた。ここまではよかった。しかし。俺は少しだけ後悔する。
この量を運ぶこと自体は別に何ともない。身体補正のおかげだろう。だが、ふと側から見た時の絵面を想像してしまった。結構恥ずかしくないか?仮にも王国では勇者だ何だともてはやされたのに、今やっていることは荷台引きである。しかもよく見たら健のやつ、しれっと自分の薬草まで積んでやがる。
そして。サリー。何でお前荷台に乗ってるんだ。
「何してんだお前」
「さあ! 行きなさいミナト!」
「サリーお前!」
「頑張って!」
「クソー!」
文句を言いながら台車を押す。サリーは満足そうだった。
ギルドへ戻ると受付嬢が少し驚いた顔をした。
「お帰りなさい。随分たくさん採取されたんですね」
「いや、これは…」
「ほとんどは毒草なんで気にしないでください」
健がそう説明しながら本物の薬草の方を受付嬢に渡す。
「では報酬になります」
ゴブリンの魔石と薬草分の報酬を受け取る。初めての報酬だ。思わず少し嬉しくなる。そして問題は残った籠だった。
「ちなみに」
「はい」
「この毒草って買い取ってくれたりしない?」
受付嬢はにっこり笑った。
「しません」
「ですよね」
「ですよね」
俺とサリーの声が重なる。だがサリーは諦めなかった。
「でも他の国なら使い道があるかもしれないじゃない」
「だよな」
俺も頷く。健は毒草を見る。
「まあ無いとは言い切れないな」
「おお!」
「ただ」
健が籠を見る。
「持ち運びがなぁ」
それはそうだった。
正直邪魔だ。宿へ持って帰るのも面倒くさいし馬車に積みっぱなしにしたとしても保存が効かないだろう。その時だった。
ピコン
健の前にウインドが現れる。
「あ」
「どうした?」
「いや」
健が少し笑う。
「解決出来そうだ」
健は少し離れた場所へ移動すると創世を発動した。
白い光。それが収まると手にはそこそこな大きさの鞄があった。
「何それ」
「魔法鞄という物らしい。とりあえず試してみるか」
健はそう言って毒草を一つ放り込む。
「お?」
もう一つ。さらにもう一つ。気付けば籠の中の毒草は全て鞄の中に入っていった。
「まじ?」「全部入っちゃった。」
俺とサリーが固まる。
「入れられる大きさなら何でも入るらしい」
「何でも?」
「何でも」
「どれくらい?」
「容量の記載は特にないな。でも使ってみた感じまだまだ余裕がありそうだ」
健が作るものはどれもチートアイテムになるのか。正直便利すぎて逆に怖いな。
「取り出す時は取り出したい物を考えながら手を突っ込めばいいらしい」
試しに手を突っ込み、毒草を思い浮かべてみる。まさかと思ったが、本当に毒草が出てきた。
「便利すぎるだろ」
「まあ、流石にこれはチートだろうな」
周囲の冒険者達もざわついていた。
「何だあれ」「あんな鞄見たことねえぞ」
正直俺も同意見だった。健は鞄を俺へ放る。
「ほら」
「ん?」
「この鞄はお前が持っとけ」
「俺が?」
「俺よりお前の方が使うだろ」
確かにそうかもしれない。旅の荷物もある。俺は鞄を見る。
「ありがとう! タケえもん!」
「人を猫型ロボットみたいに言うな」
「だってこれまさに四次元ポ」
「それ以上言うな」
サリーは意味が分からないらしく首を傾げていた。
一通り落ち着いたところでキールが地図を広げた。
「次の目的地となるのはこの山の麓の街セカンです」
キールが指差す。
「そこには魔窟があります」
「魔窟?」
「ダンジョンのような場所ですね」
サリーが補足してくれる。
「そしてその最深部には、魔王の弱点となる聖剣が眠っていると言われています」
「おおおおお!!」
「聖剣!?」
俺とサリーが同時に叫んだ。
完全に王道じゃないか。勇者。魔王。そして聖剣。
テンションが上がらない方がおかしい。
健だけが冷静だった。
「剣より魔窟の方が気になるな」
「何でだよ!聖剣だぞ!?」
「剣なんかどうせまともに振れねえよ。でも魔窟はどんな場所か気になるだろ?」
「お前らしいな」
俺達は準備を整える。
次の目的地。
魔王の弱点となる聖剣が眠る街セカン。初めての依頼は終わった。そして次の冒険が始まる。俺達は再び馬車へ乗り込んだ。




