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表裏の歴史書  作者: qp46


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7/10

魔法創世

「どうしよう! マジで消し方分かんないんだけど!!」


「とりあえず落ち着け」


健も若干困った顔をしている。いや、若干どころじゃないかもしれない。目の前には小屋くらいありそうな巨大火球が浮いているのだ。俺だって困る。


「そうだな……さっき創世したみたいに水の魔法は作れないのか?」


「水?」


一瞬固まる。その直後だった。


ピコン


ウインドが開く。


創世一覧:水魔法


「作れた!!!」


「だろうな」


健が諦めたように言った。俺は慌てて巨大火球を上空へ押し上げる。森の中で爆発されるよりはマシだろう。多分。続けて水魔法を発動する。すると今度は頭上へ巨大な水球が現れた。


「いや、デカすぎな!」


思わず自分でツッコむ。サリーも若干引いていた。俺も引いている。でももう止まらない。


そのまま水球をぶつけた。空の上で火球と水球がぶつかる。一瞬空が真っ白になる。何も見えない。気付けば大量の水が降ってきていて、考える暇もなく全身びしょ濡れになった。


「……」


髪から水が垂れる。服も重い。視界の端ではサリーが呆然としていた。キールも無言だった。健だけが額を押さえている。


「もう森で火は使うな」


「はい」


素直に頷く。反論できない。

サリーが何かに気付いた顔をする。どうやら自分も火魔法を使ったことを思い出したらしい。だが次の瞬間には何事もなかったような顔になる。


「ミナト! 気を付けなさいよ!」


俺は無言で見つめる。サリーが目を逸らした。


「そんなことより、まだ魔物がいます」


キールの声で意識を戻す。


そうだった。まだ終わっていない。視線を向けると、ゴブリン達は妙に距離を取ってこちらを見ていた。さっきまで襲いかかってきたくせに、今は様子を窺っているように見える。


「誰かさんのお陰でゴブリン達は警戒してくれてるみたいだぞ」


健がこちらを見ながら言ってくる。


心当たりしかなかった。さっきの巨大な火球のせいだろう。


キールが剣を構える。


「では処理しましょう」


そう言って一歩踏み出した瞬間だった。


「斬撃」


一体。


目の前のゴブリンが吹き飛ぶ。速い。そう思った時にはもう次の動きへ移っていた。


「二重斬撃」


さらに一体。あっという間だった。


「おお……」


思わず声が漏れる。副団長って肩書きは伊達じゃないらしい。


「よそ見してる場合じゃないわよ!」


サリーが杖を向ける。


「ウインドカッター!」


風の刃が走る。ゴブリンが吹き飛んだ。

やはり詠唱と共に魔法を放つ姿は様になっている。


「かっこいいな……」


だったら俺も。迫ってきたゴブリンへ向かって駆け出す。身体補正のおかげなのか、自分でも驚くほど自然に体が動いた。振り下ろされた棍棒を避け、そのまま剣を振る。

当たる。ゴブリンが倒れる。


「よし!」


初めての剣での戦闘だったが何とかなったらしい。残るは一体。


「ミナト!」


サリーが叫ぶ。だったら締めはこれだ。手を前へ突き出す。


「ウォーターカッター!!」


水の刃が飛ぶ。ゴブリンが真っ二つになる。


「お前、その技名叫ばなくても発動出来ただろ」


「かっこいいからいいの!」


「はぁ……」


健が呆れたように溜息を吐く。その瞬間だった。背後の茂みが揺れる。最初に殴り飛ばしたゴブリンだ。まだ生きていたらしい。ゴブリンは一直線に健へ飛びかかる。だが健は慌てない。ひらりと身をずらす。空振り。そのまま振り向きざまに剣を振る。ゴブリンが倒れる。


「何だ、生きてたのか」


それだけだった。


「皆さん、魔石を回収しましょう」


キールが剣を収める。


「了解!」


初討伐だ。俺は近くのゴブリンへ駆け寄る。

そういえば魔石なんてゲームでしか見たことがない。

少しワクワクしながら探していると、胸の辺りから赤黒い石が転がり落ちた。小石ほどの大きさだった。


「これが魔石か」


思わず摘み上げる。もっとこう、宝石みたいなものを想像していたのだが意外と地味だった。


「換金出来ますよ」


キールがそう言う。


「おお」


それは大事だ。金になる。ちょっとテンションが上がる。五体分の魔石を回収し終えたところで、キールが周囲を見回した。


「では薬草採取を再開しましょう」


そういえばそうだった。ゴブリン騒ぎで完全に忘れていたが、俺達は薬草採取の依頼を受けていたんだった。


「よし!」


今度こそ依頼達成である。


「負けないわよ!」


何故かサリーもやる気になっていた。薬草採取は思ったより時間がかかった。


「これじゃない?」


「それっぽいわね」


「だよな」


摘む。籠へ入れる。また見つける。摘む。


今思えばその時点で怪しかった。薬草ってそんなに簡単に見つかるものなのか?そう思わなかったわけじゃない。でも楽しかったのだ。仕方ない。


「そろそろ戻りましょうか」


キールの声で全員が集まる。薬草採取終了。成果発表の時間である。


「見なさい!」


サリーが自信満々に籠を掲げた。


「結構集まったな」


俺も負けていない。籠はパンパンだった。正直かなり採ったと思う。


「ふふん」


「ふふん」


何故か二人で得意げになる。その様子を見て健が嫌そうな顔をした。


「何だよ」


「いや」


健は俺達の籠を見る。もう一度見る。さらに見る。


「嫌な予感しかしない」


失礼な。キールも苦笑していた。


「では確認しましょう」


まずは健。籠いっぱい。全部薬草だった。


「何で分かるんだよ」


「見れば分かる」


分からん。次はキール。量はそこまで多くない。護衛や周囲の警戒もしていたのだから当然だろう。それでも全部薬草だった。


「普通そういうものです」


「そういうものなのか……」


何か納得いかない。そして。問題はここからだった。


「じゃあ私達ね!」


「おう!」


自信満々で籠を差し出す。キールが中を見る。


一本。薬草。二本目。薬草。三本目。沈黙。四本目。沈黙。五本目。沈黙。嫌な予感がしてきた。

「キール?」


「その……」


困った顔をしている。


「どうだった?」


「薬草は二本です」


「二本?」


「はい」


「残りは?」


「毒草ですね」


沈黙。俺とサリーは顔を見合わせた。


「「え?」」


もう一度籠を見る。量だけなら圧勝している。

でも薬草は二本。俺一本。サリー一本。

残り全部毒草。


「何でだよ!」


思わず叫ぶ。


「こんなに摘んで合ってるのは二本だけか」

 

 健が呆れたように言う。


「似てたんだよ!」「似てるのよ!」


「ちゃんと確認しろ!」

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