表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
表裏の歴史書〜悪魔との契約〜  作者: qp46
プロローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/21

エナ

「叔父さんの話だ」


エナは少しだけ遠くを見る。さっきまでの尖った空気が少しだけ消えていた。


「魔族の盗賊団に村が襲われて、私を逃がすために父さんと母さんは殺された」


食堂の喧騒は変わらない。だが自然と耳はエナの声へ向いていた。


「そこに叔父さん達が来てくれた。近くで依頼を受けてて、騒ぎを聞いて駆け付けてくれたらしい。森の中を一人で走ってた私を見つけて、そのままこのセカンまで連れてきてくれた」


少しだけ表情が柔らかくなる。


「叔父さんは冒険者だった。いつも依頼でいなくなるけど、ちゃんと帰ってくる。たまにパーティの人達も来てくれて、剣とか弓とか色々教えてくれた」


エナは少し笑う。


「楽しかったよ」


その言葉だけは年相応だった。


「でも十歳になった頃、叔父さん達は帰って来なかった」


笑みが消える。


「最初は依頼が長引いてるんだと思った。次は怪我してるんだと思った。でも一ヶ月経っても二ヶ月経っても帰って来なくて」


エナは視線を落とした。


「分かってたんだ。帰って来ないんじゃない。帰れないんだって」


エナは少し俯く。


「もう誰かを失うのは嫌なんだ」


静かな声だった。


「だったら最初から誰にも頼らないで生きていく」


ゆっくり顔を上げる。


「だから私は一人を選んだ」


食堂が静かになる。その時だった。


「お前のことだから飯でも食ってるかと思った」


聞き慣れた声がした。振り返る。健だった。


「何で分かったんだ?」


「お前の行動パターンは単純だからな」


即答だった。酷くないか。健はエナを見る。


「で、その子は?」


「色々あってな」


「攫ってきたのか?」


「違う」


少し考える。


「いや、攫ってきたかもしれん」


「事と次第によっては騎士団に突き出さないといけないな」


「待て説明させてくれ!」


◇◇◇


「なるほど」


説明を聞き終えた健が頷く。


「そういうことか」


そしてエナを見る。


「エナだったな」


「……何だ」


「そういえば聞きたいんだが」


健が腕を組む。


「魔窟について何か知らないか?」


エナが少し眉をひそめた。


「魔窟?」


「ああ」


俺が頷く。


「聖剣を抜きに行くんだけど」


エナが固まった。


「聖剣?」


「魔王の弱点って言われてるらしいからな」


「……お前ら、あそこ行くのか?」


エナは呆れたように息を吐く。


「それはやめた方がいい、死ぬぞ」


エナは続けて語る。


「聖剣の近くへ行けば行くほど強い魔物がいるって話だぞ」


表情が真剣になる。


「今まで何人も挑戦して、そのまま帰って来なかった」


食堂の空気が少しだけ重くなる。俺は少し考える。

確かに怖い話だ。


でも。


「大丈夫だ」


「何がだよ」


エナが呆れたように言う。


俺は笑った。


「俺は魔王を倒しに行くからな」


エナが固まる。


「は?」


「こんなところじゃ死んでやらん」


そう言うとエナは頭を抱えた。


「意味分かんねぇよ……」


「それに」


俺は指を折る。


「騎士団副団長のキールは俺なんかより剣の扱いが上手だし安定感がある」


一本。


「王女なのにお転婆なサリーは魔法が得意で俺たちにとって強力なサポーターだ」


二本。


「ここにいる健はなんでも作るし、頭がいい」


三本。


「俺だけ雑じゃないか?」


健がツッコむ。


「だから大丈夫だ」


「根拠になってねぇ……」


即答だった。


でも俺は構わず続ける。


「だからさ」


エナを見る。


「俺達が生きて帰って来たら」


エナが顔を上げる。


「俺と一緒に旅しないか?」


数秒沈黙した。


そして。


「だから何でそうなるんだ!」


机を叩く。


「話の繋がりがおかしいだろ!」


「そうか?」


「そうだよ!」


健が小さく笑った。


「湊らしいな」


エナは大きくため息を吐く。


「……本当に魔窟に行くんだな」


「ああ」


「なら見極めてやる」


エナは立ち上がった。


「お前が本当に勇者なのか」


◇◇◇


宿へ戻ると、入口でサリーとキールさんが待っていた。


「遅かったわね!」


サリーが駆け寄ってくる。


そして。


エナを見る。


固まる。


一秒後。


「キャーーー!!」


耳が痛い。


「なによこの子可愛い!!」


エナが後ずさる。


サリーは構わず距離を詰めた。


「私はサリーお姉さんよ!」


「誰だよ」


「お姉ちゃんって呼んでいいわよ!」


「呼ばねぇよ!」


即答だった。


「遠慮しなくていいのよ!」


「してねぇよ!」


キールさんが額を押さえる。


慣れているらしい。


「ミナト殿」


「説明するよ」


◇◇◇


「なるほど」


話を聞いたキールさんが頷く。


「ではエナ殿が魔窟まで案内してくださると」


「勘違いするな」


エナは腕を組む。


「私は見極めるだけだ」


そして俺を見る。


「お前が本当に勇者なのか」


サリーは満面の笑みを浮かべた。


「よろしくねエナちゃん!」


「勝手にちゃん付けするな!」


宿の前に騒がしい声が響く。だが不思議と悪い気はしなかった。


明日は魔窟だ。聖剣が眠る場所。本当に勇者なら聖剣を抜けるのか。そんなことを考えながら、俺達は宿の中へ入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ