第74話 一学期終業式って、つくれちゃう?
葵が通う高校でも一学期の終業式が行われ、体育館から教室に戻った生徒達はホームルームの後に午前中で放課となった。
時刻は午前十一時半過ぎ。明日から始まる夏休みを前に葵のクラスメイト達も湧き立っていた。
(――いよいよ夏休みか……課題もあるけど、フィギュア製作や造形の勉強が捗りそうだ)
土日と違い、平日は学校があるため作業時間に限りがあるが、夏休みともなれば平日でも関係なく、朝から夜まで制限なく作業できるので葵にとっては充実した日々となる。
夏休み期間中の一日のスケジュールを葵が頭の中で組んでいると、不意に乃亜から声を掛けられた。
「赤ちゃーん! 明日から夏休み~! めっちゃ最高ぉ!」
「そうですね。俺も楽しみです」
高揚感を抑えきれない乃亜の元に、友人である莉里奈と星羅もやって来る。
「イェ~イ! 夏休みだぁー!」
「マジ楽しみ過ぎる!」
「だよね~! イェーイ!」
はしゃぐ乃亜が二人の前に手を出すと、莉里奈と星羅もつられて「イェ~イ」とハイタッチし、ギャル三人はキャッキャとテンション高めに喜び合う。
(とても盛り上がっているなぁ……。夏休みは俺もうれしいけど、心の中で静かに喜ぶ感じだし)
葵は気持ちが高まっても感情を表に出すことを控えてしまうため、素直に気持ちや感情を表に出して盛り上がることのできる乃亜達が羨ましかった。
「赤ちゃん、この後予定とかある?」
「今日は用事があります」
「そっか~、一緒に買物したかったけど残念。あたしら水着買いに行く予定でさ、その後カラオケ」
(水着……そう言えば、勉強会の時に海とかプールに行くと言っていたな……)
「乃亜、腹減ったー。お昼行こ~」
まるでゾンビのように莉里奈が乃亜の体にすがりつく。
「分かった分かった。赤ちゃん、また連絡するね」
「赤ちん、またね~」
「バブたん、バーイ!」
葵に見送られつつ、ギャル三人は楽しそうに談笑しながら教室を後にした。
帰り支度を済ませた葵も学校を後にすると、帰り道にあるコンビニでお昼を買って自宅マンションに帰る。
葵は部屋着であるTシャツとハーフパンツに着替えると、スマホで宅配業者に荷物の集配依頼の連絡を入れる。
コンビニ弁当でお昼を済ませた後、葵は事前に用意していた宅配の伝票を最後にチェックし、製作代行したガレージキットとプラモデルを各一個ずつ、丁寧に保護して梱包した段ボール二箱を玄関まで運んだ。
葵は依頼されたガレージキットやプラモデルを組み立て・塗装して完成させる製作代行を中学生の頃から個人でやっており、得たお金でフィギュア製作用の道具や機材購入の他、趣味などに使っている。
午後三時前に宅配業者が集荷のために自宅マンションを訪問し、送る荷物を預け終わると葵は外出し、近所のスーパーに食材の買い出しへ出掛けた。
帰宅後は作業部屋に置いているデスクトップパソコンの前に座ってZBrushでオリジナルキャラのスカルプトモデリングを作成しながら、十六時~十八時の時間指定をしている宅配の到着を待つ。
作業を進めているとスマホに通知があり、葵が確認すると乃亜からLIMEのメッセージだった。その内容は『水着買った!』、『海、マジ楽しみ!』という買い物の報告である。
(そうだ……海って、海水浴場に行くんだっけ? それなら水着が必要だよな……)
葵は乃亜からのメッセージではたと気付く。
最近では海やプールに行く機会が全くなかった葵は水着を持っておらず、店に行く暇もないため通販で水着を探して注文した。
その後もパソコンで作業を行っていると、午後五時前にインターホンが鳴り、リビングにあるモニター付きインターホンで対応した葵は玄関で宅配業者から荷物を受け取った。
「――やった……ついに届いた!」
葵は段ボール箱に入った荷物を大事そうに作業部屋まで運ぶと、湧き上がる興奮を抑えながら荷物を開封し、箱から念願のものを取り出して床の上に置く。
「これが3Dプリンター……ようやく手に入れた!」
床の上に鎮座する3Dプリンターは長方形をした外観であり、前面に色が付いたクリアカバーがある。その機能美にあふれた本体を眺め、葵は思わずにやけてしまった。




