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第38話 中間テストって、つくれちゃう?

 

 中間テストが終わり、数日後には採点されたテスト用紙が返却される。


 中学生時代と同様に、まるでクイズへ挑戦するように勉強して高校の中間テストに(いど)んだ葵は、どの教科も平均点よりもプラス20点以上の点数を取ることができた。


 全てのテスト用紙が返却されたその日の放課後、ご機嫌な様子の乃亜が葵の元にやって来る。


「――赤ちゃ~ん! テストどーだった?」


「どの教科も平均点以上でした。ただ、テストを受けて中学の時みたいにはいかないことも分かりましたので、やはり日頃からの勉強は必要ですね」


「そっか~。あたしもさ、赤ちゃんのおかげでめっちゃ点数良かったし、マジありゃーと!」


「勉強会をやった甲斐(かい)がありましたね」


「ほんと、マジ感謝してる! というーわけで赤ちゃん、期末もよろ~!」


「期末!? あ、はい……」


(勉強会の成果があったみたいだし、当然こういう流れになるよなぁ……。でも綾音さんの役に立てるなら断る理由はないし)


 乃亜との勉強会を葵が思い返していると、ご機嫌な笑みを浮かべる乃亜の後ろに二つの人影が音もなくヌッと現れる。


「――はは~ん、そーいうことかぁ~」


「まさか、乃亜が勉強会をやってたとはねぇ……」


 (うら)めしい声にハッとした乃亜が慌てて振り返る。


 背後に立っていたのは、乃亜の友人で同じくギャルである金髪ロングを波巻きウェーブが印象的な不知火(しらぬい)莉里奈(りりな)と、ストレートな黒髪セミロングで乃亜よりも身長が高い富士桜(ふじざくら)星羅(せいら)だった。


「二人とも……怖い顔してどうしたの?」


「この前の中間テスト! 乃亜の点数がめっちゃ良いと思ったら、こっそり勉強してたん!?」


「そだよー。赤ちゃんに教えてもらった~」


「はぁ!? 勉強会するなら、ウチらも誘えよな!」


「いや、マジごめんって!」


「抜けがけとかさ、マジ()むわ~」


 抗議する莉里奈を乃亜がなだめている中、その様子を黙って眺めていた星羅が葵の席にそっと近付き、視界を(さえぎ)るように葵の顔を横から覗き込む。


「――ねえ赤千谷(あかちや)くん。乃亜と勉強会したんだって?」


「は、はい……」


 ツリ目メイクによって元々切れ長だった目がより強調され、じっと見つめる星羅の鋭い眼光に葵は身を縮ませる。


「……じゃあさ。今度は私らにも教えてよ。期末は教科も増えてガチ大変だしさ~」


「そうだそうだ~! 乃亜だけズルいわ!」


 莉里奈が横から合いの手を入れる。


(ま、まあ……綾音さんと勉強会したことを知られたら、当然こうなるよな……)


 葵は一瞬迷ったが乃亜の友人であることと、了解しないとこの場から()ってくれなさそうな星羅からの威圧感を受け、期末テスト前には四人で勉強会を行うことを承諾(しょうだく)する。


赤千谷(あかちや)くん、話分かるじゃ~ん」


「補習とか、マジ無理だしね」


 莉里奈と星羅は清々しい笑顔でハイタッチする。


「も~っ、さっきから勝手なことばっか言って……赤ちゃん迷惑してるじゃん」


「いやいや! 乃亜が一番迷惑かけてそーなのに、それを言うんかい!」


 莉里奈のツッコミに星羅もうなずいて同意する。


「てかさ、乃亜が抜けがけしたのが悪いんだし!」


「だね~。ひとりで良い点取ろうとか、マジないわー」


 親友から裏切られてしまい、莉里奈と星羅は揃ってジト目になると再び乃亜を追及する。


「そんなんじゃないから。赤ちゃん勉強得意っていうからさ、分かんないとこ()こうと思っただけだし」


 席の前で繰り広げられている、三人のやり取りを黙って眺めていた葵は次第に心配になってくる。


(これ……止めた方が良いのかな? 俺も勉強会に参加していたわけだし……)


 はたから見ると喧嘩(けんか)しているように見えるが、当の本人達はただじゃれ合っているに過ぎなかった。追及と言っても本気ではなく、ただのツッコミである。


「乃亜。とりま、スタパ(おご)りでよろ~」


「じゃあ、私フラッペ」


「え、待って。あたしの自腹(ジバ)?」


「とーぜんでしょ?」


「抜けがけした乃亜が悪い!」


「てか、今月こづかいピンチなんだが!? テスト期間はバイトできなくて――」


 莉里奈が目配(めくば)せると、うなずいた星羅が言い訳する乃亜の背後に素早く移動し、逃げられないように羽交(はが)()めする。


「じゃあ行こうか。莉里奈、バッグ頼む」


「おけえ! 赤谷(あかたに)くん、今度よろ~」


「わぁぁぁーっ! ちょ待って! マジお金ないって!」


 抵抗も(むな)しく、乃亜は莉里奈と星羅によって教室から連れ出されてしまった。


(綾音さん、二人には何も言ってなかったのか……)


 三人のやり取りを聞いているうち、本気で言い合っているわけではないと気付いたものの、葵にはどうすることもできなかった。


 乃亜の無事を祈りつつ、静かになった教室で葵は帰り支度を始めた。


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