第33話 塗装準備って、つくれちゃう?
合間に休憩を挟んだ後、今度は実際に塗料を吹く練習に移る。
「塗装をする時に使う道具ですが、エアブラシの他にもあります。まずはラッカー塗料専用の薄め液ですね。有機溶剤である薄め液は、塗料の濃度を調整する希釈や、エアブラシなどの洗浄にも使用します。よく使うものなので大容量のものが良いですね」
葵の説明を聞き漏らさないように乃亜は真剣に耳を傾ける。
続いて葵は片方がスプーン状、もう片方がヘラ状になった金属製のスティックと空のボトルを乃亜に見せる。
「これは調色スティックです。調色スティックは塗料の撹拌――つまり、かき混ぜて均一な状態にする時に使います。空のボトルはスペアボトルで、調色した塗料を保管するためのものです。色を混ぜて元の色とは違う色を作った時、元の塗料ビンには戻せないため、このスペアボトルの容器に入れて保管します」
他にも塗料皿、ティッシュペーパー、使い捨て手袋も準備する。
「塗装皿は塗料を混ぜ、色を作る時に使います。金属製のものや、ポリプロピレンなど樹脂製のものがあります。ティッシュペーパーは塗料の拭き取りなどですね」
「あと、やっぱ手袋ね。ニトリル手袋にはめっちゃお世話になってるし」
「ニトリル手袋は必須アイテムですね。塗料が肌に付いたり爪の間に入ってしまうと、手を洗ったくらいでは簡単に落ちません。他にも必須なのが――」
「保護メガネと防毒マスク?」
「その通りです。防毒マスクも新品がありますので使って下さい」
エアブラシで塗装する時に使う道具類の紹介が終わり、乃亜は実際に色を塗る吹き付け作業をやることになる。
保護メガネに防毒マスク、そして両手にはニトリル手袋と、服が汚れないようにエプロンを付けた完全防備な乃亜が待機する中、葵は吹き付けの練習に使うため、机の下から調色済み塗料が入ったスペアボトルを取り出す。
葵に指示してもらいながら、乃亜は塗料皿に調色スティック、そして練習用に使うスペアボトルに入ったラッカーのグリーン系塗料ビンと、薄め液をテーブルの上に並べる。
乃亜は葵の指示で塗料ビンの蓋を開けると、調色スティックを使って中の塗料をよくかき混ぜる。
混ぜ終えた後、塗料ビンから調色スティックで塗料皿に塗料を一滴ずつ移し、別の塗料皿を準備して薄め液を入れておく。
「まずは塗料の希釈ですね。塗料1に対して薄め液の割合は2~3でしょうか。スポイトを使って薄め液の溶剤を入れながら、調色スティックで混ぜて濃度を調整します。塗料は皿の縁につけた時、少し垂れる程度の粘度ね。エアブラシのカップ内で撹拌して希釈する方法もありますが、こちらは上級者向けです」
葵にやり方を教わりながら、調色スティックでしっかり混ぜて乃亜は濃度の調整を終えた。
「塗料をエアブラシのカップに移す前、コンプレッサーのエアー圧をレギュレーターで調整します。エアー圧はどのような塗装をするのかで変わってきますが、今回はベタ塗りという均一に塗装するやり方なので、0.03~0.04MPaでしょうか」
「赤ちゃん、もし間違ってたら言ってね?」
「はい。すぐに止めます」
乃亜は葵に教わりながらコンプレッサーを始動させると、レギュレーターを使ってエアー圧を調整する。
エアブラシで空気を吹いてエアー圧の確認を行った後、乃亜は希釈した塗料を塗装皿からエアブラシの塗料カップに移した。
「カップに移した後は塗料を撹拌するために〝うがい〟を行います」
「うがいって……あのうがい?」
「そうです。人が喉をうがいすることと似ているからです。エアブラシのうがいとは、エアーを逆流させてカップ内に空気を送り込むことですね」
「やる理由とかあるの?」
「塗料はカップに入っている間に乾燥していきますし、調色後は複数の塗料が混じりあっている状態のため、比重の重いものは沈殿して軽いものは浮いて分離します。それを防止するため、エアーを逆流させて撹拌するのが〝うがい〟ですね。撹拌の他にも、エアブラシを洗浄する時にもこのうがいを使います」
「へぇ~、色んな役目があるんだー」
「うがいのやり方ですが、ノズルキャップを1回転半くらい緩めて、トリガーボタンを押せばエアーが逆流します。この時、ボタン操作は全開にはせず、ゆっくりとエアーの量を見ながらコポコポと泡立つ程度にして下さい。エアー圧が高いと、カップ内の塗料が飛散る場合があります」
「りょ! そっとやる感じか」
葵にアドバイスを受けながら、乃亜はエアブラシのうがいを習って実際にやってみた。
「オッケーです。それでは実際に吹いてみましょうか」
「うわーっ! ガチ緊張するー!」
「綾音さん、リラックスして下さいね」
うがいを終えて、ついに乃亜は実際にエアブラシで塗料を吹く実践練習に入る。




