第九十八話 それしき
認識できるようになった頃からずっと。
自分の外見が嫌いだった。
小さくひ弱な外見が。
凛々しさとは、雄々しさとは程遠く、いっそ無縁だと断言できる外見が。
いくら鍛えようとも、改造しようとも、元に戻る。
両親に期待されているのに。
両親の期待に応えたいのに。
外見は関係ない、など、飲み込む事はできなかった。
嫌悪感に拍車がかかったのは、魔女の所為だ。
可愛い可愛いと。会う度に言ってくる。
カワイイカワイイ。
おまえは弱い、両親の期待には応えられない。
そう罵られているようにしか聞こえなかった。
何度も言った。
可愛いと言わないでくれ。
何度も何度も何度も。
けれど魔女が聞き入れてくれる事はなかった。
可愛いのだから可愛いと言っているだけだ。
その言葉でずっと、跳ね除けられた。
魔女への嫌悪感は、いつしか、怯えを生じさせる恐怖へと、変わってしまった。
また言われる。また。
可愛いと言っているだけだろう。
誰もが嘲笑うだろう。
たったそれしきの事で。と。
自分にとっては、それしきの事ではなかったのだ。
ただ、それだけだ。
嫌いだ。
嫌いだ。
嫌いだ。
獅子のように誰もが自然と頭を垂れるような、畏怖と尊敬を抱くような外見が欲しかった。
ずっとずっとずっと。
自信を持てる外見が欲しかった。
(2023.9.20)




