第九十七話 こんちくしょう
「あらあらまあまあまあ」
合わせた両の手を右に左にと顔の傍で小さく動かしていた魔女は、うっとりと冴野と土羽梨を見つめた。
守りたい。守る。守らせてやるぜこんちくしょう。
そうして強く、それはもう強く想い合うあまり。
「ふふふ。ほぼほぼ雁字搦めになっちまっているねえ」
「………だから土羽梨もこちらに来てしまったのか?」
「そうゆう事さね」
「???」
『焔の国』にて。
本体の冴野は『砂の国』から砂色のマントを引き寄せると、混乱中の土羽梨の頭から被せて砂色のマントで全身を隠して景色を見ないようにと言った。
縞々や水玉模様の動植物たちの眩い発光に、未だ慣れていなかった土羽梨は冴野の言うように砂色のマントで全身を隠してのち、口を開いた。
「えっと?私は幻の姿のあなたの元に戻ったはずなんですけど。どうしてまた『焔の国』に戻ってきているんでしょうか?」
「私に引き寄せられた」
「???えっと。つまり。納得して結婚したので、いつでもどこでもあなたと行動を共にしなければならなくなってしまった。という事ですか?」
「いつでもどこでも。ではない」
「???じゃあ。えー。あなたが私を呼んだら瞬間移動してあなたの元に行くようになってしまった。という事ですか?」
「呼んでいない。ただ、私の強い想いに引き寄せられてしまっただけだ」
「強い想い。という事は。『焔の国』を『緑の国』のようにする為に来たんですか?」
「違う。そもそも『焔の国』があるから『緑の国』がある。変えられない」
「じゃあ。えー。と。質問を変えます。あなたは誰と話していたんですか?」
「………やはり、あなたには見えていない。だけではない、か。声も届いていないのか?」
「はい。聞こえているのも見えているのもあなただけです」
「そうか」
冴野は守るように土羽梨の前で浮き続けては魔女を見た。
拳の震えは、まだ、止まらなかった。
(2023.9.20)




